第3話 異端

ちちち、ちちちち

とスズメたちがざわついて

窓辺でウトウトしていたスミは目を覚ます


「白いのが来た、あの子。また来た」

わらわらと集まってきた茶色のスズメたちが、餌台の上で、ちょっと距離を置く

そこに遅れて舞い降りてきたのは、オコメという名の白いスズメ。


遠慮がちに数粒のパン屑をついばんで、

「ごめんね、もう行くよ」

茶色のスズメたちにそう鳴いて

オコメはスミの居る窓辺へ飛んで来た


「オコメ!パンはおいしかった?」

スミは無邪気に聞いた

「味わう暇などないな」

オコメが羽繕いしながら答える


「美味しいね、今日のパン」

「いや、一昨日の米粒のほうがずっと食べでがある」

でも餌台ではスズメ達がお喋りしている


スミは網戸越しにそれを聞いて

「みんな、いろいろ言ってるよ。オコメはどんなご飯が好きなの?パンよりも米がいいの?」

「……私が居たら、彼らは落ち着いて食事を摂れないからね。私は“味わう”よりも、手早く食べるだけさ」

ふるふると羽を震わせてオコメは言う。

スミには、その理由が分からない。


「どうして?なんでオコメが居たら他のスズメさん達がご飯食べられないの?」


「……むれにつつき殺されないだけマシさ。白い私は、彼らにとって邪魔なんだ」

空を飛んでいく数羽のカラスを見上げて、オコメは言った。


真っ黒な猫であるスミは首を傾げる。

「オコメ、なんで白いのだめなの?すっごくきれいなのに」

きらきらした目で、白いスズメに言うスミ

きょとんとしてスミを見つめるオコメ。


きれい?

この白い体が?


茶色の雀の中に居られぬ

群の中にあっては目立つ異端の白羽だというのに?


驚いているオコメにスミは呟く

「だって黒猫って不吉なんだって。だから、黒い僕より、オコメの白い羽根、ずっとずっと素敵だよ」


オコメはじっとその呟きに耳を傾ける。

そしてゆっくりと言った。

「カラスの真っ黒な影は恐ろしく、私にとっては不吉の象徴だ。だが、貴方は、……飼い猫である貴方は、違う。貴方の毛色は、美しいと、私は思う」


スミの喉がごろごろと鳴った









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