第26話 怒りの記録

赤い空間。 熱が肌を焼くように痛い。鎧の奴が現れた。今度の仮面には、裂けた口の模様――怒りの象徴。


「怒りは、最も破壊的な感情。記録されれば、世界を焼く。お前らの怒りを、見せてみろ」


最初に現れたのは――カイ。 映像の中、彼は病室の前で立ち尽くしていた。 中には、動かない妹。 小さな命が、静かに消えていた。


「なんで……なんで、あいつが死ななきゃならなかったんだよ……!」

カイの声は、震えていた。


「俺が、もっと早く気づいてれば……!もっと、守れてれば……!」


拳を壁に叩きつける。 その怒りは、自分に向けられていた。でも、同時に――世界にも。


「病気なんて、記録なんて、異能なんて……全部、クソだ……!」


レンが目を伏せる。ライは、静かに見ている。


「カイの怒りは、喪失から生まれた。妹を守れなかった自分への怒り。そして、世界への怒り。だが、それは記録されなかった。だから、彼は今も燃えている」


映像が消える。 次に現れたのは――センセー。

彼は、瓦礫の中に立っていた。 仲間の遺体。 焼け焦げた記録。そして、残された“裏切りの言葉”。


「灰島、お前は“正しすぎる”んだよ。だから、誰もついていけない」


灰島は、無表情だった。 でも、記録の中の彼は――怒っていた。


「正しさが間違ってるって言うのか……?俺は、間違ってない。間違ってるのは、お前らだ」


その怒りは、冷たい。 炎ではなく、氷のような怒り。正しさを否定された者の怒り。


「灰島の怒りは、仲間への怒り。そして、自分の正しさを否定された怒り。さらに、ここで仲間割れしてしまったがために、仲間が隙をついて殺されたことへの怒り」


鎧の奴が言う。すると、センセーは怒りが混じった声を上げる。


「……俺は、間違ってない。記録が間違ってるなら、記録ごと壊す」


空間が震える。 怒りが、記録を焼き始める。


「センセー、やめて!」


俺は叫ぶ。


「怒りは、記録を壊すだけだ!それじゃ、何も残らない!」


「残らなくていい。残す価値がないなら、焼き尽くす」


センセーの声は、冷たい。


「でも、怒りの中にも“守りたいもの”があるはずだ」


ライは小さく呟く。


「お前が怒ってるのは、誰かを守れなかったからだろ。なら、守れよ。怒りじゃなくて、意志で」


沈黙。 センセーは、目を伏せる。


「……それができるなら、怒りなんていらない」


鎧の奴が、仮面を外す。その顔には、裂けた口ではなく――静かな微笑み。


「試練、通過。お前らは、怒りを超えた」


空間が、少しだけ冷える。でも、次の感情は――もっと複雑だ。


「最後に――孤独の記録」

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