才能の苦悩

アールド

第1話 世界は残酷だ

この世界はときに残酷だ。

ふとしたときに自分と他人の間の才能の差を感じさせられる。

例えば、スポーツや勉強をするとき自分は習得するのに10日かかったことを他者が1日で習得してしまったとき。

また例えば、人とコミュニケーションをとるとき他人は自分よりも場を盛り上げることが多いとき。

そして今日、俺もまた仲間たちとの才能の差を感じさせられることになる。



さかのぼること2年前、俺は幼馴染のフェルト、ペルセン、クララたちとともに国立冒険高等学校を卒業し、冒険者パーティを組んだ。このころはよかった。フェルトが次席、ペルセンが三席、クララが四席、そして俺が主席で卒業し、みんながみんな才能を持っていて、自分にもみんなと同じくらいの才能があるものだと思っていた。

それから時がたつごとに俺たちのパーティは力をつけていき、国内でも名のある冒険者パーティーになった。それにつれてフェルト、ペルセン、クララは力をつけていき、ユニークスキルを身に着けた。しかし俺はいくら修行してもユニークスキルを身に着けられることはなかった。ただ俺はめげずに努力を続けた。

「ユニークスキルがないからなんだ!修行を続けていけばユニークスキルが身につくかもしれないし、身に着けられなかったからと言って、基礎能力を上げていけばあいつらに劣らない実力を身に着けられるはずだ。」

そんなことを俺は考えていた。

そして今日俺たちは成人式に来た。この成人式は冒険者に対しては、一般人の成人式とは違う意味を持つ。というのも冒険者はこの成人式でアビリティを授かるのだ。ここでいうアビリティとは4000年前に魔王に対抗するために神が人間に与えた能力であり、ユニークスキルと異なる。すなわち、アビリティは人間に新たな技を授けるものではなく、人間の基礎能力を底上げする能力であるのだ。ユニークスキルを身に着けられなかった俺はアビリティにすがる思いでこの成人式に来たのだ。

ハルト「俺はこの成人式で最強のアビリティを授かる!」

フェルト「まあそんな、焦んなよ。」

ペルセン「私も…、強いアビリティ…、もらいたい。」

クララ  「全員で強い能力が手に入るといいですね。」

今年は魔王を倒す勇者が現れると予言されている年である。

もしかしたら勇者になれるかもしれない。


そうしてついにアビリティ授与の瞬間がやってきた。

神官「フェルト。アビリティは世界を救済する勇者の力!」

フェルト「あたしが、勇者…? やったぁー!」


神官「ペルセン、クララ。アビリティはともに天武の才!」

ペルセン,(クララ)「やった…。(やりましたわ。)」


神官「最後にハルト。」

俺が最後か。勇者はフェルトに取られてしまったが最後に呼ばれたということは、もしかしたら強いアビリティが手に入るかもしれない。

神官「アビリティはえーと…、凡才だ。」

ハルト「ぼっ凡才…。嘘だろ。うわぁー!!」

フェルト ペルセン クララ「「「待って、ハルト。」」」



俺は逃げた。アビリティとして勇者や天武の才をもらったあいつらに合わせる顔がないと思ってしまった。ユニークアビリティがない点で彼らと劣ってしまった俺はアビリティで挽回するしかなかったのに。そんなチャンスも非情に奪われてしまった。アビリティでもユニークアビリティもない俺にあいつらと一緒のパーティに所属する資格があるのだろうか。


ここから俺がパーティーを抜けると判断するのに時間はかからなかった。

フェルトたちはアビリティにより基礎能力を上昇させ、国トップクラスの実力者となって、俺のいる場所はもうここにはなくなってしまったのだ。


そう、この世界は残酷なのである。

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