心が救われた、あの日。

月 葉月

第1話あなたたちを超える人はいない

 一人にひとつずつ与えられた「命」を粗末にしようと考えていた日々があった。


「私、変われる…」と思わせてくれた人たちがいてくれた。

 だから「今」の自分があるのかもしれません。

 高校生の時に耳に違和感を覚えた私は、すぐに病院に行こうなどとは思わず、そのまま生活をしていました。

 けれど、一日一日、寝て起きるたびに、耳の聞こえが悪くなるとともに、まるで現実と耳との間に膜を張られているようような、変な感覚に襲われていきました。

 静かになればなるほど「耳鳴りがしている…うるさい…」と、自分の耳の調子が悪い事がより分かるのです。

 何か言葉を発すると張られている膜が山びこのようにはね返して来る。

 気持ちが悪くなり目眩を起こし、授業を受けていることも辛かった。

 テストの時の静けさに自分の心が受ち勝てる時はなく、勉強を沢山したのに静かさが何倍にも増し……。

 けれど耳だけはやっぱりうるさい。

 全ての問題の答えが書ききれなかった。あんなに勉強したのに……。

 一体何が起きているの?

 ついに耳鼻科科に行った。先生からの言葉は「原因不明」だった。

「テストが終わったら病院へ行く」と言っていたものだから、やっと解放されると思っていたのに。

 神様はひどい試練を与えるのだと、涙が止まらなかった。

 その後、治療を続け学生の時みたいな症状はなくなったが、後連症として耳鳴りだけは残っている。

 昨日まで何もなかったはずの身体の一部が急にかしくなり、アーティストのライブにも行くこともできなかった。


あれから一五年以上の月日が経ち、2021年にテレビから流れて来た歌声に、私は心身ともに救われた。ドラマを観ていて、二曲使われていた内の挿入歌だった。

 主人公の背中を押すように流れていた歌声が『無意識の涙』を覚えるほど心地良かった。

 病気とコロナ鍋で、普通に働くことができず、障がい者雇用で働いていた私は職を失ったのでした。

 ただ実家で暗い顔をして生きていただけ。

 TVで命の危険と隣合わせの中、エンターテイメントを届け続けてくれている彼らを、心から薄敬する。

 直ぐにファンクラブに入り、入手困難な中、初めてライブに行ったのは2023年だった。

 2023年、その日その時間が一番楽しかった。

 2024年、母とライブに行った。2024年の中でその日、その時間が本当に一番楽しかった。時間が短く感じた。

 随分と前の話になるけど、私には、

「こんなに辛いのなら、音の無い世界に行きたい」「生きていることが辛い」と、子どもながらに思っていた。

 そのようなことは絶対に言葉にしてはならないと分かっていても、思っていた。


 私は自分の文章を誰かに表現をしてもらえることを想像した。

 こんなに幸せなことは無いと、何年もコンテストに挑み続けた。

 そして、ついに本を出版した。

 職を失って閉じこもっていた時、これから先の白黒の人生に『彼ら=推し』は私に彩りをくれた。

 自分みたいな人間もいるのだと、心の底からお礼を言いたい。感謝を伝えたい。

 この文章を書こうと思った理由は、

「明日、いつもの自分がいるか分からないから」「笑えない日が突然やってくるかもしれない」これに尽きる。

 ありがとう。皆さんのことが大好きな人はすごく、すごく沢山いる。

どうか、お身体を大事に日々の時間を幸せに生きてほしいです。

 一緒の時間、同じ時代を少し年齢は離れているけど、同じ時代を生きていてくれてありがとう。何度でも…ありがとう。本当にありがとう。


 私の人生、やっと灯がつき出した気がした。

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