第4話 即席チーム結成


 申し込みを終えると、係員から「現地で合流するチームメンバーの紹介」が簡潔に伝えられた。

 危険度レベル3以上の案件は、単独行動が禁止されている。

 「集合場所はブライトリム境界帯の第4ゲート。そこで班を組んでもらう」

 そう告げられ、ベルとセエレは依頼証を胸ポケットにしまった。


 ◇


 翌朝、薄曇りの空の下、境界帯への道を進むと、集合地点にはすでに三人の男女が立っていた。


 粗末な外骨格を着込んだ大柄な男が、ベルを見るなり笑う。

 「おう、若造か。背中は任せろよ」

 名をガランというらしい。腕っぷしはあるが、話し方と足取りが少し荒っぽい。


 その横には、短髪で片耳に通信機を装着した女性。

 「セラ。罠解除が専門」

 短く自己紹介をすると、足元の工具箱を軽く叩いた。無駄のない仕草と鋭い視線が印象的だ。


 三人目は、まだ少年の面影を残す細身の青年。

 「……リクです」

 視線は合わせないが、その背負ったライフルはやけに手入れが行き届いている。


 ガランが両手を叩き、声を上げた。

 「じゃあ班長は俺でいいな?腕っぷしなら負けねぇ」

 「私はベルを推す」

 即座にセエレが返した。その声音に一瞬、空気が止まる。


 「理由を聞こうか」セラが目を細める。

 セエレは迷わず言った。


 「力は必要。でも、今回は地形も敵も読めない。だから判断が速く、引き際を決められる奴が必要だ。私は、そういう判断を何度も見てきた」

 そう言ってベルに視線を向ける。


 ガランは「チッ」と舌打ちをしながらも黙った。セラは数秒考え、うなずく。

 「……合理的だな。異論はない」

 リクも静かに頷いた。


 ベルは苦笑しつつ、皆を見回した。

 「じゃあ俺が班長ってことで。口うるさくはしないが……帰ってこれるよう動こうぜ」

 小さなうなずきが返る。


 こうして、即席の五人班が編成された。

 背後で、境界帯の防壁が静かに開き、灰色の大地が口を開ける。

 外壁都市の安全は、もうここまでだ。


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