氷の城と亜空の魔王~真夏の決戦・スーパーヒーロー対魔王~

よわレモン

第1話 王国の崩壊、そして真夏の戦いの始まり


 ××歴 ×××3年


 ヒートハル王国





 波の音がします。

 海岸の岩に波が打ち付けられ、水しぶきを上げるのが見えました。


 わたしは海が好きでした。

 広く、澄み渡っていて、キラキラとした海を眺めているのが好きでした。


 ですが今、海は真っ白に凍り付いています。 

 それは大地も同じでした。




 三週間前、突如として空に黒と紫の渦にも似た穴が開きました。

 亜空間の扉と呼ばれた、その空の穴の向こうにいたのは〈魔王ヒョウガ〉。そして彼が率いる〈魔王軍〉と、彼らの拠点である〈氷の城〉でした。魔王ヒョウガは世界統一国家である我々〈ヒートハル王国〉に対し宣戦布告、戦争を仕掛けてきたのです。


 この戦いにおいて我々は完全に圧倒されていました。

 氷の城から放たれる恐るべき冷気はやがて世界中を覆い、わたしの好きな海も、大地も凍り付きました。

 魔王軍の兵士である魔物の一種〈屍骸兵〉は無尽蔵といわれるほど存在し、その圧倒的な数の差で我々の軍隊は壊滅に追い込まれました。

 こうした魔王軍の攻撃の前に、我々になすすべはなく、開戦からわずか三週間でヒートハル王国は滅亡寸前まで追い込まれてしまいました。


 数百年の歴史あるヒートハル王国が、最期の時を迎えようとしていました。


 一方でわたしはといえば、我々に残された最後の土地であるヒートハル王国首都、その中心にあるヒートハル城にいました。そしてその塔の一つに、わたしの姉である第一王女アエリスと共に隠れていました。隠れていたというのもおかしな話です。魔王軍の魔手から逃れる術などないというのに……。

 お姉様はベッドに腰かけ、うつむきながら何か考え事をしているようでした。その一方でわたしはこっそりと窓から首都の戦いの様子を眺めていました。


 首都はあっという間に魔王軍によって蹂躙されました。首都が陥落すれば、次の戦場となるのはこの王城でしょう。


 まもなく城内が騒がしくなってきました。城を守る兵士達や避難していた国民の悲鳴、返り血を浴びて喜ぶ屍骸兵達の声がうっすらと聞こえてきます。


 やがて屍骸兵達はわたしたちがこの塔の一室にいることに気が付いたのか、屍骸兵達がこちらに向かってくる足音が聞こえてきました。少ししてこの部屋の扉を乱暴に叩く音がし始めました。

 扉は木製でしたが強力な防御魔法が掛けられていて、こじ開けることは極めて困難です。それでも屍骸兵達は扉を力任せに開けてしまおうと激しく攻撃をしているようでした。その音が、わたしには死への秒読みのように感じられました。


 もうすぐ自分が死ぬ、という覚悟はわたしにはありませんでした。しかし死ぬという実感だけがだんだんと出てきました。こみ上げる死への恐怖に体が震え、いつの間にか涙さえ浮かべていました。

 扉からミシリ、と耐久の限界を告げる音がし始めました。もうすぐ屍骸兵達がこの部屋になだれこんでくるのが容易に想像できました。


 そんな時、突然お姉さまがスッと立ち上がり、わたしの方を向きました。


「ごめんなさい、どうしてもわたし、あなたに死んでほしくないみたい」


 お姉様はそう言いながら、〈王家の証〉と呼ばれるペンダントを首から外し、わたしに握らせました。


 「お姉様、急に何を」


 お姉様が何を謝っているのか、わたしは分からずただ困惑するばかりでした。

 お姉様は右手を握りしめて、私に向けました。その中指にはめられた指輪の宝石が赤色に激しく光っていました。


「これは〈破壊の指輪〉。あなたも知っているわよね。三種の神器の一つ、かつて魔王を亜空に追放したときに使われた、空間をも破壊する強い力を秘めた指輪……」


 破壊の指輪についてはわたしも知っていました。ですがなぜそれをわたしに向けるのかわかりませんでした。


「本来これは魔王に向けるべきもの。しかしこの国に伝わるかつての伝説のように奴らを亜空に追放することはおそらく今は意味をなさない。それでも……何か別の使い道がないかと、こっそり研究していたの。それが……これよ」


