第10話 桜 vs 葵 - 燃え上がる女の意地 愛人さん鉢合わせキャットファイト

桜 vs 葵 - 燃え上がる女の意地


「あら? あなたが……あの噂の?」

マンションの廊下で視線が交差した瞬間から火花が散った。

桜(35歳)は華やかな夜の世界で生きてきたキャバクラ嬢。洗練されたドレスから零れ落ちそうな胸元と、計算されつくしたメイクが自慢だ。一方の葵(28歳)は純粋な学生気分が抜けない看護師。清潔感のある白シャツにミニスカートという無防備な姿勢が逆に挑発的だった。


「まさか……先輩たちの話の通りとはね」

葵の指が桜の腕時計に触れる。「これ、彼のプレゼントよね?私には安物しか買ってくれなかったのに」


次の瞬間、桜の長い爪が葵の頬を引っ掻いた。「あんたみたいな田舎臭い娘に嫉妬されるなんて屈辱よ!」


取っ組み合いが始まった。廊下に響く布擦れの音、激しい息遣い。

桜は葵のブラウスを力任せに引き裂く。ボタンが飛び散り白い肌が露わになる。「この程度で恥ずかしがっちゃって、お子ちゃまね」

対抗して葵は桜のハイヒールを脱がし放り投げる。「足元がお留守なんてプロ失格じゃない?」

互いの髪を掴み合い顔を近づけ罵倒の応酬。

「どうせお金目当てなんでしょう?」「そっちこそ若さだけじゃ飽きられるわよ!」

スカートが捲れ上がり太腿が露わになっても気にしない。むしろ相手を煽る材料にした。

蹴りが飛び肘打ちが炸裂。服が乱れても止まらない。

ついに桜は葵を壁に押し付け唇を奪った。「本当はこういうのが好きなんでしょ?彼もそう言ってたわよ」

葵の体が一瞬硬直する。しかし次の瞬間猛烈な頭突きを見舞う。「嘘つき!彼は私のこと『本気』だって言ったんだから!」

再び地面に転がり取っ組み合い。口紅とファンデーションが混ざり合った跡が床に残る。

誰も助けに来ない。管理人も住民も全員が耳を塞いで部屋に籠もっていた。まるで獣同士の戦いだ。

「もう終わり?」「あんたこそ息上がってんじゃない?」

互いに唾を吐き合う。それでも立ち上がって向かい合う二人。どちらも引かない。絶対に負けられない女のプライドがかかっているからだ。血は出ていないものの爪痕や引っ掻き傷だらけの身体で睨み合う様子は壮絶の一言に尽きた。そしてその戦いはまだ終わりそうになかった。


二人の闘争は玄関前の狭いスペースへと移行していた。桜の赤いマニキュアが剥げかけた爪が葵の肩に食い込み、葵の素手が桜の顎を捉える。

「おばさんったら必死ねぇ」と嘲笑う葵の声に、桜の額に青筋が立つ。

「ガキのくせに生意気言わないで!」怒声と共に膝蹴りが葵のみぞおちに命中。うめき声を上げた葵だがすぐに反撃に転じ、桜の髪を掴んで引き倒す。床に倒れた桜の上に馬乗りになり平手打ちを浴びせる。

「彼のこと何も知らないくせに!」涙混じりの叫びが空気を震わせた。

「知ってるわよ。あいつがどんな女にも同じセリフ吐いてるってこともね!」

今度は桜が葵の脇腹を蹴飛ばし形勢逆転。破れたブラウスから覗く葵の乳房を隠そうともせず睨み返すその表情は鬼気迫るものがあった。

「嘘よ!彼は私のためなら何でもしてくれるって言ったもの!」

「それがあなたの勘違いなのよ!」桜の拳が葵の鼻先を掠める。思わず後退った葵だがすぐさま飛びかかり桜の首に両手をかける。「苦しい……離しなさい!」桜も負けじと葵の腕に噛みついた。歯型が赤く浮かび上がるほど強く。

