真夜中のテディベア
五來 小真
真夜中のテディベア
ある夜、女の子の部屋のテディベアが動き出した。
テディベアに右目はなく、片目だった。
右目の部分には、ほつれた糸が見えていた。
テディベアは女の子の部屋をそっと出ると、女の子のお母さんの部屋に向かった。
そして部屋を見回すと、洋服ダンスに向かう。
そしてある服を見つけると、袖口についたボタンを力いっぱい引っ張った。
服は裂けてしまったが、ボタンは無事に取れた。
ボタンは、テディベアの残っている目と同じモノだった。
テディベアは、そのボタンを右目に押し付けた。
しかしボタンは固定されず、そのまま落ちた。
もう一回。
——何度やっても同じだった。
テディベアは、そのままへたり込んだ。
母親が、トイレに起きたときだった。
廊下にテディベアが立っていた。
『なんでこんなところに』
母親がそう思うと同時に、テディベアは母親の顔に飛びかかった。
テディベアに掴まれた母親の視界は、テディベアで埋め尽くされる。
母親は、テディベアの荒い息遣いを感じた。
やがてテディベアの右手が振り上げられた。
その手には、テディベアのボタンが握られていた。
母親がハッと目覚めた時には、いつものベッドの上だった。
——すべては夢だったのだ。
時計を見ると、まだまだ眠れそうだ。
母親は目を閉じようとして気付いた。
——右目が上手く閉じれないのだ。
どうしたのだろうかと、右目に手をやった。
「いたっ——!」
あまりの痛さに手を引っ込める。
触ったのは、位置からするとまぶたのはずだった。
しかしあの痛さはまるで眼球……。
いや、それよりも——
触った感覚が硬質なプラスチックのような……。
<了>
真夜中のテディベア 五來 小真 @doug-bobson
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