第8話 愛花vs梨紗 スタジオ撮影からヘアプルキャットファイト

# 血塗られた鏡


スタジオの白い照明が容赦なく二人の顔を照らし出す。最初は笑顔でカメラに向かってポーズを取っていたはずの愛花(アイカ)と梨紗(リサ)。しかし今、彼女たちの表情からは一切の余裕が消え失せていた。


「ちょっと! それは私の衣装でしょう!」

梨紗の声が震える。撮影で使われる予定だった白いロングドレスが無惨にも引き裂かれ、床に散乱していた。


「何言ってんの? あんたこそ私のメイク道具壊したじゃない!」

愛花が叫び返す。その瞳には涙ではなく、怒りの炎だけが宿っている。


事の発端はほんの些細なことだった。互いの演技に対する不満が募り、それが徐々に個人攻撃へと変わっていったのだ。今や二人の間には言葉の通じない深い溝ができている。


「このブス!」


梨紗の手が愛花の長く美しい黒髪を掴む。

「痛いっ! 離しなさいよ!!」


愛花も負けじと梨紗の腕を掴み返す。爪が皮膚に食い込み、赤い線が浮かび上がる。


周囲のスタッフたちは困惑した様子で遠巻きに見守ることしかできない。監督ですらどう対処すれば良いのか分からず、ただ立ち尽くしている。


「二人とも落ち着け!」

ようやく監督が声を上げたが、それは火に油を注ぐようなものだった。


「これが落ち着いていられるわけないでしょう!?」

愛花が叫ぶ。


次の瞬間、二人の拳が同時に相手の顔に命中する。衝撃で体勢を崩し、床に倒れ込む。


「絶対許さない……」

梨紗が呟くように言った。その目は冷たく光っている。


立ち上がった二人は再び距離を詰める。今度は髪の引っ張り合いだ。ブラウンと黒の髪が絡まり合い、束になって抜け落ちていく。


「あんたなんか大嫌い!」

愛花の爪が梨紗の頬を引っ掻く。鮮血が一筋流れ出し、彼女の綺麗な顔を汚した。


「私もよ!」

梨紗の口が大きく開き、愛花の肩に噛みつく。


痛みに顔を歪めながらも、愛花は決して退かない。それどころか梨紗の腰に手を回し、強く抱き締めるようにして彼女を床に押し倒す。


周囲の空気が凍りついた。これはもう撮影ではない。完全に本当の喧嘩だ。

二人の呼吸音と小さな唸り声だけが響く中、彼女たちは取っ組み合ったまま動かない。どちらかが折れるまで終わらない。そんな覚悟が感じられる。


その時、一人の若いADが耐えきれずに口を開いた。


「あの……これ以上続けるのは危険だと……」

だがすぐに他のスタッフに制されてしまう。「馬鹿!何も言うな!」


誰も止めようとしない。いや、止められないのだ。

二人の間にはもう理性のかけらもない。あるのはただ純粋な憎しみだけ。


「……地獄に堕ちろ」


そう呟いたのがどちらなのか分からないまま、二人の唇が重なる——暴力的なキスだった。

歯と歯がぶつかり合い、互いの舌を傷つけ合う。唾液と血の混ざった液体が口元から滴り落ちる。


長い接吻の後、二人はゆっくりと体を離す。

その瞳にはもう何も映っていない。ただ憎しみと怒りだけが渦巻いている。


そして再び殴り合いが始まった。

もう止まらない。誰にも止められない。


スタジオの中に響き渡る悲鳴のような打撃音と呻き声。

それはまるで獣同士の争いのようで、もはや人間の言葉では説明できない世界だった。

愛花と梨紗。

二人の女優としての未来も、プライドも、すべてがこの瞬間に砕け散っていく。

それでも構わない。今この瞬間さえ勝てれば——それが彼女たちの全てなのだから。


## 決闘の舞台

あの悪夢のような撮影日から二週間。愛花(アイカ)と梨紗(リサ)の噂は業界中に広がっていた。「あの二人に関わるとろくなことがない」—それが暗黙の了解となり、二人はそれぞれ孤立していった。しかし彼女たちの間にある憎しみは、時間が経つほどに増していくばかりだった。


