2025/8/15 蛍

幼い頃から一番嫌いだったのは、自分がすきなものを紹介する時間でした。

私は、何かを心の底から好きと思えた事がありません。

水が時間と共に落ちるのなら、私はそれが憎い。

水が逆さに流れるのなら、私はそれを憎むのかもしれません。

家族は好きであるもので、大切であるものだという当たり前であるはずの感覚が、29歳の今でもわかりません。

映画や小説などの創作物では、家族の素晴らしさをそれが当然だと謳います。

それを理解したいのに、解釈はできるのに実感が湧かないまま、本を閉じる。

何も無い所に、いつか手に入れる筈だった好きと言う感情の幽霊を探しています。


底の抜けたドラム缶の内側に、錆のような悲しみと怒りが貼り付いている。

腐った金属の神経網が触れあう度に発火して、か細い電流が生まれては消える。

それがつらくて、悲しくて、今日もまた、本を閉じる。

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Pratigha @Hitoku

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