昼になると、俺の箸が消える
赤とんぼ
昼になると、俺の箸が消える
昼休み、社員食堂で味噌汁を飲もうとしたら、箸がなかった。
さっきまで右手に持っていたはずだ。
隣の同僚が笑って言う。「またですか」
「また?」と聞き返すと、彼は味噌汁をすすりながら言った。
「先月からでしょ。昼になると、あなたの箸、必ず消えるじゃないですか」
冗談だと思い、ポケットや机を探すが見つからない。
スプーンで汁を飲み終えると、同僚が自分の膝の上を見せた。
そこにあったのは、俺の箸——何十膳も、折れずに重なっていた。
どうしてそんなに、と聞く前に、彼は立ち上がった。
箸を全部抱えて俺に差し出し、笑顔で言った。
「これ、返します。もう十分でしょ!」
その時、俺の右手にはまた新しい箸が握られていた。
さっきまで、何も持っていなかったはずなのに。
「同僚って、いつからここで働いてるんだっけ?」と尋ねた瞬間、
食堂の全員が首を傾げた。
そして出入口を見ると、「同僚」が三人並んで立っていた。
全員、俺の箸を持って。
昼になると、俺の箸が消える 赤とんぼ @ShiromuraEmi
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