第28話 異星の人達とわたし ⑧
ここは、居住区内にある会議用のお部屋。
わたしは今、緊張の面持ち。
勿論、隣にはドクター・ハーバードとナギサ先生がいてくれている。
エド先生は医務室でお留守番らしい。
ナギサ先生がガッカリしていたのは言うまでもないわね。
麗玲さんは、相変わらず来ない。
まぁ、彼女の事情を考えれば乗員を変に刺激しない様にするためにもこういった場には来ないという気持ちも良く分かる。
ヒメカはさすがにいない。
一般的な会議なのに何も話さないでずっと食べてる女の子がいたら雰囲気悪くなるだろうし、後は抑止になるか分からないけど『ピンキータイフーン』の相手をしてもらわないと…
今、会議室には、知らない人が何人かいる。
定期的に行うと決めた話し合いの場である。
そう、これから始まるのは俗に言う内政フェイズである。
目安箱の要望や窓口になっているドクター・ハーバードが連れてきてくれた方々と話し合いをするのだ。
「時間になったので始めましょうか。改めまして、艦長をやらせて頂いているエリィシア・ノイマンです。よろしくお願いします」
わたしはペコリと頭を下げる。
「よろしく。まずは事前に艦長から相談を受けていた件について適任者が見つかったので紹介したい」
ドクターが紹介してくれたのは30歳くらいの小柄な女性。とても、明るそうな方だわ。
「こちらは豊橋ネネさん。子連れの乗員の方々から要望があった託児所兼児童館の様な施設のスタッフをお願いすることになった。なお、託児所は豊橋さんと懇意の方数名で切り盛りするかたちとなっており、彼女には代表者を務めて貰うことになりました」
そう。
小さい子供や小学生くらいの子供がいるご家庭の親御さん達から
『四六時中子供と一緒だとさすがに疲れてしまう。大人どうしで息抜きにいったりする時に一時的に預かってもらったり、子供達だけで過ごさせる場が欲しい』
との要望がそこそこあったので事前にドクターに相談していたの。
そこで、ドクターは保育士である豊橋さんと、同じく保育士であるそのお友達の方や経験のある有志を募ってくれていたの。
大人には、通称『ドクターズバー』という大人の社交場が出来てるし…
ちなみに結構人気みたい。
ダンデイドクターとイケメンドクターがシェイカーを振るバーとか、憧れちゃう♡
ダーツやビリヤードもできるみたい。
「豊橋ネネだよ。エリィちゃん。先生達から話はきいてるよ?よろしくね」
気さくな方だと思いました。
こういう人、好き!
わたしは快く託児所をお願いしました。
ナギサ先生や同席されていた一般の方々にも意見を求めましたが賛同いただけたわ。
場所は既にアリスが提案済みで公園の中の施設に部屋を設けることにしました。
「さて、次は彼等だ」
次に紹介されたのは4人組の…
お、お巡りさん?
警察の制服着ているわ。
「君から見て左から、駿河巡査長、三春巡査、リェン巡査、ジャック巡査。みなさん、アーク・ジャパン警察の一員だ」
成る程。
コロニー研修の帰りに巻き込まれてしまったのね…
ううっ…違うと分かっていても申し訳なささが先立つわ…
駿河さんと三春さんは日本人みたい。リェンさんは、東南アジア系、ジャックさんは白人ね。
「はじめまして艦長。自分は駿河巡査長です。さて、我々の提案としては『犯罪の抑止力のための警察』…わかりやすく言えば『交番』の設置です」
まぁ、お巡りさんならそうなるよね。
前に、麗玲さんが言っていたのと同じことよね。
でも、こんな100人…+異星人の皆さんで犯罪何て起こるのかしら?起こらないわよね?きっと。
アリスも見守っていてくれているし。
犯罪なんて起こす意味、なくない?
でも、一応…
「成る程。具体的にはどんな事をするんですか?」
「はい。基本的には交代制で定期的に居住区内を警邏します。また、交番には常に誰かが常駐する様に致します」
「分かりました。ところで…4人で大丈夫ですか?」
ちょっと、人数的な心配が出てきちゃった。
「ハハハ。そこは心配無用でありますよ、艦長殿。我々4人で上手くやります。これは、事前に我々4人で相談の上決定しているので艦長の御心を煩わせることはありません」
そこは、しっかりしてるのね。
お巡りさん達を見るとみんなキリッと、真剣な眼差し。
わたし、こういう熱意に弱いのよね…
お巡りさん達の正義感や真摯な気持ちが伝わってくるわ。
ちゃっかり、アリスがわたしにだけ聞こえる様に、公園内の託児所のそばに利用できる施設がある事を告げてくれる。
「分かりました。乗員の方々にはお子様もいますし、託児所の近く、公園内に交番として使用できそうな施設がありますので、そこに交番を設置したいと思います。どうでしょうか?ドクター・ハーバード、汐見先生」
先生達も「素晴しい事。是非、お願いしたい」という旨を伝えてくれた。
お巡りさん達も快諾してくれたわ。
さて、お次は…
あっ!
