熱帯夜の輝き【カクヨム短歌賞1首部門応募作】

天野せいら

熱帯夜の輝き

 扇風機は、同じ空気をぐるぐる回しているだけだった。

 寝返りを打つたびに、背中がシーツに張りつく。枕の冷たい面も、とっくになくなっていた。


 「もう無理」

 私はベランダの窓を開けた。

 むっとした夜気が部屋になだれ込み、肌にまとわりつく。けれど、ふと顔を上げると、真っ暗な空に星が散らばっていた。


 こんなに暑くて眠れない夜じゃなければ、きっと気づかなかっただろう。

 街灯の隙間から見える、小さな瞬き。

 数えてみようと指を折ったけれど、いつの間にかその光に見入っていた。


 背中の汗も、寝不足の苛立ちも、星の光に溶けていく。明日はきっと眠いままだろうけど――まあ、それも夏の一部だ。


・・・・・・・・・


暑すぎて 眠れぬ夜の 窓の外

星の瞬き やけに鮮やか


・・・・・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

熱帯夜の輝き【カクヨム短歌賞1首部門応募作】 天野せいら @Sky_of_Stars

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画