第17話 夢のお告げ

 空がゆっくりと闇に溶けていく前のひととき。


 いつもなら燃え上がるような赤に染まる夕焼けが、今日はどこか違う。


 西の空は淡い黄色にくすみ、太陽はまるで疲れたという様に霞む。


 遠くの雲はその光を呑み込むように広がり、まばらな隙間から鈍い輝きが零れてくる。


 街並みも、いつかより静か。


 この黄ばみの向かう先には、ひっそりと夜が控えている。



 シャボン玉が消えていくように、喜びも弾けていく。


 それは美しいけど、呆気なくて。



 夢を見た。


 過去の夢。


 自分がこの世界に来た時の遠い記憶。



「ここ、どこ?」


 戸惑った自分の声が、問いかける。


≪ここはソルレア国です≫


 頭につんと声が響いた。


「戻してください」


≪助けてくれ。そう願ったのはお主だろう≫


「願ったけど、こういう意味じゃない」


 叫ぶ私に耳も傾けず、その声は乱暴に言い放つ。


≪一年後の夏、この国の八月十八日,お前は死ぬ。死んだ後は、元の国に戻れる。以上だ≫


 そう言って、その声は聞こえなくなった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る