津山ごんご ものがたり ― むかし大川にかっぱがいたそうな ―
Tatsuo Hikisa
第1話
むかしむかしのことじゃ。津山のまちを流れる大川で、村の子どもたちが水あそびをしておった。仲良し五、六人が、ちゃぷちゃぷと水をはね上げ、きゃっきゃと笑っておったそうな。
ところがある日、川の深みから、すうっと現れた影があった。それは、このあたりで「ごんご」と呼ばれる河童じゃった。ごんごは、ひとりの子の着物のすそをつかみ、水の中へ引きずりこもうとした。子どもはあわてて声を張り上げた。「たすけてぇ! たすけてぇ!」すると、その声を聞きつけた年長の娘、さくらが、脇に置いていたきゅうりを、ひょいとごんごめがけて投げた。ごんごはきゅうりに目を丸くし、たちまち飛びついた。そのすきに子どもは岸へ上がり、命拾いしたそうな。さくらは、ごんごがきゅうりを大好物にしていると知っていて、川あそびのときは、いつもきゅうりを持って来ておった。
この地方では、河童をごんごと呼ぶ。そのごんごは、みんなから「ごんごの助」と呼ばれていた。今では、その大川は吉井川と呼ばれておる。
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