第7話〜第10話 幸せを、大切を分ける



ー第7話ー

「ナズナ先輩、出かけませんか」

マサノリはナズナの目を見て言った。


天界学校最終試験まであと数週間なのに、マサノリは

「出かけよう」と言った。

確かに珍しいが、この時期に誘うのは違う。


ナズナは戸惑いながら言う。

「え、いいけど…どこいくの?」


「色々な場所です。勉強とか疲れました。」


目を逸らしながら言うマサノリ。

少しだけ照れいるのだろう。


ナズナが一番に喜ぶのは、大切な人と笑い合うこと。

初々しい雰囲気に神代が教室に入り、朝会を始める。


「あら、どうしたのよ。二人とも顔が赤いわよ?」


「なんでもありません」


同時に言う二人。やっと、学生らしく態度を取りました。そして放課後、校舎を出るとただただ白い世界が広がっていた。


やはり天界だからか、白い雲がふわふわと浮かび、美しい太陽と月が互いに照らし合い、空を飛ぶ天使がピカピカと光る。


校門前には人だかりができている。

きっと、時期神の様子でも見にきたのだろう。


「今日もいっぱいだねー」

「そうっすね」


人集りを通り過ぎようとしたが、結局囲まれてしまった二人。


[時期神のお二人よ!]

[どちらが神になるのですか?!]

[きゃー!マサノリ様ー!]


「あっははー…じゃあねー」


苦笑いをしながら人集りを通り越し、結局二人で出かけずに各々の帰る家へと向かう二人なのであった。


ーーーー


「ナズナ先輩、勉強会をしましょう。」

「マサノリくん、私の成績が悪いとでも?」

「ナズナ先輩とデートがしたいだけですよ」

「はっ?!」


時期神最終試験数日前なのに、図書館での勉強中に、マサノリが急なことを言った。


何かが本当におかしい。


おかしいんだ。


マサノリがそんなのに誘うなんて。


「返事は?行ってくれるんですか?」

「はあもう行くよ!!」


後日、天界パークでナズナに振り回されるマサノリなのであった。



ー第8話ー

時期神最終試験、結果発表当日。


教室に二人は静かに座り、一言も喋らない。


チクタクと時計の針が鳴り、二人の制服についている学校のボタンが光る。


マサノリは世界の終わる瞬間の前に感じ、ナズナはパチパチと心の中で、花火が打ち上がる準備をしているかのように感じていた。


先生が教室に入り、先生でさえ険しい顔をしている。


「二人とも、すぐに校長室へ向かいますよ」


‘校長室’とは、この天界にある全てのテレビにつながっており、二人の合否発表は天界全体に晒されるのである。


テクテクと歩き、深呼吸と息苦しが混ざり合うかのように、緊張感が全身に走る。


校長室のドアを開けると、校長、始まりの神が待っていた。にこやかな顔で、落ち着いた表情をしており、その顔が余計に緊張感を呼ぶ。


《二人とも、いらっしゃい。早速だけど、合否発表をしていくよ。》


ごくりと息を呑む。


《まずはナズナ。君は世界を愛すあまり、時に周りを見なくなることがなくなった。》


ナズナの肩はすくんだ。


《マサノリは、あまりに世界に無関心だが、冷静さはとにかく保てる。》


マサノリは下を向いた。


今から合否結果、この結果により、どちらかが天界で普通に暮らし、かつてクラスメイトだったのが、上司と部下になる。


校長室に緊張感が走る。

天界全体からも緊張を感じるほどだった。

そして、校長が口を開いた。




ー第9話ー


《よって、二人ともが神になる。二人の相性は完璧だ。おめでとう、ナズナ、マサノリ。》


外には、金の紙吹雪が舞った。ヒラヒラと2人を歓迎する。歓声が聞こえ、天界初めての二人神が誕生し、天界は驚きに包まれた。


「おめでとう、おめでとう。やったあやったあ。万歳万歳!!」


そう聞こえてくる。とっても黄色い歓声だ。


「やったわね!二人とも!!!」

神代が二人に抱きつき、ナズナは戸惑いながらも笑顔を見せ、マサノリは涙を流した。



「ええ、神代先生のおかげです」


またもや二人揃って言う。またもや二人は見つめ合い、顔を逸らした。


校長室は暖かさで包まれ、ナズナはまた新しい幸せを見つけた。


それは、大切な人と幸せを喜び合うこと。

きっと、とても難しいことだ。


なのに、この時は幸せを喜び合うことだけに集中し、いつまでの時間かもわからない大切さを感じ、そっと目を瞑った。




今までのことが、これが私/僕のざっくりとした人生だ。大したことだろう?自分の幸せを見つけるのは。





ー第10話ー


ナズナ。


生物時代はなく、これが初めての世界。

苦しく、輝かしい、少し特殊な学校生活を終え、今は横で世界を作りまくっている旦那の横でこの文を書いている。

旦那?マサノリに決まっている。

どうやって付き合ったかはまた別の世界で話そうではないか。

では、もう一度聞いてみよう。


「神様、進歩いかがですか?」


答えは一つ、


「幸せを分けれるよう、頑張っているよ」




マサノリ。

生物時代は牛。戦争のない世界で暮らしていた。

甘酸っぱく、楽しい学校生活を終わらせて、今は横でにこやかにこの文を書いている妻の横で世界を作っている。

妻?そんなのナズナに決まっている。

馴れ初めなんて、この文に全てが書いてある。

では、もう一度聞いてみよう。


「神様、進歩いかがですか?」


きっとこれからも変わらない。


「大切を守っていこうと思うよ」


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神様、進歩いかがですか? 月乃 レイ @Tukino_rei415

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