栄冠は我に輝く!〜天才投手が描く甲子園優勝の軌跡〜
水輝
第1話 高校選択
自分の価値は他人が一番わかっている。と、僕は考えている。一人称な人生、俯瞰的に見るのにはどうしても限界がある。だから"これ"は、僕の価値を最大限表している。
「あんた、そろそろ決めえよ」
母親がもそもそレバニラ炒めを食べながら言った。父さんはまだ帰ってきていない。社会人は大変だ。
何を、とは言わない。晩ご飯を食べるスペースを確保するためどかしたプリント類に視線をやる。軽い山が形成されていた。僕に野球推薦を出してくれた高校から渡された書類が積み重なっている。
「今日決めるわ」
ごちそうさま、と言い残して皿を流し台に置く。書類の山の上から何枚かを拾って、自室へ。ぱたん、と扉を閉めて勉強机にプリントを置き、パソコンを立ち上げる。そのままExcelを開いた。
僕、
Excelには、声を掛けてくれた高校が記録されている。全部で30いくつ。ありがたい話だ。地元関西が中心で、関東や名古屋、東北からの誘いもある。
さて、僕の自宅近辺には野球強豪校がない。そのため野球留学は半ば既定路線となっている。そして、両親は何も言わないが、帰省のしやすさなどから僕に関西圏内での進学を希望していることを知っている。その中で入学金や学費免除の特待生待遇を用意してくれたところ、かつ僕好みの環境は……。うん。3校だ。
兵庫の神戸翔洋大付属高校、大阪の遊星社高校、京都の洛中高校。どこも素晴らしい条件を提示してくれた上、近年の活躍も目覚ましい。3校とも3年間あれば1回は間違いなく甲子園に行ける。それだけじゃなく、大学や社会人へのパイプも太く、進路に困ることはまずない。プロでもOBが何人も活躍しているし。
その中で、どう絞るか……。プリントに書かれた詳細な学校情報とExcelにまとめた裏の情報を合わせて検討する……。
決めた。後悔はない。ある人にメッセージを送って部屋を出る。そのままリビングへ向かった。母さんはテレビで歌番組を見ていた。テーブルにはラップされたレバニラがまだあった。繁忙期の父さんはまだ帰ってきていない。アイドルグループのキャピキャピした声が部屋中に響く。
「高校決めたわ」
「そう。どこ?」
振り返ることなく問うてくる。
「洛中」
母さんの肩が一瞬だけピクリとしたのは気の所為じゃない。
「そう」
返事はそれだけだった。
僕が洛中を選んだのにはいくつか理由がある。兵庫や大阪は全国屈指の激戦区であるから避けたいとか、洛中は週に1回オフがあり自由時間が確保されているとか、坊主強制じゃないとか、最新器具が揃い練習環境には困らないとか。でも、一番は。
ポケットに入れていた携帯が震えた。見ると新着メッセージが届いている。
「頑張れよ」
一文だけ返ってきていた。僕はにやりと笑った。
目指せ、甲子園優勝。栄冠は我に輝く。
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