第28話 決着
「あ!あいつほんまに逃げる気やで!」
愛の背中から覗き込んでいた猫野瀬が叫ぶ。
「逃がさんよ!」
武流が走り出し、同時にどんぐりの入っているポケットに手を入れる。
ポケットに手を入れて走るのは危ないので真似しないように。
身体が大きいと一歩にかかる時間も大きい。
時間を稼いだと思っていたがしゃどくろだったが、振り上げた一歩目の足はまだ地面に着いていなかった。
そもそもその身体の大きさでは多少逃げたところで丸見えである。
それでもそのことに気付かないがしゃどくろ。
すでに彼(?)の頭の中は逃げることでいっぱいになっていた。
そして最初の一歩がようやく地面に着いた時——
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
怒真利の墓穴から雄叫びと共に光の柱が立ち上った。
これには武流も驚いて動きを止め、がしゃどくろも何事かと振り返る。
いや、お前はそれどころじゃないだろう。
そして光の中を登っていく人影。
その高さは立ち尽くしているがしゃどくろの顔の高さまで上り、そのまま宙に浮かぶようにして止まった。
「あれは……まさか……」
盆城が口元を震わせながら呟く。
「ワシ!ふっかアァァァァァァツッッッ!!!!」
光の中にいたのは怒真利。
迷彩服はボロボロになっていたが、その下に見える筋肉はパンパンにポンプアップされたように張りがあり、頭部の輝きは生前にも増して神々しいまでの輝きを放っていた。
「死んでおらんぞぉぉぉ!!」
「怒真利師団長!?」
「怒真利はん!生きとったんかい!」
「ああ……あああ……よくぞ御無事で……」
「少々眠っておったようだが、そのお陰か力が漲っておるわぁぁぁ!!」
全身から神力を放出させ、その浮力で宙に浮かぶ怒真利。
このようなことは本来は出来ないのだが、生き返りハイになっている怒真利はそのことに気付いていない。
「だから死んでおらんのだぁぁぁ!!」
「爺さん!無事だったのか!」
武流が怒真利を見上げながら声をかける。
「当たり前じゃあ!何があったか忘れたが、あれしきの事でワシが死ぬわけないじゃろうが!!」
忘れているのにあれしきとは……。
「ん?」
そこでようやく怒真利は目の前にがしゃどくろがいることに気が付く。
「おお!そうじゃ!ワシはこいつを倒しに来たんじゃったな!!」
獲物を見つけた肉食獣のような鋭い視線をがしゃどくろへと向ける。
「……ホネチガイデスヨ?」
「喋れるんかい!」
「いいや、お前で間違いない。ワシの筋肉がそう言うとるわ」
全く可愛げのない恐ろしい笑顔を向けられたがしゃどくろは思った。
今日は仏滅か何かだっただろうか?と。
まあ、存在的には仏滅歓迎。大安反対だとは思うのだが。
「いいか若造!!」
怒真利は様子を見ている武流へと叫ぶ。
「絶対に手を出すんじゃないぞ!!こいつはワシの獲物じゃ!!」
「ああ、分かった。元々はその予定だったしな。俺としては倒してくれるならそれで構わない」
「ふん!上から物を言いおって!」
「いや、上から言ってるのは爺さんの方だろ?」
「立ち位置の話じゃないわい!——ったく。まあ良い!」
武流からがしゃどくろに視線を戻し、印を組もうと胸の前で手を合わせる。
「おっと、忘れておったわ」
そこで怒真利は数珠が無い事に気付く。
先程の戦闘で珠は飛び散ったままになっている。
「——ハアッ!!」
気合い一閃。
その声に反応するかのように、地面に転がっていた珠がもの凄い勢いで怒真利の手元に戻ってきた。
「おおー!!」
歓声を上げたのは武流。
まるで初めて手品を見た子供のように目を輝かせている。
「さて、仕切り直しじゃ」
がしゃどくろは腰を抜かしたような体勢で座り込み、怒真利に向かって首を振っていやいやしている。
「
怒真利の手元に戻った珠が飛び広がり、少し可哀そうに見えるがしゃどくろの周辺に浮遊する。
「安心せえ。なあに、痛いのは最初だけじゃ。一撃で終わらせてやるわい」
そう言って、笑っているような怒っているような不思議な表情でがしゃどくろを見つめる。
「
またもや珠から放たれた光が互いに繋がっていき、それが光の鎖のようにがしゃどくろの身体を拘束する。
多分、そんなことをしなくても逃げ出す気力はすでに無さそうであるが。
そして再び印を——結ばず、そのままがしゃどくろ目掛けて飛んでいく怒真利。
「成仏せえやぁぁぁぁぁ!!!!」
振りかぶった右腕と握りこんだ左腕には、いつのまにか別の数珠が巻かれており——
「煩悩!百八連撃ィィィィ!!」
その両腕でがしゃどくろの顔面を高速で殴り続けた。
「——ガッ!——ギャッ!——グゥ!——ゲェッ!——ゴォォォ!!!」
拳が当たる度にカ行な悲鳴を上げ続けるがしゃどくろ。
そして衝撃によって生まれたひび割れがしゃれこうべ全体へと広がっていき——
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!」
声に出せない悲鳴を上げたかと思うと、その亀裂から強烈な光が溢れ出し——
「蠢懈抄繧医m縺励¥縺企。倥>縺励∪縺!!!!」
文字に書けない悲鳴と共に光の粒子へと消えていった。
そしてその意識が消える直前——彼は思ったのだ。
一撃とは!?
「人間はな、綺麗ごとだけでは生きていかれへんのや……」
何かを察した猫野瀬の呟きだけが、平穏を取り戻した祭儀場に流れていた。
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