第九話『一線を越えて(カレス・ドゥ・イット)』
ゴブリンの群れとトレント、赤いドレスの女――ジャスミン=ラヴにとって現状最も脅威度が高いのは、数が多いゴブリンの方だった。
しかしジャスミンにとって、ゴブリンは決して苦戦するような相手でもない。
ジャスミンの姿に気づいた複数のゴブリンたちが、粗雑な武器を片手に複数方向から襲い掛かってくる。
「単調な攻めね……なにより、顔が好みじゃない。5点」
そう言った直後、ジャスミンは正面から来たゴブリンに対して持っていた杭を脳天目掛けて投擲する。
「まずは一匹」
しかし四方を囲まれている以上、正面のゴブリンがいなくなったところで状況はさして変わらない。
それでもジャスミンは冷静に片手の鞭で横にいるゴブリンの首を掴んで、引き寄せて顔面を正確に蹴り飛ばす。
だがゴブリンも馬鹿ではない。
単純な戦闘力で勝てないとなれば、数の利を活かす戦術にシフトする。
残っていた一匹が、ジャスミンの軸足に掴みかかって転倒させ、残る一匹が拘束する目的でジャスミンの上に圧し掛かる。
その隙を逃さずに、複数のゴブリンたちがジャスミンの四肢を取り押さえた。
ゴブリンは肉を長期保存するために、生きたまま獲物を解体する習性がある。
こうなれば、よほどの力自慢でもなければ脱出は困難になる。
ましてジャスミンの筋力では、このゴブリンたちを振り払うことは不可能である。
「私に
ジャスミンがそう言った直後、腹の上に乗っていたゴブリンが突然吐血したかと思うと、口からまだドクンドクンと脈打っている心臓を吐き出して動かなくなった。
それに続いて、他のゴブリンたちも同様の死に方を迎えていく。
「
そうして自分に纏わりついているゴブリンをすべて排除したジャスミンは、ゆっくりとその場に立ち上がった。
「ほんと、モテすぎるっていうのも考え物ね」
そんな軽口とは裏腹に、ジャスミンは次々に足元から何か小さな物体を、全て別の角度と別の場所から一つひとつ射出していく。
ジャスミンは地面に埋まっている小石を高速で『はみ出させる』ことで、飛び道具のように扱っているのだ。
それは次々にゴブリンに命中していき、さきほどまで十数匹もいたゴブリンがあっという間に全滅してしまう。
「さて、残りはトレントだけど……まだ生きてるかしら?」
ジャスミンがそう問いかけた頃にはそこにフジ=モンの姿はなく……代わりに、まっすぐ突っ込んでくるトレントの姿だけがあった。
「少し休憩したかったんだけど……レディの扱いがなってないんじゃない?」
そう呟いたジャスミンは振りかざされたトレントの腕を避け、幹の部分に触れた。
次の瞬間、トレントの体内から心材と呼ばれる木の中心にある部分が固い樹皮を突き破って外に『はみ出した』。
ジャスミンから見て背中側は心材によって、完全に破壊されていた。
支えを失ったトレントが地面に倒れ伏した重低音によって、スタンプラリーにおける最大の障害となる魔物の撃破が山全体に告げられた。
to be continued
名前:ジャスミン=ラヴ
二つ名:一線を超えて(カレス・ドゥ・イット)
性別:女
所属:一般人
等級:なし
ステータス
筋力:176
体力:288
敏捷力:287
精神力:330
知力:279
教養:242
スキル:一線を超えて(カレス・ドゥ・イット)
装備:杭×10・バトルウィップ・赤いドレス
所持金:10000G
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