周囲の人々は遠巻きに見守るばかり。管理人は通報すべきか迷いながらも事態の収束を待っているようだった。誰もこの泥沼のような喧嘩を止めに入ろうとはしない。

「あんたなんかに彼の何がわかるっていうの!?」葵の絶叫がマンション中に響き渡る。

「わかんなくても関係ないわ。今の彼は私のものなんだから!」桜も負けずに吠える。

互いに最後の力を振り絞り組み合ったまま倒れ込んだ。床に落ちていた化粧品が二人の体の下で砕け散る。その中で桜はふと我に返るような目つきで葵を見据えた。

「あなた……本当に好きなのね」その言葉に葵の瞳がかすかに潤む。「だったら余計許せない!私たちの邪魔をするなんて!」再び取っ組み合いが始まろうとした瞬間――不意に二人は同時に脱力し床に座り込んだ。呼吸も荒く汗だくで互いの姿を見る。乱れた髪と破れた衣服。どちらも限界を迎えていたのだ。

「次は……絶対負けないから」葵が低い声で呟く。

「望むところよ」桜は不敵な笑みを浮かべて答える。

こうして二人の闘争は一旦幕を閉じた。しかし心の中では新たな対決への火種が燻り続けていた。いずれまたぶつかり合う日が来るだろう。だが今は疲労困憊の中、ただ静かに互いの存在を認識しあうのみだった。

疲労困憊の中、二人は互いを牽制するように睨み合った。だが数分後、先に動いたのは桜だった。

「何よその格好。まるで娼婦みたい」

乱れた髪をかき上げながら皮肉を言う桜に対し、葵は冷たく微笑む。「あら、そういうあなたこそ胸元が丸見えよ?そんな大胆な服選んでくるなんてやっぱり自信がない証拠じゃない」

その言葉を聞いた瞬間、桜の目が鋭く光った。葵の腕を掴むと強引に壁に押し付ける。

「いい加減にして!」

爪を立てて葵の頬をひっかく。ピッと細い線が走り薄く血が滲んだ。

「痛っ……!」

呻く葵だったがすぐに反撃に出る。桜の腰に手を回し引き寄せると背骨に沿って指を這わせた。

「この変態女……!」

桜が怒りに任せて葵の髪を鷲掴みにする。ブチブチっと数本の髪が抜ける音が聞こえた。

「離しなさいよ!この色狂い!」

葵も負けずに桜の肩を噛んだ。皮膚が軽く凹み歯型が残る。

痛みに耐えながらも桜は葵の襟元を締め上げる。息苦しさに顔を歪めた葵だったがすぐに唇を奪い返す勢いで顔を寄せる。互いの口紅が混ざり合い汚れていく。それさえも気にせず二人は絡み合いながら床へ崩れ落ちた。

「彼のこと何も知らないくせに!」

葵が叫ぶ。

「あなたの方こそ!金目当てでしょ!」

桜も負けずに罵声を浴びせた。

取っ組み合いの中で服はどんどん乱れていく。葵のスカートは裾が裂け、ショーツが見え隠れしている。桜のワンピースは肩紐が外れ半裸状態だ。

それでも二人は止めようとしない。むしろ相手の肌に触れることで優位に立とうとする。

「ほらこんなことまで許すってことは本当は嬉しいんでしょ?」

桜の手が葵の胸元に伸びる。布越しとはいえ敏感な部分に触れられ葵は身を捩る。

「やめてっ……!」

抵抗しようとするも体重をかけて押さえつけられた。一方で桜のブラジャーは完全に外れ胸が露出している状態だ。それを見て葵は不敵に笑う。

「随分立派なものをお持ちですこと」

指先で乳首を抓まれ桜は思わず声を上げた。羞恥心よりも怒りが勝り即座に葵の髪を引っ張る。

「よく言うわね!アンタの貧相な体見たら誰も欲情しないわよ!」

罵詈雑言が飛び交う中二人は更なる攻防を繰り広げる。互いの太腿が絡み合い脚技の応酬となる。ハイヒールを履いたままの桜が爪先で葵の股間を蹴り上げる。苦悶の表情を浮かべながらも葵は負けじと桜の脛を蹴った。

