目が覚めたけど


娘が旅行へ行った。


楽しそうにファッションショーしてみせてきたけど、正直、気乗りしなかった。

ヤキモチ、かなあ。お母さんを置いて旅行に行くのね、って。


それとも、やっぱり疲れてたかな。仕事のことで。

仕事ねえ、誰も信じられなくなっちゃったし、やりがいもなくなったよね。

疲れ方が尋常じゃないのは確か。


もっと楽しそうに見てくれいいじゃん、って言ってたからな。

悪いことしちゃったし、もっと私自身も楽しめばよかったって後悔してる。


あ、旅行に行くのに、それとは別で毎日遊んでくるのがさみしかったり心配だったりしたのもあるな。ちょっとしたあきれ。

疲れて体調崩したらどうすんのよ、って。


いつもとは違う恰好、可愛い格好。

ドキドキわくわくしてたのを、もう少し楽しんで私も見てたら良かったかな、っていまは思う。


ねえ、みてみて? これ似合うでしょ? かわいいでしょ? 私ったら何着ても似合っちゃう。


確かにね、何着てもお似合いですよ。かわいいよ。

そうやって楽しんでいる姿もかわいい。


それも含めて、嫉妬だね。

人生を楽しめていることを、本当にうれしく思うけれど、そうでない自分と比べちゃうのよ。


なんだ、やっぱりさみしいのか、私。

娘にじゃないと、素の自分を出せないから。

私以外とも素直に楽しめることにヤキモチ。


別々に住むようになったらこんな時間を持つこともできないのにね。


それに気が付いて後悔する。

大体それの繰り返し。



いっぱい楽しんできて。

いっぱいみやげ話を聞かせてください。


やっぱりヤキモチ焼きながら聞くんだろうな。



眠り姫は、目が覚めても夢を見ている。

ちっちゃなお姫様が大きくなってもずっと自分のそばにいてくれることを。

でもその夢が叶ったらきっとほかの夢を見る。わかっているんだけどね。


年老いた眠り姫は、また眠りにつきましょう。



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