黒人の人ね。珍しいわ。
「はじめまして艦長殿。私は木暮ジェイコブと申します。アーク・ジャパンにて夫婦で弁護士をしております。先ずは、感謝を申したい」
流暢な日本語で挨拶してくるジェイコブ弁護士。
「先の託児所の件。幸い、子供3人連れている身としては助かる次第であります。時折、夫婦で酒を嗜みに行きたくなる時もありますのでね」
あっ、成る程。早速子連れの家族さんに感謝されてしまったわ。良いことしたと思うわね。
「さて、私からの提案は先のお巡りさん達の先の話。仮に、犯罪が起こってしまった後の事を予め相談しておきたく思いました」
もうっ!
ジェイコブ弁護士も心配性だなぁ、犯罪なんて起きないから!
とは、言っても何かあったら、高校生のわたしじゃあ対処とか処罰とか難しいし…
「そうですね。いざという時が起こった時は是非お願いします。事務所などは必要ですか?」
「そうですね。事が起きた場合警察の方と連携を取るかと思いますので、交番の1室を間借りできれば十分です」
成る程ね、事が起きた場合に対処しやすく、か…
「ドクター・ハーバード。如何でしょうか?」
ちょっと判断出来ない…
大人の意見を聞こう。
「ふむ。ジェイコブ弁護士の意見で問題ないと思うが、警察の方々はどうだろうか?」
警察4人は「問題ありません」と即答。
ドクター、お巡りさん、弁護士先生の意見をまとめてっと…
「では、交番と弁護士事務所一緒の建物ということで、どうぞよろしくお願いします」
さて、とお次は…
わたしは、目線を二人組の男女に送る。
男の人と目が合う。
「おお!カリーナ!やっと俺達の番だね!待ちかねたよ」
お、おおう…
なに、このテンション…
今までのド真面目な雰囲気とは違いすぎる…
って。かりーなってなに?
アウチッ!
男の人が悲鳴を、あげたわ…
「ごめんなさいね。コイツはフィガロ。私のダンナ。それから、私はスザンナ。コイツは見境なく女の子に声かけるから気を付けてね。カリーナってのは『可愛い女の子』って意味よ。そちらの眼鏡の方も気を付けてね」
スザンナ、さんがフィガロさんのお尻を思いっきり抓ってるわ。
大丈夫。そっちのナギサちゃんはエド先生一筋だから。
「Oh!Mia blla!焼き餅かい?かわいいじゃあないか?…NO!!!」
今度は、ヒールで思いっきり踏みつけたわ。
わたしは、何を見せられているの?
みんな…呆れてる…
「このPazzo(アホ)は置いといて、私達は床屋兼ネイルサロンをやりたいの。イタリアでもやっていたのよ?ほら、こういう明日をも知れない逃避行。髪形やネイルを変えて気分転換したり、身嗜みを整えたりするのは重要でしょ?」
嗚呼、そう言えば。自分や子供たちの髪を切ったり、ネイルしたり、そういった気分転換出来るところが欲しいって目安箱にあったな…
「艦長。補足すると、彼らは共に専門分野ではワールドコンクールで常に上位に入る腕前だ。その…ご主人の癖は兎も角として、乗員達の気分転換には良いかと思うのだが?」
一理ある…
わたしは地球に帰る前にバッチリ整えてきたから良いけど、そうでない人もいるもんね。
「あ、それからコイツは、器用に何でも出来るから、生活区での雑用は何でもやらせていいよ。馬車馬の如く使ってもらって構わないから」
なんだろー
かかあ天下って奴?
「とりあえず、社交場の1つとしてはありだと思いますよ〜。先生もそろそろ髪の毛を整えたいと思っていたので〜」
ナギサ先生が発言。
「Oh!分かっているね!どうだい?スザンナ何か放っておいて、これから俺と親睦を深めるために…」
あっ!
フィガロさんの手がナギサちゃんのお尻に!
セクハラだわっ!
「結構ですよ〜。フィガロさんには素敵な奥様がいらっしゃるじゃありませんかぁ〜」
そんな手が触れる直前でガッチリ捕獲して、フィガロさんの手首をギリギリと締め付けるナギサ先生。
あら?
手首から先が紫色になってきたわ…
どんな力で握ってるの?
ナギサ先生はニコニコしてるわね。
さすが
「と、とりあえず!いいことだと思います!ご主人は少し、というかかなり!女性へのアプローチを考えてください!さもないと…奥様を超える恐い
この艦の女性は凄まじく強いというアピールをするわたし。
特に!そこでニコニコしているナギサ先生とか!
麗玲さんも、何だかんだでこういうの嫌いそうだし…
恐い所は恐いから…
提案自体は素晴しい事なので、後で場所はアリスと相談ね。
「さて、今回はこれま…」
その時、勢いよくブリーフィングルームのドアが開いた。
「おお?ここは何処じゃ?エリィではないか!?して、其方らは何奴じゃ?答えるのじゃ!」
ヒメカは、白くなって、ソレに引きずられているわ。
き、
来ちゃった…
ピンキータイフーン
ナナナ・レギウス・ノーヌム・ミュリッタ
どどど、どう説明したら良いのぉぉぉぉぉっ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます