第26話 そうだ、忘れてた

 その後、私は生産ラインへと戻っていった。


「先輩、もう遅いですよ! 何やってたんですか!」


 しまった、緑に全部任せっぱなしだった。

 ちょっと見てくるだけのつもりだったのに……サキが余計なことをするから。

 私はそう思いつつも、両手を顔の前で合わせると拝み倒すように緑に謝った。


「ごめん、許してくれ」

「もう本当に大変だったんですからね」


 本気で怒った緑は、丸い顔が饅頭のようで可愛い――って、そんなことを考えている場合じゃない。

 なんとかしないと。


「本当にごめん。今度、あの呪文のような長い名前のアイス。あれ、買ってやるから」

「えっ!? 本当ですか? 本当に『スペシャルチョコレートフラッシュダブルバニラストロベリーサンドアイス』を買ってくれるんですか!?」


 なんだ、そのチョコレートかバニラかストロベリーかよく分からない名前のアイスは!

 口の中で想像のできない味である。

 好物を買ってもらえると明るい表情になり、はしゃいでいる緑。だが、彼女はそれだけで騙されないぞと、言わんばかりにこう続けた。


「でも、本当に大変だったんですよお。一個じゃなあ」


 あざとい。緑、お前はいつからそんなに計算高い女になった。


「わかった。二個だ。二個買ってやる」

「やったあ! 絶対ですよ」


 この喜びように私は心底ほっとする。だって二時間近く空けてしまったのだ。

 相当、大変だったに違いない。


「ちなみにいくらだ?」

「一個二千三百円です」

「えっ……アイスがか?」

「はい! あれ高くて……でも二個でいいんですよね!」

「あ、ああ、買ってやる」

「やったああああ!」


 裏の仕事の報酬も入ってくるし、そのくらい大丈夫だろう、私はそう思った。

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