氷の伯爵とシンデレラ

@007NYASU

『氷の伯爵と捨てられた妹』

とある中世の小国、名家の令嬢エリザは、美しさと気位の高さで知られていた。ある日、彼女のもとに王宮から縁談が持ち込まれる。相手は「氷の伯爵」と渾名される男――その冷酷無慈悲さと、決して笑わぬ鋼のような表情で有名な戦功の騎士であった。


「ふん、冗談じゃないわ。あんな氷の塊みたいな男、誰が嫁に行くものですか」




 エリザは書状を握りつぶすと、部屋の隅で本を読んでいた妹クラリスに目をやった。クラリスは同じ名家の娘でありながら、地味な外見と内気な性格で、屋敷の使用人たちにも軽んじられていた。




「……あんたが行ったらいいわ」




 その言葉に、クラリスは本から顔を上げる。




「え……姉さま、それは……」




「黙りなさい。どうせ一生、嫁の来手もないでしょう? あんな男には、ちょうどいいわよ。感謝なさい」




 笑みすら浮かべず、命令のように言い放つエリザ。その言葉は、いつものように誰にも逆らえぬ冷たい響きを持っていた。




 ――こうして、誰からも望まれなかった「妹」は、恐れられる伯爵の縁談を受けることになる。




 だが誰も知らなかった。


 その「氷の伯爵」は、実は――


 ある"秘密"を抱えていたのだ。

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