暗黒青春グラフィティ
鏖(みなごろし)
暗黒青春グラフィティ
俺は深夜になると、
リュックに、
マーカー、ポスタカラー、スプレーを
入れて出かける。
人の家の壁や
閉まった店の
シャッターに
タギングやスローアップの
グラフィティを
描いてはその場から素早く立ち去る。
器物破損、住居侵入罪の立派な犯罪だけどな。
お巡りに追いかけ回された事も
1度や2度じゃない。
こんな俺でも
昔読んだ、
梶井基次郎の「檸檬」のように
丸善に「檸檬」と言う爆弾を仕掛けて
逃げ去るスリルにゾクゾクしたもんだ。
グラフィティもそれに似てなくもない。
この辺りもお巡りの警戒が厳しくなってきた。
そろそろ河岸を変えようと、
東高円寺あたりを縄張りにした。
何日かすると、こんな深夜に
帰宅?している女を見つけた。
そしてその女の後ろ5mくらいに
怪しい男がつけているのを
よく見かけるようになった。
俺は、
「HELP FUZZ!」と
2~3日の間
辺りにスローアップで
グラフィティを
書き殴っていた。
そしてとうとうある深夜、
女がいつものように歩いている、
そしてその後ろにあの男。
男がだんだんと距離を詰めてきた。
そして全く人気のない場所に来ると
女を後ろから羽交締めにし、
公園に連れ込もうとしていた。
俺は男の背後に近づき、
首根っこを強引に引っ張って
女から引き剥がした。
そしてそいつの顔に思いっきり
スプレーを吹きかけ、
股間をしたたか蹴り上げた
男は情けない悲鳴をあげた。
その時、
背後から声がした。
「おい!何をやっている!」
やっと来たな!
お巡りだ。
俺は素早くその場を立ち去った。
警官はすぐに察したらしく、
その男を逮捕した
「HELP FUZZ!」と
描いては、お巡りに
サインを送っていた。
「FUZZ」
とは警官を侮蔑するスラングだ
あの警官、
なかなか
やるじゃねぇか、
俺のサインを
わかってくれたのか?
終。
暗黒青春グラフィティ 鏖(みなごろし) @minagorohsi
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