異世界帰りの超能力夫婦、ちゃんと無双してTSラブコメをする。
@burst_stream_of_destruction
pro. 始まりは夜の散歩から。
真夜中。時計も0時を指す頃。
夏ももう終わりに近づき、蒸したような都会の熱もそろそろ冷えてきた。
そんな夜の住宅街で。
背の高く、メガネを掛けた済まし顔の男と。
ひ弱な体の、髪が膝辺りまで伸びた疲れた顔の女。
電柱の蛍光灯が二人並んだ影を伸ばしていた。
「あづい…暑ぃすぎる…まぢムリもう帰りだい゛ぃ!」
「もしもし莉音さん。これでもずうっと、マシになったほうだよ。」
「え?そんなわけ無いよね!?嘘だと言ってよアッキー!夏はこんなに暑くないよ!」
「ここ二ヶ月、クーラーガンガンにつけた部屋で配信やりまくってる君に夏の暑さは語れないと思うよ…。」
二秒沈黙。
「…一応ぉ、少しは外出てましたよぉ?アンタの言いつけどおり、公園にも行きましたしぃ?」
「ハイ、ダウト。君の靴、買ったばかりのぴっかぴかで鎮座してるの、僕が気づかないと思う?」
「ッス~」
仲良く歩く仲睦まじい二人の姿があった。夜の涼しい風が流れていく。
メガネをクイと上げる『アッキー』こと彰人はにこにこと莉音を見つめる。その視線を上から受ける彼女はタジタジ後退り。
それもつかの間、莉音は彰人の冷やかな目から逃げるように歩幅を大きくしてお家へ向かう。
只、彰人はさっきまで莉音の激遅な歩きスピードに合わせて歩いていた為、普段から出勤という名の運動をする彰人にとってヒョロガリに追いつくのは訳なかった。
「今日はバツとして、十五分は一緒に歩くこと。」
「や゛〜〜〜〜だぁ〜〜〜〜!!!おうぢがえる゛ぅ〜〜〜〜!!!」
「静かにしなよ〜夜だし。それにどれだけ叫んでも連行するからね。」
「( ; ω ; )ヒィン」
「泣いても駄目です。今後も一週間に一回は歩いてもらうからね。」
「ふぇ〜ん…」
「まぁ、暫くは暇だから一緒に歩いたげるよ。」
「帰りにアイスを奢ってくれると信じて――アタシは歩み続けるッ!!」
立ち止まりダダを捏ねる莉音をがっしりと掴みながら引きずる彰人。
莉音は泣きべそをかきながらも、渋々彰人の後をつけるのであった。
そんななんでもない、日常の一ページに。
二人の人生を変える、大きな起点が現れた。
『ズオァァァァァァァンッ…!!!!!』
「何だッ!?」
「へぇっ?!なにぃぃぃぃぃ!!?」
轟音が、夜の世界に響き渡る。
正零時。暗い空に淡い光が灯される。
夜道を歩いていた二人も、不可解な音により目が覚めてしまった住宅街の住民もこの轟音に動揺する。
しかし、地震にしては振動音が大きすぎる。
その上、地面が揺れていると感じられないのはおかしな話である。
ならば、上だ。街の住人は空を見上げた。
本当なら星と飛行機の光がちらほらと見え隠れする夜空が歪に変化していた。
(ん?この景色、僕はどこかで…)
(あれ?アタシ、これ見たことある…かも?)
「「あっ」」
空に浮かぶ、街全体を吸い込むかのような虚穴となっていた。
呆然である。唖然である。愕然である。
ニュースで一度は見たことがあるモノ…それが当に、来てしまったのだこの街に。
この住宅街には、何百、何千という住人がいるのに、空を見上げる人間たちの表情は驚くほど違いが感じられなかった。
ただ二人を除いては。
(記憶と感覚が?!頭の中に!!入ってくる…!!)
(これが…私の前世の記憶…なの?)
彰人の脳裏に宿るは、世界を圧倒した魔術師。中世的世界の魔術基本を捻じ曲げてきた叡智の姿。
莉音の脳裏に宿るは、陰ながら動くアサシン。サイバー世界の監視下で邪悪をさばき続けた暗殺者。
世界は違えど、英雄の記憶が帰ってきたのだ。
新型ダンジョン。凡そ百五十年前より現れし謎の空間。
『SORA架ける極大フカアナ。〜”底なき漆黒はアノコの眼”〜』
…略して『天空ホール』の誕生の瞬間であった。
そしてそれと同時に。
((な〜〜〜〜〜んか僕(私)、TSしてるんですけどォォォォォォ!!!!!!??))
二人のカップルの想いと関係がウルトラこじれる瞬間でもあった。
異世界帰りの超能力夫婦、ちゃんと無双してTSラブコメをする。 @burst_stream_of_destruction
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