 お姉様が一呼吸し、指輪に魔力を込めたのが私にもわかりました。


「≪指輪よ、我が声を聞け。清浄なる魂の為に、未だ知らぬ異界へと続く穴を、今ここにて穿て≫」


 そうお姉様が呪文を唱えると同時に、指輪の輝きは一層強くなり、鋭い赤い光線を放ちました。光線は私のすぐ横をすり抜け、私の背後で爆発音にも似た、でもどこか歪な音を立てました。

 驚いた私が振り向くと、そこには空間そのものが割れて、人一人分が通れそうな穴が開いていました。その穴の向こうに続くのは、真っ暗な中に青い光が次々と流れていく、不思議な異空間でした。


「お姉様!これは……!?」


「研究の成果よ。この先には、亜空間とも違う、別の世界に繋がっている……と聞いているわ」


「別の……世界」


「そうよ。そしてあなたは……そこで生きてほしい」


「え?」


「新天地での生活よ。きっと辛いことも多いでしょう。その穴の向こうにある世界がどんな世界かも、わたしには分からない。でも、でもね、わたしは……あなたに生きていて欲しいのよ。たとえどんな形でも。あなたがここで、屍骸兵共に嬲り殺されるなんてこと……わたしには耐えられないもの」


「でも、だけど、お姉様はどうするのですか?お姉様の言うその新天地に、一緒に来てはくれないのですか?」


 戸惑いながらわたしは尋ねます。


「……ごめんなさい、わたしは、ここに残るわ。わたしは第一王女ですもの。最期まで、この国を離れることなんてできない……」


「そんな……ではわたしにお姉様を見捨てて行けというのですか?」


「……そういうことになるわね」


「そんなのひどいです!無茶苦茶です!そんなの、お姉様のわがままではないですか!」


「そう。そうよ。これはわたしのわがまま。わたしはこの国で死ぬ、だけどあなたにだけは生きていてほしい。これはなんの道理も通っていない、こどものようなわがまま。でもこれがわたしにとっての最良なのよ」


「……」


 突然現れた、別の世界の新天地で生きるという選択肢。ここでお姉様と共に死ぬか、新天地で生きるか。わたしに死ぬのは怖い。だけど、お姉様を一人で死なせたくもない……。


 わたしもここに残り、お姉様と、この国と運命を共にします、そう言おうとした時でした。

 バキリという音がしてこの部屋の扉が半壊しました。屍骸兵達が隙間から手や武器を伸ばしていました。獲物を狙う屍骸兵のギラギラとした眼がわたし達を捉えていました。


「行ってフィス!もう時間がない!」


お姉様は悲鳴にも似た叫びと共に、別の世界へと続く空間の穴へとわたしを突き飛ばしました。


「お姉様!」


「どうか生きて。それで……たまに、わたしの王家の証を眺めて……わたしのことを思い出してくれたなら……お姉ちゃん、それでとっても満足よ」


 お姉様に突き飛ばされたわたしは、そのまま空間の穴に吸い込まれるように落ちて行ってしまいました。


「さようなら、フィス……元気でね」


 お姉様がそうわたしに言うのと、塔の扉が破壊された音が聞こえたのはほとんど同時でした。

 それから少しして、お姉様の悲鳴が、断末魔が聞こえました。

 遠くみえる閉じかけた空間の穴から、お姉様の最期が見えました。


 その後は、この空間に響く風のような音以外何も聞こえなくなりました。きっと空間の穴が閉じてしまったのでしょう。




 静寂が続きました。



 お姉様と運命を共に出来なかった後悔が、お姉様を救えなかった無力感が、空間の穴の向こうをただ落ちていくわたしの体の中に満ち満ちていました。


 わたしは今の状況に身を任せて、目を閉じました。そうやって目を閉じていると、いつの間にかわたしは眠ってしまっていたようです。あるいは一種の気絶だったのかもしれません。





