仲光絆歌
第1章 迫りくる影
赤く染まる夜空の下、焦げた大地が燃えるように揺れていた。
瓦礫が散乱し、煙と灰が戦場を覆い、空気は重く張り詰める。
七歌は剣を握りしめ、倒れたインクの姿を目に焼き付けた。
だがその視線は冥川から一瞬も逸れなかった。
胸の奥で何かが激しく脈打つ。
「……お前だけは絶対に許さない」
その言葉は自然に唇から漏れ、震える胸の奥の感情が共鳴した。
怒り、悲しみ、そして決意――全てが言葉に込められた瞬間だった。
冥川はゆっくりと笑みを浮かべた。
「ほう……七歌よ、ついに心の奥の憎悪を口にしたか」
その瞳の赤黒い光が、夜空に反射して妖しく揺れる。
七歌は剣を握り直し、足を踏み出した。
「俺は……俺は仲間を守るためにここにいる!」
握る手に力を込め、胸の奥で叫ぶ。
「光も闇も、全部抱きしめてみせる!」
頭の中に、絆川の声が響く。
「七歌……もし俺が闇に堕ちたら……その時は頼む。お前が俺を切れ……俺の体の中には、光と闇がある。闇が暴れるとき、お前だけが俺を止められるんだ……」
七歌はその言葉を胸に刻み、全身の力を剣に集中させた。
「お前だけは……絶対に守る! 誰にも渡さない!」
七歌の瞳が燃え、剣先から七色の光が迸った。
第2章 揺らぐ想い
剣を構えながら、七歌は胸の内を整理する。
幼い頃、孤独に震えていた日々――
誰も信じられなかった自分を救ってくれたのは、ただ一人、絆川だった。
「……絆川、俺は……」
冗談交じりに笑い合った日々、肩を貸してくれた日々、
真剣な目で共に立ち向かった戦場の記憶――
そのすべてが頭の中を駆け巡る。
冥川は影のように近づき、低く嗤う。
「七歌よ、君の心はまだ揺れている。光の部分だけで闇を制御できると思うか?」
七歌の瞳が光を帯びて燃える。
「できる!」
声に力を込め、胸の奥の決意を叫ぶ。
「俺は信じる……絆川の光も、仲間の光も……全部信じる!」
冥川は顔を歪め、さらに嗤う。
「信じる……か。だが闇はいつでもお前に触れる。光だけで、闇を止められると思うか?」
七歌は剣先を上げ、地に爪を立て、強く叫んだ。
「止めてみせる……お前の闇も、俺が食い止める!」
第3章 闇と光の交錯
冥川が手を振ると、黒い霧が戦場を覆った。
七歌は光の剣を高く掲げ、押し戻されながらも立ち向かう。
「見ろ、七歌……闇は必ずお前を飲み込む!」
冥川の声が地鳴りのように響く。
七歌は頭の中で絆川の声を反芻する。
「七歌……頼む。もし俺の闇が勝ったら……お前だけが俺を止められるんだ……」
その思いを胸に、剣から光が飛び出し、黒い霧を弾き飛ばす。
轟音が戦場に響き、瓦礫が散る。
光と闇のぶつかり合いは、戦場を破滅寸前まで揺らした。
「いや……俺は負けない!」
七歌は叫ぶ。
「俺は光を信じる――そしてお前の闇も、俺が止めてみせる!」
剣閃が冥川に向かって飛び、黒い霧が弾ける。
「お前だけは……絶対に諦めない!」
第4章 迫る決意
冥川が一歩踏み込み、影の刃を振りかざす。
「七歌、君の覚悟を試してやろう」
その声は戦場全体を震わせるほど重く、圧迫感を伴った。
七歌は軽く息を吐き、足元を固める。
「覚悟はできている……俺は光も闇も抱く!」
胸の奥の決意を全身に巡らせ、剣先から虹色の閃光を放つ。
「だから、俺は絶対に揺らがない!」
光と闇が戦場に交錯し、七色の剣閃が冥川の影を切り裂いた。
「……俺は、俺の仲間を信じる!」
その叫びは、戦場の轟音に負けない強さで響いた。
第5章 再び立ち上がる七歌
激しい衝突の後、七歌は膝をついた。
息は荒く、体は傷だらけだ。
だが目には揺るがぬ決意が宿っている。
「絆川……俺は、お前の光も闇も……すべて信じる」
頭の中で絆川の声が柔らかく響く。
「七歌……ありがとう……俺は安心して逝ける……だが、万が一のときは頼むぞ……」
冥川は影のように立ち尽くし、ゆっくりと声を落とす。
「面白い……七歌、君の覚悟は確かに光を帯びている……だが、まだ終わりではない」
七歌は剣を握り直し、戦いの余韻の中で再び立ち上がる。
夜空に残る赤い光の下、光と闇の交錯は、まだ続く――。
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