二章07話 ケイテニアス山のアンデッドな竜王
二章07話 ケイテニアス山のアンデッド
[newpage]#01 生命の滅びた山
ケイテニアス山への道は、命の気配が無い、滅びた山道となっていた。
『サトル君、可愛かったわね、キーノ』
『え、えぇ・・・』
ついて来るといったキーノを置いてきて、母親アンネ・ファスリス・インベルン(CV:クミコ=ぶくぶく茶釜)に預けたのは、サトル=モモンガだった。
「サトル。私と居て、楽しかった?」
「あぁ、俺は、キーノとの、約束を果たす』
キーノとの約束、滅び去った家族を取り戻して、元凶を叩き潰す。
「サトル・・・」
「キーノ。サトル様は出発するのよ・・・」
ゆっくりと、キーノを抱き上げるように、
「サトル様、御武運をお祈りします」
「は、はい。必ず、戻ります」
サトル=モモンガにとって、母というのは、絶対の存在であった。キーノの母親は、記憶は無く徘徊しているけれど、
「
『キーノ。良いの、私が母で・・・』
念話で確認すると、
「
『ありがと』
「さ、こっちも大変よ」
赤子達が増えた、インベリア王国の王城は、
「はい。
グラズン・
赤子達は、アンネ・ファスリス・インベルンの養子となって、新たな
[newpage]#02 生命無き、死の山ケイテニアス
突如として、生者が
相手はおそらく、プレイヤと思われる、八欲王と戦った竜王と同等の存在、そしてアンデッドのドラゴン・・・
『ドラゴンねぇ・・・』
『“YGGDRASIL”のドラゴンも、特別でしたね』
『えぇ・・・』
“YGGDRASIL”の中でも、ドラゴンは、特別な存在であり、圧倒的な存在として設定されていた。
首から“深淵の躯”の証となる、首飾りをかけて、いつもの神級アイテムである、漆黒のローブを纏って、肩に蒼とピンクの
大量のアンデッドが、密集していることは、
『ほんと、凄まじい数だ・・・』
都市というより、複数の国を滅ぼして、大量のアンデッドを生成して、一部を自分自身に取り込むように、一点に密集させている。アンデッドの反応は、無数の蠢きとなっているが、ほぼ一点に集中していた。
<
<
<
いくつもの支援魔法を、重ね掛けをしていった。
山の中腹に、大きな洞穴が開いていて、中からは大量のアンデッドが気配に満ちていた。
[newpage]#03 アンデッドの塊は喋った
踏み込んだ先は、驚くほどに大きな3キロくらいはある、広間になっていて、天井は開けて太陽の光が注いでいた。しかしながら、広間の中央には黒い巨大な塊が、溢れるように転がっているだけだった。
「ほぉ、巨大な存在があるかと思ったが、知性の無いアンデッドの塊があるだけか・・・」
言葉に反応するように、黒い巨大な塊が、姿を変えるように、巨大な首や頭、羽や尻尾の形状へと、変化していった。
「ドラゴンか・・・」
「あまりの愚かさに、無視してやろうと思ったが、止めたよナイトリッチよ」
開いた口の奥底から、流れるような声、
『本体は、死体の向こうね・・・』
開いた口には、動物の姿も多く、周辺の生き物すべてを取り込んだような、禍々しい姿になっていた。
『はい。
『そうみたいね』
「愚かな我を知らぬのか」
低く響くように、声が黒い塊の奥から流れる。
「ふぅーん、アンデッドの群体が、ドラゴンの形をとっただけのくせに・・・名乗りもしない愚物のくせに」
「ふん。我は●●●竜王、キュアイーリム・・・朽棺の
『やはり、竜王ね、サトル、本名は、聞き取れなかったけど』
『はい。クミコさん』
<
黒い塊に、火球を放つと、一部がボロボロと崩れ、無傷のゾンビが内側から溢れて、埋めていった。
「な、なんだ、ゾンビの下もゾンビなのか・・・」
驚いたふりをして、
「
「ほぉ、都市の人間をアンデッドに換えて、鎧のように纏っているだけか」
「ははは、愚かな愚物、それだけと思うな」
一瞬で間合いを詰めるように、黒い塊が突進して、
<
ドラゴンの巨木のような腕を、雷撃が貫いて、数体のゾンビが崩れ落ちていって、またゾンビで内側から溢れるように、身体を再構築していった。
「そんな攻撃では、何万発も打たねば、役に立たぬ、愚かな攻撃だ」
巨大なドラゴンの左腕から、小さなゾンビ竜が現れて、飛び出るように、
「同族をッ」
サトルが、哀れに思って、叫ぶ・・・