 いつしかわたしは目を覚ましました。



 いつの間にかわたしは芝生の上で寝そべっていました。わたしは体を起こし、周りを見渡しました。

 高く四角い銀色の塔が無数に立ち並んでいて、行きかう人々は見慣れない服を着ている。

 きょろきょろと周りを見渡してみるけれど、その街並みはわたしが今まで見聞きしたどれとも一致しませんでした。


 どうやらわたしはお姉様の言う別の世界に辿り着いたようです。


 わたし達が生きてきた世界とは別の世界。文字通りの新天地。

 こんな何もかもが違う世界でどうやって生きて行けばいいのだろう。そんな不安がふつふつと湧いてきました。あまりの不安に、わたしはいつしか涙を浮かべていました。


 ふと、聞きなれた波の音が聞こえました。何とはなしに、わたしは音のした方向にふらふらと歩いていきました。


 そこには海がありました。


 わたしの知る海より少しは濁っているけれど、これは海です。少し遠くに見えるのは、きっとこちらの世界の船なのでしょう。

 少しだけ違っているけれど、わたしの世界と変わらないものがここにありました。わたしの中に、ここで生きていく希望が少しだけ湧いてきました。

 そうしてわたしは、ここでの暮らし方を知るために、少しこの世界を見て回ることにしました。


 わたしはこの世界の街に向かって歩き出しました。


 お姉様、わたし、ここで頑張って生きてみます。お姉様の王家の証を手に、そうお姉様に伝わるように。




_____



 現代 8月


 日本 某県にある大規模な港町 通称〈ベイエリアタウン〉





 ベイエリアタウンの海沿いを、じりじりと日光に焼かれながら歩く。


 片手に持ったスマートフォンには〈異常なし〉の表示。


 雲一つない空に太陽がギラギラと輝き、僕の身体は汗をだらだらと流しいている。


 暑い。


 今は真夏。


 暑いのは当たり前なのだがこの暑さはヤバい。


 なぜ僕がこんな暑い日中に港町を歩き回っているのか。それは、先日この付近で時空間ポータルが開いた反応があったからだ。


 時空間ポータル。

 それは時間や空間を超えた場所に繋がる時空の穴、いわゆる異世界への扉だ。

 これが開いた反応があったということは、大抵の場合時空間に異常があったか、あるいは異世界からの来訪者があったということになる。あまりないことだけど自然発生という場合もあるが。

 今回観測されたのは小規模なポータルで、それ以外の異常はその後も感知されなかった。 

 しかし、今回の件について僕は、どこか言い知れぬ胸騒ぎを感じ今日ここにきて調査を行っている……。


 手にしたスマートフォン…正確には〈スマートフォン型超デバイス「ライズフォン」〉のスキャンアプリを使い辺りを調査しているが進展はない。

 スキャンアプリとは、ライズフォンに組み込まれた各種センサーを駆使し周辺を調べるためのアプリケーションだ。超常的なモノも調べることもできる優れものだ。


 しばらくスキャンアプリを使い辺りを調査しながら歩いていたけど、そろそろ暑さに耐えられなくなってきた。

 木陰に避難していったん休憩する。水分補給にと持ち歩いていたペットボトルを取り出しスポーツドリンクを一気に飲み干した。


 まあ別に異常なしならそれでいい。平和が一番。

 念のため辺りをもう一度調査してから、今日はもう帰ろう。空になったペットボトルをゴミ箱に捨てて、調査を再開しようとしたところだった。


 僕の眼前を一人の少女が横切るように歩いて行った。それ自体はどうということはないのだが、彼女は何か金属片のようなものを落として行ってしまった。彼女はそれを落としていったことに気がついていないようだ。届けてあげなくてはと思い僕は落とし物の金属片を拾った。

 それは金色の三角形の形をした金属の装飾がついたペンダントのようなもので、装飾の裏には魔法陣にも似た刻印がうっすらと施されていた。


 僕はペンダントの落とし主である少女を追いかけて呼び止めた。


「あ、あの!このペンダント、あなたのでは……」


「あら……もしかしてわたし、落としてしまっていたでしょうか?その、届けてくれて、ありがとうございます」


 僕は彼女にペンダントを渡した。この時、僕は初めて彼女を真正面から見たが、息を呑むほどの美少女だった。

 濡れたようなきれいな黒髪、白いサマードレスのような服を着ていて、年齢は僕より 3~5 歳上にみえるから、およそ 13~15 歳くらいだろうか。どことなく高貴だが柔らかな雰囲気を纏っていてまるでどこかのお姫様のように見えた。