そんなある夕方、梨紗がいつも通う女性専用フィットネスクラブに愛花が現れた。レギンスにTシャツというラフな格好で入口に立つ愛花を見て、梨紗は思わず息を飲む。


「お久しぶりね」


冷たい笑みを浮かべた愛花が言った。梨紗の顔が見る見るうちに紅潮する。


「何しに来たのよ」


「決着をつけに来たの」


トレーナーが慌てて割って入ろうとするが、梨紗は片手を上げて制止した。彼女の目にはもう迷いはない。


「いいわよ。相手になってあげる」


こうして新たな戦いの幕が切って落とされた。


---


## 筋肉と筋肉のぶつかり合い

二人は広いマットエリアに移動した。周囲の女性利用者たちが好奇心と恐怖がないまぜになった表情で遠巻きに見つめている。


梨紗はストレッチをしながら言った。「ここなら監視カメラもないし邪魔も入らないわ。存分に戦えるわね」


愛花は無言のままジャケットを脱ぎ捨てた。その下から現れた鍛え抜かれた上半身に、梨紗の目が鋭くなる。


「あなたも少しは準備してきたみたいね」


梨紗も汗ばんだシャツを脱ぎ捨てる。均整の取れた肉体美が露わになる。


「さあ、始めましょうか」


合図もなく二人は動き出した。最初は足技の応酬。スピンキック、ミドルキック、ヒールキック。しかし決定打が出ない。


やがて二人は接近戦を選択した。愛花の拳が梨紗の腹筋を捉え、梨紗の肘打ちが愛花の首筋に入る。


「くっ……やるじゃない」


「あなたこそ……」


## 髪と筋肉の激突

マットの上で二人の女優は取っ組み合っていた。かつて美しく輝いていた黒髪と栗色の髪が今や埃と汗にまみれている。愛花の長い黒髪を梨紗が鷲掴みにする。


「痛い!離して!」


愛花は悲鳴を上げるが、梨紗は力いっぱい髪を引っ張り続けた。髪の毛が数十本まとめて抜け、空中に舞い上がる。


「あなたのせいよ!全部あなたのせいで私は……!」


梨紗の声は怒りと悲しみに震えていた。しかし次の瞬間、愛花も負けじと梨紗の前髪を掴み返す。


「私だって同じよ!あんたのせいで何もかも台無しなの!」


両者がお互いの頭を引き寄せ合い、額と額が激しくぶつかる。鈍い衝撃音が響き、二人は一瞬よろめいたがすぐに体勢を立て直した。


「この……この……この……!」


梨紗の拳が愛花の腹筋を連続で叩く。鍛えられた腹部でも衝撃は大きく、愛花の顔が苦痛に歪む。


「あぅっ……!」


愛花は息を吐きながら梨紗の背中に爪を立てる。シャツ越しにも関わらず、その指先は梨紗の肌に深い溝を作り出した。


「ひっ……!」


二人は絡み合うようにマットに倒れ込んだ。それでも離れることはない。お互いの体を抑え込み、相手の自由を奪おうとしている。


愛花は梨紗の腕を極めようと捻り上げる。関節が曲がりそうな痛みに梨紗は呻いたが、すぐに反撃に出た。愛花の足を取り、アキレス腱固めを仕掛ける。


「い……痛い……!」


「降参するなら今のうちよ!」


しかし愛花は諦めない。むしろ更なる力を振り絞り、梨紗の膝の裏に自分の脚をねじ込んでいく。


「絶対しない……!あんたこそ……!」


二人の四肢が複雑に絡み合い、見る者がいればそれは絡まった糸玉のようだと表現しただろう。息遣いだけが荒くなり、汗が床に染みを作っていく。


しばらくの膠着状態の後、愛花が強引に梨紗の上に乗り上げた。梨紗の首に両手をかける。その瞬間、梨紗の表情が変わる。恐怖ではなく、闘志の炎が燃え上がる。


「やってみなさいよ……!」


梨紗は自ら首を差し出すように愛花の方へ向けて頭を振った。驚いた愛花の手が僅かに緩む。その隙を見逃さず、梨紗は愛花の脇腹に膝蹴りを入れた。


「うぁっ……!」


短い叫びと共に愛花の体が横に吹き飛ぶ。梨紗は素早く体勢を立て直し、今度は自分が覆いかぶさるようにして愛花の髪を掴んだ。


「終わりよ!」


引き千切らんばかりの勢いで髪を引っ張り、愛花の顔をマットに押しつける。しかし愛花も簡単には屈しない。梨紗の腕を掴み返し、反対側に投げ飛ばす。


二人は再び対峙した。両者の髪は乱れ放題で、顔は汗と砂埃で汚れきっている。それでも目の中の炎は消えない。


「まだやれるわよね……?」


---


## 肉体と心の限界


二人の女優はすでに消耗しきっていた。それでも戦意だけは衰える気配を見せない。マットの上で座り込むように向き合ったまま、しばし無言の時が流れる。


梨紗の髪の先から汗の雫が落ちた。愛花はそれを拭うことなく見つめている。


「もういい加減にして……」


愛花が静かに口を開いた。その声にはこれまでになかった弱さが滲んでいる。


「こんなことしても意味ないのに……」


梨紗の目が曇る。何かを言いかけたものの言葉にはならない。


沈黙が支配する。しかし突然、愛花が梨紗に歩み寄った。梨紗の瞳に警戒の色が浮かぶが、愛花の動作はゆっくりとしていて敵意を感じさせない。


「本当は分かってるんでしょう?」


愛花の手が伸びて梨紗の頬に触れる。意外な行動に梨紗は微かに身を固くしたが、抵抗はしなかった。


「私たちがこんなふうに争う理由なんてないって……」


愛花の声が震える。梨紗の目に薄っすらと涙が浮かび始めた。


「でも……もう遅い……」


梨紗の声も掠れている。二人は互いの痛みを理解し始めていた。


愛花はそっと梨紗を抱き寄せた。最初は拒絶しようとした梨紗の体から次第に力が抜けていく。


「ごめんなさい……私…あなたのこと誤解してた……」


梨紗の呟きに愛花は何も答えなかった。ただ腕の中で梨紗を包み込むように抱きしめ続ける。


長い抱擁のあと、二人はゆっくりと身体を離した。お互いの顔を見つめ合う。


そこにはもう憎しみの色はない。代わりに疲労と安堵の入り混じった複雑な表情があった。


「帰りましょう」


愛花の提案に梨紗は小さく頷く。二人は互いを支え合うようにして立ち上がった。


周囲のギャラリーたちが拍手を送ろうとした瞬間—

愛花の拳が梨紗の頬に炸裂した。


予想外の一撃に梨紗は倒れ込む。信じられないといった表情で愛花を見上げる。


「ふふ……嘘泣きよ」


愛花の目は狂気に輝いていた。


「やっぱりあんたのこと、大っ嫌いみたい」


梨紗の表情が怒りに染まる。立ち上がりかけたそのとき—


今度は愛花の髪を掴み上げた梨紗の腕が振り上げられていた。


「じゃあこっちも本気で行くわね」


二人の女の最後の戦いが始まった。もう誰も止められない。二人だけの世界の中で、憎しみと怒りと—少しだけの哀しみ—が渦巻く。



動画はこちらhttps://x.com/nabuhero


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