『人間宣言』~妄想歴史小説~
brah17
第1話「理想と現実」
~第一条:人間とは、理想を叫びがちだが、
現実には肩を揉まれると弱いものである。~
1938年3月29日、午前9時。快晴。市ヶ谷駐屯地。
今日も上官が声を荒らげていた。
「朝の訓練開始時間に遅れるとは何事だ!たるんでおるぞ!一列に並べ!」
「はい!」
15名の部隊が大きな声で返事をし、一斉に一列に並んだ。
「このようなざまでは戦地で活躍できんぞ。日本軍は常勝あるのみ。
大東亜共栄圏を築いて世界をリードせねばならん。
理想こそが真実であーる。そのためにも、鉄拳制裁を喰らわせる。
貴様ら、歯を食いしばれ!」
15人の小隊のうちの一人、田島が上官の前に歩み出た。
田島は貧乏出身で、失うものは何もない。いわゆる“無敵の人間”だ。
「あんた、いったい何様だ?天は人の上に人を作らずだぜ。
こっちは15人いるんだ。戦況が読めないのは上官として失格。
悪いが、肩もみ10回させてもらうぜ。こってんだろ、あんた」
田島は大きな、はっきりとした声で「1、2、…10」と数えながら、
上官の凝りをほぐしていった。
上官は、不覚にも深い眠りについた。
「ふん、所詮人の子ということよ。
ただぁー、おもしれーのはこっからだぜ」
“何様か”発言をした田島は、冷ややかに笑った。
その笑いに、小隊で一番臆病な富士は涙目になっていた。
田島は上官の財布を抜き取り、運転免許証から住所を特定した。
「八幡町…すぐ近くじゃねーか。連れてくぞ」
15人は力を合わせ、田島の指示のもと、寝落ちした上官を担いで家まで運んだ。
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