終章 残された輝き
ヴォルテールの逮捕は、帝都に大きな衝撃を与えた。
『星の石』の上演が終わらぬうち、帝国魔導技術研究院の院長が魔術師誘拐と魂搾取の容疑で逮捕されたのだ。
翌日から帝都は混乱に陥り、研究院は解体され、全ての魔石製品が市場から回収された。
魂抽出技術は法的に禁止され、ヴォルテールは終身刑に処された。
コルトハルトとエルドリックは新しい研究所を設立し、倫理委員会の監視下で魔法技術の健全な発展を目指している。
事件により『魔法の民主化』という理念自体が見直され、社会は大きく変わった。
しかし、アランはそうした変化を遠くから眺めるだけだった。
復讐は成功した。
妹の尊厳は取り戻された。
だが、リアは戻ってこない。
アランは帝都を離れ、郊外の小さな町に移り住んだ。
脚本家としての筆を折り、今は町の図書館で司書として働いている。
『星の石』が彼の最後の作品となった。
それから一年が過ぎた。
ある春の日、図書館に一人の少女がやってきた。
十歳ほどの女の子で、光の魔法を学び始めたばかりだという。
「おじさん、光の魔法って、どうやったら上手になるの?」
少女の純粋な瞳を見つめながら、アランは昔を思い出した。
リアも、同じような瞳をしていた。
「技術も大切だけれど」
アランは優しく答えた。
「一番大切なのは、光に込める心だよ。人を幸せにしたいという気持ちがあれば、きっと美しい光を作れる」
「人を幸せに?」
「そうだ。光は単なる明かりじゃない。心を温める力がある。君の光で、多くの人を笑顔にできるんだ」
少女は目を輝かせた。
「私、頑張る! みんなを幸せにする光を作る!」
少女が帰った後、アランは静かに微笑んだ。
リアの光は、こうして受け継がれていくのかもしれない。
直接的にではないが、心から心へと。
夕暮れ時、アランは図書館の窓から空を見上げた。
美しい夕焼けが空を染めている。
「リア」
アランは心の中で語りかけた。
「君の光は続いているよ。君がいなくなっても、君の想いは生き続けている」
風が頬を撫でていく。
まるでリアの手のように、優しく温かい風だった。
妹の輝きは、永遠に失われることはない。
それはアランの心の中で、そして世界のどこかで、今もなお輝き続けているのだった。
奪われた輝きの舞台 Flare @Flare_3061
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