鉄財歌爺

第1章 突如の襲撃

午後の街角。柔らかな日差しが石畳の上に影を落とし、通りを行き交う人々のざわめきが心地よく響く。しかし、その穏やかな空気を切り裂くかのように、七歌は街角で剣を構えて立っていた。

「お前ら……何者だ!」

その声は低く、鋭く、しかし内側には微かな動揺が潜む。通りの奥から、闇の中に潜む影たちがゆっくりと一列に並ぶ。中央に立つ男――ビスマルク――は、漆黒のローブを翻しながら一歩前に出た。その瞳は冷たく光り、微笑の端には計り知れぬ野心が滲む。

「我らは財団を継ぐもの。全てはあの方のために……ビスマルクと申す。七歌、君の名は知っている」

七歌の眉がわずかにひそむ。男は明らかに彼のことを知っている様子だ。しかし、七歌自身はこの人物のことを何も知らない。

「なぜあの少女を追うんだ?」

七歌の問いには鋭い怒りと疑念が混ざっていた。少年時代の記憶、守るべきもの、そして目の前の危険……そのすべてが交錯する中、ビスマルクは冷たい微笑を浮かべる。

「答えられない質問ですね。だが、すべては秩序のため、力のため……そして、あの方の望みのため」

彼の声は静かだが、重く、街全体の空気が揺らぐほどの威圧感を持っていた。七歌はその言葉に反発心を燃やし、剣に手をかける。

路地の端には、落ち葉が風に舞い、光と影が複雑に交差している。その中で、七歌は戦いの覚悟を固め、ビスマルクの姿を逃さぬよう視線を鋭くする。


第2章 魂解ナナツノウタ

七歌は深呼吸し、全身の力を剣に集中させる。

「魂解……《ナナツノウタ》!」

剣から七色の光が迸り、街の空気は一瞬で鮮烈な色彩に染まる。光の旋律が静寂を切り裂き、空間そのものが震えたかのように感じられる。

「これで……止める!」

七歌の声には決意と覚悟がにじみ出る。しかし、ビスマルクは微動だにせず、巨大な剣を高く掲げ、暗黒のオーラを纏った。

「遅い……かかる……魂解、鉄爺界冥!」

黒い力の奔流が七歌に襲いかかり、剣戟の閃光が路地を震わせる。七歌は光の剣で攻撃を受け流し、七色の衝撃波が街を押し広げる。石畳が砕け、周囲の建物の影が揺れる。

「ふ……まだまだだ、七歌」

ビスマルクは笑みを浮かべ、静かに戦場を支配するかのように立つ。その眼差しには、七歌に対する知識と興味、そして静かな挑発が混ざっていた。七歌は男の意図を計りかねながらも、剣の力をさらに高める。


第3章 光と影の交錯

戦場は光と影の交錯に染まる。七歌の放つ光が闇を切り裂き、ビスマルクの闇が光を押し返す。剣の軌跡が空気を裂き、火花と光の閃光が街路を彩る。

「くらえ!」

《ナナツノウタ》の旋律が戦場に響き渡り、光の衝撃波がビスマルクの手下や周囲の障害物を押し返す。しかし、ビスマルクは冷静に笑みを浮かべ、巨大な剣を振りかざし連続攻撃を仕掛ける。

七歌は光の剣で防御しつつ、心の中で戦況を分析する。敵の動き、風の向き、石畳の割れ目……すべてが戦闘に影響を与える要素となる。彼の呼吸は整い、戦いのリズムに完全に集中する。


第4章 激戦の果て

剣と光のぶつかり合いで、街路の石畳が砕け散り、周囲の建物の影が揺れる。七歌は光の力を振るい続けるが、ビスマルクの闇の力は凄まじく、徐々に押される。

「くっ……!」

七歌の光が一瞬揺らぐ。その隙を逃さず、ビスマルクは黒い衝撃を全力で叩き込む。七歌は地面に押し付けられ、剣を握る手がわずかに震える。

「魂解、鉄爺界冥――全力!」

闇の力が七歌を包み込み、光の反動と衝撃で石畳に押し付ける。街は戦場と化し、瓦礫が舞い上がる。七歌は必死に剣を握り、光を集めようとするが、ビスマルクの圧力は凄まじい。


第5章 敗北と撤退

七歌は地に膝をつき、呼吸は荒く、剣を握る手が震える。ビスマルクは勝ち誇った笑みを浮かべるが、完全な勝利ではない。

「これが……我らの力か……」

七歌はゆっくりと立ち上がり、光を再び集める。心に燃える怒りと決意が剣に宿り、眩い光が街路を照らす。

「まだ……終わりじゃない……!」

ビスマルクは一歩退き、撤退を選ぶ。背中を振り返る七歌に、静かに声を投げる。

「次は……負けぬようにな、七歌」

街に一瞬の静寂が戻る中、七歌はその背中を睨みつつ、少女と絆川のもとへ駆け戻る。石畳に残る光の軌跡は、戦いの余韻を静かに語りかける。

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