七夕の奇跡
そして、それからまた日は過ぎて。
報道が真実であると証明され、学園は訴えられ学園長を含め多くの職員が厳重処分となり、中には失職する者もいた。
カースト制度でイジメが発生していたことも問題視され、実際にイジメを行っていたグループには暴行罪と脅迫罪を科され少年院へ送致されることが決まり、上位である章裕に対しても同様の処分が下された。
同時に俊を脅していた動画のデータも彼自身によって全てを削除し、俊と彩希に対して謝罪と慰謝料を支払うように命じられた。
さらには生徒の一部で転校する者もいたが、転入先で上条学園の者だと分かると、冷たくあしらわれることがあった。
さすがにこれは風評被害ではあるものの、見て見ぬフリをしてきたものへの制裁とされ、世間は全てを悪と判断したのだった。
この報道に心を痛めながらも、俊は彼らを赦すことはしないと決めていた。
自分がしてきたことを認め、社会的制裁を与えられたことで考え方を改めて欲しいと、そう願っていた。
だが、暗い話ばかりではなかった。
少しずつではあるが、彩希が反応を示すようになっていたのだ。
手を握ると握り返してくることもあり、医師からももう少しで意識が戻る可能性が高いとも云われて。
俊はその日を、待ち続けた。
そして迎えた、七夕の日。
病室には完成した千羽鶴と一緒に、折り紙で作った小さな笹に、皆の祈りが書かれた短冊を飾った。
―――どうか、水瀬が目を覚ましてくれますように。
俊は祈り続けて、暗くなっていく空を見上げた。
空にはうっすらと星が煌めきだして、天の川もはっきりと見えるようになっていた。
そしてもう一度、星空に願った。
―――この命を、半分でも分けられるのなら、彼女に分けてください。
そしてもう一度、彼女の笑顔が見れますように、と。
その祈りは届き、彩希はゆっくりと、長い眠りから目を覚ました―――。
「みな、せ………?!」
俊が呼びかけると、彩希は小さな声で「架山君…」と答えていた。
意識を戻した彩希に、俊はこらえきれずに泣き崩れた。
その後、圭も敦也も駆け付けて、皆が安堵の表情を浮かべた。
医師も駆け付け「奇跡だ」「よく頑張ったね」と言い、経過を診て問題なしとされて、一般病棟に移ることになった。
ずっと眠っていた後遺症で、上手く身体を動かせないながらも、彩希は「心配掛けて、ごめんね」と微笑みかけて。
俊もまた、「全部、終わったよ」と全てが公にされたことを話した。
それからの日々は、目まぐるしく過ぎていく。
彩希が目覚めたことにより、奇跡の生還者と特番で報道され世間からも応援と励ましのメッセージが彩希に届くようになり、また同時にカーストでのイジメがここまで深刻さされていることが問題視され、評論家の間でも「現代社会における格差が生み出したもの」「彼女の生還は周りのサポーターがいたかの奇跡だ」「いじめ問題を軽視指定が学校の膿が明るみに出された結果だ」と様々な意見が飛び交った。
中には、「悲劇のヒロイン気取りかよ」と批判する者もいた。
だが、そう言う者もいるとして、俊はありのままを受け入れると誓った。
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