第10話 誰が意地悪な人

 まだ人々が寝静まる深夜、ベットに少し灯りを灯したままスヤスヤ眠るシャーロット。町ではしゃいだ疲れが溜まりスヤスヤと深く眠る中、シャロとリリーが出た窓からコンコンと窓を叩くが何度も部屋に響いた

「……なに?」

 音に気づいたシャーロットが不機嫌そうに目覚めるコンコンと叩き続ける窓にあるカーテンを開いて外を見ると、窓辺に立つリリーを見つけた

「おはよう、窓開けて」

 リリーの声に、眠い目を擦りなら少し窓を開ける。すぐにシャーロットの部屋に入ったリリーは部屋の中を一周するようにぐるりと回った

「……なんなの、何の用?」

「朝御飯がほしいの。昨日のパンも果物もあるなら頂戴」

 まだ目が覚めず声も出ないシャーロットに対しリリーは質問に元気に答え、シャーロットの隣にあるテーブルに立ち止まる

「クローゼットにあるわ……」

 ふぁ、と一つアクビをしながらパンや果物を隠したクローゼットに向かう。リリーもシャーロットの肩に乗り移り、一緒にクローゼットに向かう。部屋の外まで響かないように、そーっとクローゼットの扉を開けると、パンや果物がコロコロと床に転がり落ちた。シャーロットがクローゼットにある物や落としたパンや果物も袋に入れてリリーに差し出すと、くちばしで袋を受け取り入ってきた窓の方へと向かっていく

「ありがとう、また後でね」

 窓辺に止まりシャーロットに挨拶をすると、飛び立っていったリリー。まだ頭が回らないシャーロットはリリーの姿が見えなくなると、窓を閉じ、簡単に閉じるようになったクローゼットを閉め直すと、ベットの側にある灯りを消し、すぐ深い眠りについた




「シャロ、貰ってきたよ」

 ディオロイ城からシャロのいる家に戻ってきたリリー。咥えて持ってきたパンや果物が入った袋をテーブルに置く。ソファーで横になり本を読んでいたシャロがちらりとその袋を見る

「本当に行って貰ってきたの?」

「うん、食べれるうちに食べよう」

「今はいいや。先に食べてて」

 リリーと話をしながら本を閉じ、リリーが持ってきた袋の側に読んでいた本を置いた

「何読んでいたの?」

「この村の歴史書。特にかわりなく平和な村だね」

「えー、つまんないの」

「つまんなくないよ。平和が一番なんだよ、リリー」

「シャロがそう言うの?」

 袋からパンを引っ張り出しながらリリーがシャロに言い返す。砂糖が沢山まぶされた甘いパンをやっと引っ張り出してすぐシャロが甘い香りがするそのパンをリリーから奪い取りパンを食べた

「意地悪言うならあげない」

「勝手に取るシャロの方が意地悪」

 奪われて怒ったリリーがパンを食べ続けるシャロの周りをグルグルと飛び回る。貰えないと諦めたリリーが今度は果物を取り出そうとテーブルに移動すると、シャロがさっきテーブルに置いた本が突然燃えはじめた

「シャロが燃やしたの?」

「いや、意地悪な誰かが読んだら消える術をかけてたみたいだね」

 パンを食べ終えそうなシャロの肩に慌てて移動したリリーと一緒に燃え続ける本を見守る。燃え尽き灰になった本の燃えかすはリリーが開けっ放しにしていた窓の方に向かっていく。シャロがソファーの側に置いていた、読んでいない本を取りページをめくった

「これ以上意地悪される前に、さっさと用事を終わらそうか」

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