時間の扉の少女
紙の妖精さん
第1話
夜が深くなる頃、雨南は白檮家の敷地内にある山のふもとから登り始めた。背中には寝袋を詰め込んだリュックサック。薄暗い森の中、満月は厚い雲の合間から時折顔を覗かせている。ひんやりとした風が葉を揺らし、かすかな虫の声が耳をくすぐった。
「ここなら…いいかな」
雨南は小さな谷間の開けた場所に足を止めた。草が柔らかく、周囲に大きな岩がいくつか並んでいる。テントを広げるにはちょうどいい場所だった。手際よくペグを打ち込み、シートを張る。辺りは静まり返っているが、どこか遠くで水の流れる音がかすかに聞こえていた。
ふと空を見上げると、雨上がりの空に星が瞬き、その中を一本の流れ星が尾を引いて消えていく。思わず息を飲む。こんな夜にここにいるのは、雨南だけだった。
「時間を買うんだ」
そう自分に言い聞かせながら、彼女は背負ってきた小さな包みを取り出した。手のひらに乗るほどの小さな券。白檮家の図書館に滞在できる時間を買うための、特別な許可証だった。
眠る前に、雨南はそっと空を見上げた。満月の光が森を銀色に染めていた。
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