「……このペンダント、本当は私のではないんです」


「え?」


 思わず聞き返す。


「姉のたった一つの形見なんです……まさか落としてしまうなんて……拾っていただけて、本当に良かったです……」


 彼女はペンダントを握りしめて、まるで祈るかのようにお礼を言ってくれた。


「……えっと、じゃあ、僕はこれで」


 届けるべきものも届けたので、僕は彼女の前から立ち去った。


 その時、僕のポケットの中のライズフォンが震えた。

 ライズフォンを取り出す。すると画面が点灯したままで、スキャンアプリからの〈分析完了〉の通知が表示されていた。

 スリープモードにし忘れたままポケットにしまっていたらしい。しかしいつの間に何を分析したんだろう?そう思って分析結果を見る。

 そこにはさっきのペンダントの分析結果が書かれていた。


≪分析完了/////≫

≪警戒レベル2/////≫

≪物質照合:不一致率100%/////≫

≪地球に存在しない金属で作られています/////≫


 あのペンダントが地球に存在しない物質?

 まさかさっきの彼女が、先日のポータルを通ってやって来た"異世界からの来訪者"なのか?

 そう思ってあたりを見渡して彼女を探すが、もう雑踏に消えてしまった後のようで見当たらない。でもまだ遠くには行っていないはず、探してみようか……と思ったその時だった。ライズフォンがけたたましく鳴った。

 この激しい警告音は最大の警戒レベル6を示す音だ。レベル6は周辺での大規模な異常事態発生を意味する。何が起きたのかと僕が辺りを警戒したのと、海の方角から異様な轟音が聞こえてきたのはほとんど同時だった。

 僕は海側に向かって駆けだした。


 海上に、直径50mはあろうかという、黒と紫の渦巻を纏った異様な時空間ポータルが発生していた。

 人々が集まってきて、あれはなんだとざわめいている。スマホで写真を撮っている人達も多くいた。


「あれは……」


 思わずそう言ってしまう。あれは時空間ポータルの一種だ。ああいうのは何度も見たことがある。だけどそのポータルの奥に見える空間はあまりに異様で、ひどい錆を思わせる赤茶けた色をしていた。

 しかもその奥の赤茶けた空間の中に、何か建造物があるのが見えた。それはファンタジーに出てくる巨城に似ていたが、青くキラキラとしていて氷で出来ているように見えた。

 僕も周りの人々も、海上で起きている事態を前にあっけに取られていた。


 ポータルの奥にある城の頂上が一瞬光った。それから一拍ほど置いて、城からなにか白いガスのようなものが噴き出した。それは冷気だった。

 冷気は一瞬で海を覆い陸にまで上がってきた。あたりの気温が一気に下がってくる。

 突然の寒さに驚いていると、城の門が開く音がした。それと同時に海面が一直線に白く凍結しだし、城と陸とを繋ぐ氷の橋ができた。城の門から無数の何かが出てくる。

 それは鎧を着た、ゾンビにも似た人型の怪物だった。それが氷の橋を渡って、剣などの武器を振り回して、走ってこちらに向かってくる。

 ここにきて周囲の一般人が事態の重大さに気が付いたのか、悲鳴を上げて逃げ始めた。

 僕も一旦ここから離れて体制を整えた方がいいかもしれない。そう思って僕は避難する人々に紛れて走り出した。


 しかしゾンビに似た怪物もかなり素早かった。怪物の一部は氷の橋を渡って既に上陸し、避難する人々に追いつき襲い掛かろうとしていた。


 僕の視界の端に、一体の怪物が女性に馬乗りになり剣を振り下ろそうとしていたのが見えた。まずい!そう思うと同時に体が動く。

 僕は怪物に飛び蹴りをかまして吹っ飛ばす。そして襲われそうになっていた人に手を伸ばし立ち上がらせた。


「逃げて!」


 僕はそう叫んでその人を逃がした。

 その次の瞬間、さっき蹴り飛ばした怪物が逆襲しようと、僕の背後から剣を振り下ろしてきた。しかし僕はそれをギリギリで避け、逆に怪物の頭と腹に裏拳、さらに腹に肘打ちを一撃、そして飛び後ろ回し蹴りを頭頂部に叩き込んでやった。それでもまだ怪物は倒れない。