「こんなの……負けないんだから!」

葵が桜の首筋に噛み付く。今度は浅い傷ではなくしっかりと歯形が刻まれるほどだ。

「やってくれたわね!覚悟しなさい!」

桜も同じように葵の二の腕に嚙みついた。互いの肉体に刻まれた痕跡が増えていく。

周囲の住人が何事かと窓を開けて覗いているのが見えるが二人にとっては些細な問題だ。

「いい加減諦めたらどう?あなたなんか眼中にないんだから」

桜の言葉に葵が顔を真っ赤にして言い返す。「それはこっちの台詞!あなたみたいな年増には負けない!」

「なんですってぇ!?」

最後の力を振り絞るように二人は同時に体当たりする。体勢を崩したもののすぐさま起き上がりまた取っ組み合う。

どれだけ時間が経っただろうか。数分かもしれないし数十分かもしれない。それでも二人は諦めず何度も立ち上がってはぶつかっていく。既に服は原型を留めておらず露出度が高い状態で肌をさらけ出して格闘を続けているのだ。

「彼は私を選ぶに決まってる!」

「違う!私が一番なの!」

怒鳴り合いながら掴みかかる。もはや理性など存在しない本能的な闘争であった。

結末が訪れるまでこの戦いは終わらないだろう。どちらかが完全に屈服するまで――。


前回の激闘から一週間後――。


「まさか……ここで会うなんて」


カフェテリアの入り口で視線が交錯した瞬間、二人の体から緊張が迸った。桜は新しいブランドバッグを肩に掛け、葵はナースシューズのままだった。


「あれから元気にしてた?」

葵の声には明らかな皮肉が含まれている。

「おかげさまでね。あなたのことが頭から離れなくて」

桜の赤いネイルがテーブルの上で小刻みに揺れた。


周りの客が何事かと注目する中、二人はお互いの席へと歩み寄る。


「こんなところで再会なんて運命感じるわね」

葵が椅子を引きながら言う。

「ええ、まるで私たちのために仕組まれたみたいに」

桜はゆっくりとコートを脱ぎ始める。前回の戦いで引き裂かれたドレスを思い出させるようなデザインだった。


ウェイターがオーダーを取りに来たが、二人の間に流れる殺気立った空気に気づき慌てて立ち去った。


「この前の続きをしたい?でもここではダメよ」

葵が挑戦的に笑う。

「そうね。だけど次はもっと広くて邪魔の入らない場所がいいわ」

桜も同様に冷たい微笑を返す。


店を出た二人は無言で街を歩き始めた。目的地は明らかだった――


廃墟となった旧体育館。かつて地域の子供たちが汗を流した場所は、いまや二人の戦場と化していた。


「ここなら存分に戦えるわね」

葵が埃っぽい床を見渡しながら言った。


「そう思うわ。誰にも邪魔されない」

桜が荷物を放り捨て服を着替え始める。今回用意してきたのは動きやすいタンクトップと短パンだ。前回の反省を活かして実戦向きの服装を選んだのだろう。


葵も同様に制服を脱ぎ捨てスポーティーな上下に着替えた。


「準備万端ね」

「ええ、いつでも始められるわ」

二人は距離を取り構えを取る。前回とは違い今回は格闘技術を駆使した戦いとなるようだ。


合図もなく戦闘が始まった。


最初に動いたのは葵。鋭いジャブを連打する。しかし桜は冷静に身を翻しながら回避。一瞬の隙を突いて葵の懐に飛び込むと強烈な膝蹴りを見舞った。


「ぐぅっ……」

衝撃で後退るもすぐさま体勢を立て直した葵は、今度はローキックを繰り出す。桜の右足に直撃したが全く動じる様子はない。

「それくらいじゃ効かないわよ!」

桜のカウンターが葵の顎を捉える。

顎を狙った桜のパンチを寸前で避けた葵が叫ぶ。

「この程度で私に勝てると思ってるの?」

互いの呼吸が荒くなる中で二人は徐々に接近していく。

「勝てるかどうかじゃなくて勝つしかないのよ!」

桜の蹴りが葵の脇腹を直撃。苦痛の声を漏らす葵だがすぐに反撃に転じる。

「あんたこそ……これが精一杯なの?」

互いの腕を取り合い力比べとなる。筋肉が盛り上がる様子が見て取れた。

「まだまだよ!」

