二章08話 滅びゆく|朽棺の竜王《キュアイーリム》

二章08話 滅びゆく朽棺の竜王キュアイーリム


[newpage]#01 参戦せしモノ達

 始原の魔法Wild Magic・・・ワールドアイテム相当と推定される魔法は、普通には防げない。サトル=モモンガとクミコ=ぶくぶく茶釜が、二人で、ケイテニアス山へ向かったのは、他の者達では、始原の魔法Wild Magic対策ができなかったからだ。

「私が、始原の魔法Wild Magicを使える」

 キーノの顔に、驚愕が広がっていた。

「えぇ、母である私のサポートでね、貴女のタレントは、魔法の複製。ひとつだけ、自分に使われた魔法を、複製することができるという、魔法なの・・・」

「それって・・・」

「母である私のタレントは、相手の魔法を一つ、発動させるモノよ」

 母のタレントが、相手の魔法を起動すること・・・どのような魔法だろうと、相手の魔法を自分の魔法として使うことができる。

「つまり、始原の魔法Wild Magicを発動させたのは、私なのよ・・・この国を滅ぼした・・・それは、私なの、キーノ」

始原の魔法Wild Magicを複製したキーノ、それを発動させた、アンネ・ファスリス・インベルンによって、インベリア王国は、アンデッドが徘徊する都市に変わってしまった。


 始原の魔法Wild Magicは、始原の魔法Wild Magicを使えるモノには効かない・・・それが判らなかった、アンネは、キーノに無理やり始原の魔法Wild Magicを使わせた。

 結果として、インベリア王国は滅び、自分自身の意思と記憶が消滅したが、起動させた結果として、アンネ自身もキーノと一緒に、真祖True Vampierになってしまった。


 キーノは、気付いたように、

「じゃぁ、サトルの所に行けるんだ」

そう言って、笑顔になった。

「でも、来るなって、サトル様は、言ったわよ」

母様かあさまも、行きたいんでしょ」

「えぇ・・・婿殿のため、ですからね」

 そこへ、もう一人、声がかかる。

「そういうことなら、俺も、付き合わせてくれ」

 紅眼公だ。かつて侯爵として戦場で戦い、大剣を背負い、強靭な体格は、真祖True Vampierとなっても変わらなかった。自身のタレント“反射リフレクト”で、始原の魔法Wild Magicを返したが、自分自身が起動したことになってしまった。


[newpage]#02 滅びゆく竜王・・・

 最前衛には、大剣を構えた紅眼公が立って、中衛にサトル=モモンガと肩の紅玉から伸びるピンクの触手が、蒼とピンクの盾伏羲と女媧の盾を構えていた。

 後衛が、女王アンネと王女キーノ・・・即席のパーティを編成する。

「莫迦な、莫迦な、莫迦な、愚物どもがぁッ」

 朽棺の竜王キュアイーリム・ロスマルヴァは、滅魂の吐息Wild Magicを放ち、始原の魔法Wild Magicを打ち込んで、効かないことに荒れ狂っていた。

『クミコさん。奴の始原の魔法Wild Magicは、MPを消費してません、HPが減ってます』

『命を削って、使えるわけね、了解・・・』

 HPを削っての攻撃だけど、攻撃の性質は魔法・・・ピンクの盾女媧の盾を正確に合わせて用いなければ、始原の魔法Wild Magicを防ぐことはできない。


 SoAOGから、<朱の新星ヴァーミリオンノヴァ>が放たれ、朽棺の竜王キュアイーリムを焼いて、HPを減らしていく。紅眼公の大剣が、朽棺の竜王キュアイーリムの身体を切り裂いていく・・・

 死にかけの朽棺の竜王キュアイーリムは、

魔法三重最強化トリプレイドマキシマイズマジック><不死の炎アンデッドフレイム

を放って、前衛に立った紅眼公に叩きつける。吹き飛ばされるように、紅眼公の巨体が後ろに跳んで。

「邪魔・・・」

 ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeの声が、可愛く響いて、蒼の盾伏羲の盾が、紅眼公をさらに後方へと弾き飛ばして、アンデッド用回復薬をネガティブエネルギーと一緒に、紅眼公に流し込む。


 ゆっくりと、白麗の骨格Over Lordが、前に出る。

「俺の継母アンネキーノの人生を、狂わせたお前に、かける慈悲は無い」

<モモンガお兄ぃちゃん、時間だよ>

 腕時計から、ぶくぶく茶釜の声で、時間が告げられる。

天空の失墜フォールんダウンそして、超位魔法の魔法陣が空間に広がっていってから、時間短縮の課金アイテムを砕く。


 天空から振り下ろされる、光の束が、朽棺の竜王キュアイーリムを滅ぼしていった。


『かっこ良かったよ、サトル』

『え、てへ』

 そんな言葉が、戦闘の終焉を、示していた。


[newpage]#03 戦いの終焉・・・

 朽棺の竜王キュアイーリムは、完全に滅び去ってしまっていた。アンデッドから人間に戻す方法を、朽棺の竜王キュアイーリムから聞き出すことはできなかった。

「すまない、キーノ、聞き出せなかった」

「良いんだ、サトル」

 飛びつくように、キーノが、白麗の骨格Over Lordの身体に、微乳ちっぱいを押し付けるように抱きしめる。サトル=モモンガにとって、行為そのものが可愛くて、優しきキーノを抱き寄せていた。


 朽棺の竜王キュアイーリムが、自分自身の魔法を消す方法を、知っているとは限らなかったし、アンデッドの性質から、人間に戻れる可能性は極めて低かった。クミコ=ぶくぶく茶釜の受精卵に、遺伝子と身体情報を実装して、赤子として産みなおす方法は、反則技みたいなモノで、本人の記憶が失われていることもあって、どこまでが前世のままかは不明なままだ。


 記憶を残している、グラズン・六花ロッカも、人間体六花ロッカとなった時、自分自身が全く違うモノになったと言っていた。

「お疲れ様ね、婿殿」

 そう言って、背を伸ばすようにして、“白麗の骨格Over Lord”の頭を撫でる。

「はい。継母かあさん

 頭を下げると、アンネ・ファスリス・インベルンが、胸乳おっぱいに包むように、抱き寄せていく。

「え、えぇぇっ」

 離れようとする、白麗の骨格Over Lordを逃がさないように、追いかけていく。キーノも首に回した腕に力を入れて、離されないように抱き着いていく。

『ちょ、ちょっと、くみこさん、助けてください・・・』

『あらあら、大変ねぇ、サトル君』

 アンネと一緒に、ピンクな触手が、白麗の骨格Over Lordの頭を撫でていた。


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