第5話 夜、ひとときの時間に

 シャロが消えた数時間後、夜も更けディオロイ城も落ち着きを取り戻しシャーロットも家政婦達と共に自室に戻り、部屋にある広いベッドに座った

「はあ、疲れた……」

「今日は剣術の練習と逃亡者の捜索をしましたからね」

「そうね……」

 家政婦に小声で返事をしてフカフカなベッドに顔を埋める。その間に家政婦達が部屋のカーテンを閉めたり、部屋の電気を少し暗くしたりベッドの側のランプをつけたりと忙しく動いて、シャーロットが快適に眠れるように準備を進めている

「シャーロット様、ゆっくりとおやすみなさいませ」

「ええ、おやすみ」

 シャーロットがまた返事をすると、部屋の入り口に集まった家政婦達がペコリとお辞儀をして部屋の電気を消そうとスイッチに手を伸ばした時、突然シャーロットが体を起こし家政婦達に声をかけた

「ねえ、お母様とお父様はいつ帰ってくるの?」

「申し訳ありません、私達はいつか帰ってくるかは存じ上げておりませんので……」

「そう……、そっか。ありがとう」

 またフカフカなベッドに顔を埋め、動かなくなった。少し心配そうに家政婦達が少しシャーロットの様子を見た後、そーっと部屋の電気を消しゆっくり扉を閉め全員シャーロットの部屋を出ていった。廊下を歩く足音やヒソヒソと話す声が遠く離れ聞こえなくなると、またシャーロットが体を起こしベッドから降りた。ベッドの側にあるランプの小さな灯りを頼りに窓に近づき、カーテンを少し開いて夜空を見上げた

「私に似たアイツは今何をしているのかしら」

 そう呟き雲に隠れそうな月を見る。すぐに部屋を照らす月明かりが小さくなり、そっとカーテンを閉じ直してベッドに戻った


「リリー、紅茶が跳ねてる。本が濡れるから止めて」

 一方その頃、ディオロイ城からだいぶ離れた場所にある一軒家で、本を読んでいたシャロがリリーにティーカップに入れていた紅茶を水浴びに使われ困っていた

「リリー。話聞いてる?」

 また声をかけてもリリーはご機嫌でティーカップの中に入る。紅茶が飲めなくなったシャロは、はぁ。と一つため息をついて本を閉じ椅子から立ち上がり、本棚に本を戻した

「シャロ、どこに行くの?」

離れたことに気づいたリリーが水浴びを止め声をかける

「私もお風呂。リリーも一緒に入る?」

「シャロは水を掛けて意地悪するからヤダヤダ。入らない」

「じゃあ外で見張りでもしていて」

「了解」

 元気よく返事をするとまたティーカップに少し残った紅茶で水浴びをはじめたリリー。跳ねを少し広げると紅茶が跳ねてテーブルが少し濡れた。それを横目に本棚を指差し、新たに読む本を探しはじめるシャロ。バシャバシャと水が跳ねる音が部屋に響く中、一冊の古い本を本棚から取り出した

「もう読む本もなくなったか。また本を探さなきゃ」

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