桜が体勢を変え背後から組み付く。葵の首を締め上げる。

「離しなさいっ……!」

息が詰まる中で葵も応戦。後ろ蹴りを放つと偶然にも桜の腹部に命中した。バランスを崩した桜を押し倒し葵が馬乗りになる。

「今度こそ降参しなさい!」

額に汗を浮かべる葵。桜は苦しそうな表情ながらも不敵に笑う。

「冗談……でしょ」

渾身の力で葵の腕を払い除け逆襲。今度は桜が葵を押さえつける番だ。

「さぁどうする?降参するなら今のうちよ」

「誰が降参なんてするものですか!」

もつれ合う二人。次第に服が乱れ始める。

「いい格好ね」


桜が葵の半脱げになったトップスを引っ張るとそのまま剥ぎ取ってしまった。露わになった白い肌に桜の爪痕が残る。

「よくもやったわね!」

怒りに燃える葵が桜のタンクトップを引き裂く。破片が宙を舞いブラジャーが丸見えに。

「ほらほらどうしたの?」

余裕を見せつける桜に葵は猛然と襲いかかる。今度は互いの髪を掴み合った。

「髪は女の命だって教わらなかったの!?」

桜が悲鳴を上げるが葵は容赦しない。ブチブチっと数本の髪が千切れる音が響く。

「あんただって同じことをしてるじゃない!」

負けじと桜も葵の髪を鷲掴み。激しく引っ張り合う中で二人の顔が至近距離まで接近する。

「近いわよ!離れなさい!」

葵が嫌悪感を示すも桜は鼻先が触れ合う程の距離まで近づく。


床の上で取っ組み合いになった二人。互いの髪を両手でしっかり握りしめている。葵の黒髪が桜の指に絡まり、桜の茶髪が葵の掌に巻きついている。


「離しなさいよ!」

桜が力を込めて葵の髪を引き寄せる。


「そっちが離せばいいじゃない!」

葵も負けじと応戦。二人の顔が鼻先が触れ合うほどの距離まで近づく。


次の瞬間――


「ぐっ!」


桜の右頬に激痛が走る。葵が容赦なく桜の顎の下から上に向かって噛みついたのだ。


「よくも!」

桜も葵の左肩に歯を立てた。皮膚が軽く裂け薄く血が滲む。


二人はそのまま押し合いながら床を転がっていく。桜が上になり葵が下になったかと思うとすぐに体勢が入れ替わる。互いの口の中に鉄の味が広がる。


「汚い女ね!私の肌に跡をつけるなんて!」


葵の右手が桜の背中に回り爪を立てる。鋭い痛みに桜の表情が歪む。


「あなただって同じことしてるじゃない!」


桜の左手が葵の尻に伸びパンティを無理やり引き下げた。白い肌が露出するが二人とも気にする様子はない。


「こんな格好……最低!」

葵が桜の髪を再び強く引っ張ると顔面に向かって頭突きを放つ。ゴツン!鈍い音と共に二人の額がぶつかりあった。


「痛っ……!」


額が赤くなりながらも二人は止まらない。葵の両足が桜の胴体に絡みつき締め上げていく。


「苦しい……離しなさい!」

桜が反撃しようとすると葵は更に力強く抱きついた。


「絶対離さない!」


体と体が密着しお互いの体温を感じる。その状態で二人は再び唇を重ね合う――いや噛みつき合った。グジュッという音と共に相手の舌を吸い込み唇に歯を立てる。


「んんっ……」


「むぐぅ……」


唾液と血が混ざり合い顎を伝って流れ落ちる。それでも二人は離れようとしない。互いを飲み込もうとしているかのように執拗に喰らい続ける。


「ぐ……この……売女……」

「ん……黙りな……さい……」

声にならない罵声を浴びせながら二人は最後の一滴まで搾り取ろうとしているようだ。


――10分以上続いただろうか。

ようやく二人が離れた時には息絶え絶えになっていた。それでも睨み合いを止めない。


「まだ……終わってないわよ」

「当たり前じゃない……」

そして再び襲いかかり合う二人。果てしない闘争は続くばかりだった。互いに疲れ果てながらも執念だけで戦い続ける姿は異様でありながらどこか美しさも感じさせた――


動画はこちらhttps://x.com/nabuhero


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