「ははははは。こんな、劣等種が、同族、道化だな」
ドラゴンには、寿命が無くHPとMPは年齢で上昇を続ける、かつての竜王は
「八欲王か・・・」
「あぁ、あの穢れたゴミが、世界を歪めた・・・」
やはり、八欲王が、ワールドアイテムで、この世界の魔法システムそのものを、書き換えてしまったようだ。
黒く醜いキュアイーリムの腕から、巨大な手が顕れて、棍棒を振るってくる。
「巨人?」
巨人のゾンビが、上半身を顕す。
<
「愚かな、第三位階が、限界か・・・つまらん」
『誤解できたかな、あれ、本体だよね』
『はい、クミコさん・・・こいつは、滅ぼします』
サトル=モモンガにとって、インベリア王国を滅ぼし、キーノを悲しませた・・・それだけで、AOGの敵であり、滅ぼすべき相手となる。
『了解・・・』
アイテムボックスから、SoAOG、ギルドの象徴を取り出す。
「いくぞ、ギルドの証」
「おぉ、その杖は、見事だな、寄越せぇ」
腕から顕れる巨人の姿が、上半身だけでなく、下半身も露わになって迫ってくる。 さらに、後方に跳ぼうとすると、
「逃がさんッ。世界断絶障壁」
後方に伸ばした、ピンク粘体でできた膜が、壁で止まる。
『
『確認した、やはり、ワールドアイテム相当だ』
サトル=モモンガは、ワールドアイテムの通称“モモンガ玉”を装備しているが、
巨人の棍棒が、殴りかかってくるのを、
『私は、大丈夫だよ、サトル』
『だめですよ、クミコさん、こいつは、ここで、斃します』
SoAOGの自動迎撃で、
「ほぉ・・・杖による攻撃か・・・」
<
アンデッドの竜体の頭を吹き飛ばすと、黒いアンデッドの竜体の動きが鈍る。
<
<
視界を奪って、超位魔法を仕掛け、課金アイテムで時間を合わせて起動させる。
周囲は死せる空間、死せる大地、消滅せしモノとなる。
蠢く身体は、先ほどまでと異なり、小さくなっていた。
「小さくなったな、ゾンビの竜王」
まぁ、小さいと言っても、サトル=モモンガの数倍の身体で、アンデッドの本体が、顕れたに過ぎなかった。
「おのれぇ・・・竜帝の汚物がぁッ」
突進するように、殴りかかってくるが、
貢ぎ物によって、贈られる醜い“黒い仔山羊”が、どこからともなく顕れる。
<メェェェェェェ、メェェェェェェ、メェェェェェェ、メェェェェェェ、メェェェェェェ>
五体の“黒い仔山羊”が、朽棺の
「くそがぁ」
『こいつ、同レベルと、戦ってないよ、サトル』
攻撃は、単調というより、上位者が下位者へ攻撃してくるような、上から目線の攻撃だけだ。“黒い仔山羊”レベル90を超えて、HPは凄まじく大きいが、それほど強いモンスターではない。
<
竜の咆哮から放たれる、白き光の束が薙ぎ払うように、“黒い仔山羊”達を叩き潰していく。
『はんッ』
ピンクな触手が動かす
攻撃を受けた相手を、完全消滅させる、ワールドアイテム“
「汚物がぁッ」
「俺の名は、鈴木悟。妻の名は、す、鈴木久美子だ。間違えるな」
『え、ちょっと』
慌ててしまう。
「そして、お前がアンデッドに変えた者達の一人、アンネ・ファスリス・インベルンは、俺の
<
放たれた斬撃が、
「うガぁッ」
痛みは大きく無いが、切り裂かれた衝撃が、
[newpage]#03 還らぬ者達
すでに強弱は逆転し、
「竜王
「取引・・・だと・・・」
「俺の目的は、お前を滅ぼすことじゃない、キーノ・ファスリス・インベルンの国をアンデッドから、人間の国に戻す方法を知ることだ。莫大な報奨金が提示されている」
「金・・・不浄な下郎・・・やはり汚物よな」
後ろから、
「サトルっ」
「キーノ・・・なんで」
驚愕の目を向ける・・・
『まったく、待ってろって、言ったのにねぇ・・・』
「ごめんなさい、サトル様クミコ様」
<
白い閃光が、束になって襲い掛かる、一部が弾き飛ばされて、空中へ消えていく。大剣を構えた騎士、肩に乗った少女、冠が輝く女王、誰も消えていなかった。
「な、なんだとぉ・・・」
後方へ突進しようとすると、ピンク色の触手が、
「ちょっと、
「あら、婿殿ほどではないわ」
いなすように、女王の姿で返してくる。うん、これは、
近づいた結果、アンネ・ファスリス・インベルンの記憶が、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます