現最強の能力者の高校生の俺がJKを拾う話。

カラマリ

プロローグ

「じゃあな」


「「グハァッッッ」」


 1人の男子高校生が振りかぶった腕を振り下ろした瞬間、どこからか鋭い氷のツララが無数に飛んできて2人を直撃した。

「クソッ…調子に乗るな…俺らがやられても…まだ俺らの『 the Dark 』の反撃は終わらねえからな…」

そう言うと2人の体は雲散霧消した。

「ダセェ名前だな。また来れるもんならこいよ」

あ〜あ無駄な運動したせいで余計眠いわ…帰ったらさっさと風呂入って寝ますか…

そう思い帰るついでにコンビニに立ち寄って、家路に着いた。

 

 湯尾ゆのお 翔兎しょうは至って普通の高校生だ。ごく普通の私立高校に通い、ごく普通の生活を送っている。しかし、一つだけ普通じゃないことがある。

 

 それが、翔兎は現最強のエスパーであるという事。

陰で人の命を狙ったり、征服計画を立てたり、最強である自分の命を狙う、悪に堕ちたエスパーを狩る日々を日常生活と共に過ごしている。


 そんな翔兎にもう一つの『普通じゃない』事が降りかかる。





     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 5月。新しい高校生活が始まって一ヶ月が経とうとしている。世間はゴールデンウィーク。子供から老人まで遊び尽くす五日間だ。街には旅行・帰省ラッシュで人々がごった返している。

 

 時はゴールデンウィーク2日目。翔兎はマンションで一人暮らし。この日は特に予定もないので買い出しに出かけることにした。

 高校で一人暮らし?と思うだろうが、翔兎は5歳の頃に両親を飛行機の事故で亡くしている。そこからは中学校を卒業するまで翔兎の叔父の家で過ごしていた。

 高校生になると同時に都会に引っ越した。うちの家はかなりお金持ち。翔兎の両親は2人とも大企業の社長だったんだ。今は遺産から少しづつ削る生活をしている。

 

 そこまではよしとしよう。でも俺は生まれてからずっと不思議に思い続けることがある。

 ———自分はなぜエスパーになったんだ?

それが唯一いまだにわからないことだ。だけど面倒くさいから何も考えてない。


 

 翔兎は中学生の頃から料理を勉強し今や自炊をするタイプ。今日は5月分の食料の買い出しに出かける。2日前に新調したスニーカーを履いて外へ出る。この日は灰色の厚い雲が空を覆っていた。


 カレールー、玉ねぎ、ジャガイモ、ヨーグルト、卵、牛乳………

これで全部だね。

 翔兎は買い出しを終えて帰宅しようとしていた。


「飛んで帰りてぇ…」

もちろんエスパーだから空中浮遊もお手のもの。普通に家まで歩くのが面倒くさい翔兎は空中浮遊で帰ろうとしては、周りに見られるからやめておく、といった茶番は日常茶飯事。

 現代社会においてエスパーは存在しないもの、アニメや漫画だけだと定義づけられているものだから、エスパーたちはエスパーであるという事は絶対にバレてはいけない。だから、渋々家まで歩いた。


 しかし、家までもうちょっとの所まで来た途端、急に激しい雨が降り始めた。

「うわ、、、マジかよ…どうしよ」

今日は午前は降水確率10%予想。傘なんて持ってきてるがはずがない。このままずぶ濡れになるのも嫌なので路地裏でやり過ごすことにした。

 

 翔兎は豪雨をやり過ごしながら、さっきスーパーで買ったスルメイカをしゃぶっていた。するとここで違和感に気づく。路地裏の奥の方から気配がする。

 エスパーは気配察知能力が優れている。だから5m以内なら見えなくても気配を察知する事ができる。


 誰かいるのか?こんな路地裏に?


 翔兎は気になりすぎて夜しか眠れなくなりそうだったので、恐る恐る奥を見てみることにした。

 

 ——これって血…?なんだここで殴り合いでも勃発したのか?

しかし薄暗いな…前が見辛すぎる。知らないうちに何かに頭ぶつけそうだな。


 そう思っていると足元に何か物がある感覚がした。ゴミ袋ではなさそうだ。

翔兎はポケットからスマホを取り出してライトを照らす。

 

 …ライトを照らしてすぐ、翔兎は全身に寒気が走った。震えでその場から動く事ができなかった。目の前の光景を。

 

 ライトを照らした場所には、全身血ダルマの女子が捨てられたように倒れていた。手や足だけでなく、頭からも大量に出血している。翔兎は衝撃のあまりスマホを落としてしまった。


 おいおいマジかよ…!怪我って言うレベルじゃないぞこれ…


まずは生きているかの確認だけしてみる。

 

ドクン、、、ドクン、、、


 意識はないが、鼓動はとても遅いが動いている。生きてはいるみたいだ。血がまだ流れていることから、やられてそこまで時間が経っていないようだ。翔兎はとりあえず病院に今すぐにでも連れて行きたいが、外は猛烈な雨。しかもその女子は頭を何かで殴られた痕跡もあり、深く傷ついており、救急車を呼んでいたら時間がかかって多分手遅れになる。早急に止血しないと死ぬ。そして裁縫のまち針にしてはかなり大きい針のような物も手に刺さっている。

 翔兎はとりあえずその針だけゆっくりと抜いた。そのあと、路地裏の表まで戻り、周りを見渡した。

 幸運にも人通りはない。この人通りだったら能力を見られることも無いだろうと思った翔兎は能力でカプセル型の念力で作ったシールドを出した。そこに女子をそっと入れて家までダッシュで帰った。


 何とか誰にも見つからずに家に着いた翔兎はすぐにその子の止血をする。いざ傷を見てみるとかなり深い。足にも何かで殴られた跡があり、酷く腫れている。

「これは折れてるな」


 金属バットのようなもので殴られたのか分からないが、腫れ方から完全に骨が折れていることがわかる。これは病院に行かないといけないと思った翔兎は、頭と足と、手の止血をし、雨がおさまってきたタイミングで、女の子を抱えて兎のようなスピードで病院に向かう。

「頼む、死ぬんじゃねえぞ」


 その後、翔兎がダッシュしたお陰で、女の子は病院で骨折の処理をしてもらい、頭に包帯も巻いてもらった。入院しますか?と言われたけど、何となく女の子の事情を察しかけている翔兎はお断りした。翔兎は女の子をそのまま連れて帰って寝かせて方が良いと思った。


 病院の医者の人は見た事ないものを見るように不思議な顔をしていたそうな。


 家に帰った翔兎は女の子を布団の上に寝かせて経過観察をすることにした。しかし、翔兎は悩んでいた。

「どうしたらいいんだろ」

それもそのはず。この女の子が目覚めた後が1番問題だ。もし、目覚めた時に見知らぬ男がいたら叫ばれるかもしれない。もしかしたら殴られてしまうかもしれない。いや、殴られることは流石にない…と思う。

 翔兎は1つのこと以外はごく普通の高校生2年生だから、大金を使うような事はできるけどできない。この子にしてあげれる事がわからない。


 目覚めたらとりあえず…なんとか何があったのか聞き出したいな。その後…うーん…そうだな、とりあえず傷が治るまでいてもらうのは確定だけど…治ってからなんだよなあ…治ってから家に帰すようにしようか…


 色々考えているとあっという間に30分過ぎた。そしてタイミング悪く塾に行かなければならなくなった。

「ゲッ、もう14時かよ」

仕方なく女の子を家に置いて行った。


 塾では勉強に全く集中できなかったそうな。






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