 僕は怪物の鎧に覆われていない腹部に連続パンチを喰らわせてさらにアッパーで顎を殴ってよろけさせ隙を作り、体をひねって繰り出した横蹴りで怪物を吹っ飛ばした。

 ようやく怪物がダウンして倒れたのを確認して、僕は逃げ遅れた人々を助けるべく駆けだした。


 寒さが強まってくる。

 吐き出した息が白い。とても今が真夏とは思えない。

 周辺を駆け回って、怪物を三、四体ほど撃退して逃げ遅れた人々を助けてきた。そこそこ体が温まってきたはずなのに、かなり寒さが体に堪える。


 なにか薄暗い気がして、空を何気なく見上げた。空が黒い雲に覆われていた。雲の中心のその真下には例のポータル、謎の城があった。恐らくはあの城、あるいはその中には何か気候や気温を操る能力があるのかもしれない。

 そう考察していると僕はいつの間にか周囲を怪物に包囲されていた。


 計六体。怪物達がじりじりと距離を詰めてくる。こちらも怪物達の隙を伺う。

 数秒して、怪物達がこちらに向かって一斉に剣を突き出してきた。僕はそれを跳躍して避ける。剣同士が空を切ってぶつかり、ガキンという激しい金属音と共に火花を散らした。


 僕は着地すると同時にショルダーバッグの二重底の下から〈ディスクチェンジャー〉を取り出して、腰に巻いて起動させた。ディスクチェンジャーの中心にはめられたディスクが高速回転する。ディスクチェンジャーから電子音声が鳴る。


≪DISC CHANGE/////≫ ≪DISC BOY… LET`S・GO!/////≫


 電子音と共に、チェンジャーを中心として青と銀色のパワードスーツが実体化し、僕の身体を包む。

 僕はパワードスーツ戦士〈ディスクボーイ〉に変身した。


 一呼吸。

 気合を入れる。

 

 怪物達が飛び掛かってきた。だが今の僕はさっきまでとは違う。スーツの力で身体能力が強化されているのだ。怪物の一体が繰り出してきた剣の一撃を片手で受け止める。

 僕の手はスーツで強化されていることもあって剣ごときで傷つくことはない。受け止めた剣を腕力で曲げ、使い物にならなくする。そして怪物の顔面にパンチを一撃喰らわせて倒す。そして背後から迫ってきた別の一体を後ろ蹴りで粉砕した。

 怪物の一体が剣を捨てこちらにパンチを放ってきた。

 一撃目は避けて、二撃目のパンチを掴む。そして逆に腕ごと捕まえて投げ技で地面に叩きつける。それでも怪物は起き上がってきたので眉間へのパンチでトドメを刺す。

 怪物達は一体ずつでは僕に敵わないと見たのか、残った三体纏めてこちらに向かってきた。僕は後ろに跳躍して距離を取る。

 ついでに左腕をキャノンに変形させビーム弾を数発撃って怪物達を牽制する。開いた右手でチェンジャーを操作し、中央にはめ込まれたディスクを回転させる。


≪NOW・LOADING/////≫ ≪KICK… BO・BO・BO・BOOST/////≫


 チェンジャーからガイド用の電子音声が鳴る。背中のエアブースターから空気を噴出しさらに高く跳躍する。

 右足にエネルギーが集まってくるのを感じる。空中で一回転し、狙いを定める。ターゲットは怪物三体。右足を突き出し、必殺の飛び蹴りを繰り出す。


「ブーストキック!!」


 破壊エネルギーを纏ったキックは見事怪物に炸裂。怪物達はまとめて吹き飛ばされ地面に激突し爆発した。



 しかし敵の襲撃からここまでに時間を掛けすぎた。あちこちから悲鳴や破壊音が聞こえてくる。既に街にゾンビのような怪物達が蔓延っているのが、ここからでも分かった……。

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