第4話 魔法の頂

勇者の優勝への覚悟とは裏腹に、僧侶コス無料酒飲み大会はのんびりと進行していた。


ババア僧侶A

「勇者ちゃん、おいしいお酒だぁ。

長生きてて良かったべ。」


勇者

「おう、ゆっくり飲むんやで、ばっば」


ババア僧侶B

「もったいないから、ゆっくり飲むべよ。」


ババア僧侶A

「長生きして良かったべ。」


勇者

「ばっば・・・ってその酒、この店で一番高いシャンパンじゃねーか。冥土の土産が豪華すぎんだろ。

マスター女、飲み干したぞ、次」


マスター女

「まあまあ勇者様、参加者100人以上いるッスから、1人2人が高いお酒飲んでもお支払金額の桁は変わんないッスよ。」


勇者

「バカタレ。節約とは毎日のコツコツとした積み重ねが大事なんだっ」


マスター女

「でも、勇者様いつも金欠で水割りばっかじゃないッスか。」


勇者

「うるせぇ、節約だ節約。

ここぞという時に、パァーっと使う為に金は貯めるもんなんだよ」


マスター女

「へぇ勇者様のここぞって、いつッスか?

彼女さんとデート行く時ッスか?」


勇者

「...そんなの、いないけど。」


マスター女

「ん?今なんか言ったッスか?」


勇者

「うるせぇ、うるせぇ。

お前だって、彼氏居ないくせに。」


マスター女

「今月で付き合って2年目ッス。」


勇者

「ふぁー、不公平だろ。どんな魔法だよ。

ねぇ教えてよぉ〜その魔法〜。

お酒一杯奢るからぁ〜」


マスター女

「勇者様ごちッス。

そうッスねぇ。強いて言うなら、一眼見た時から運命感じて付き合ったッス」


勇者「はぁ〜こいつ使えねぇ〜。

あー爆発すればいいのに。」


マスター女

「大丈夫ッス。勇者様も魔王倒して数十年すればモテモテになるッス。」


勇者

「遺産目当てじゃねーか。

俺は年上のえっちなお姉さんが好きなんだよ。」


マスター女

「勇者様、まさか遺産目当てッスか?」


勇者

「しばきまわすぞ。」


ババア僧侶A

「勇者ちゃん、私なんかどうだべ?

あと数年したら勇者ちゃん小金持ちになれるべ。」


勇者

「笑えねぇ冗談やめーや。

ばっば長生きするんやで。」


ババア僧侶A

「勇者ちゃん、優しいだぁ。

でも、魔王討伐には私は付いて行けそうにねぇだよ。」


勇者

「でしょうね。

家で俺の活躍祈っててくれや。」


ババア僧侶A

「趣味のマラソン大会に出られなくなっちまうだ。」


勇者

「俺より元気じゃねーか。

なら、魔王討伐くらい散歩みたいなもんだろ。」


ババア僧侶A

「老体には1日42キロ以上の移動は辛いだよ。」


勇者

「1日で魔王のとこまで行かねーよ。

魔王より先に俺がくたばるわ。」


マスター女

「勇者様根性ないッスねぇ。」


勇者

「お前連れてくぞ。

おかわりっ」


マスター女

「遠出は、いやッス。

彼氏とのデートの予定がいっぱいあるッス。」


勇者

「ふぁー、リア充爆発しねぇかなぁ。

魔王より倒すべき敵が目の前に居るんだが?

あー、俺もモテモテになる魔法でも使っちゃおうかなぁ」


マスター女

「はぁ、だからモテないんすよ、勇者様。

それに勇者様が魔法使ってるとこ見たこと無いッス。できない事は、言わない方がいいッス。」


勇者

「ふぁー、もう許さん。覚悟しろガキンチョ。

 我は汝に意図を告げる

 神にあだなす罪人よ

 正義の鉄槌を持って、リア充爆発しろ

 天哭雷げぷっ、、、」


マスター女

「あわわわわ、辞めるッス。

店内での攻撃魔法は厳禁ッス」


勇者

「クソっ、飲み過ぎてゲップが出ちまった。」


ババア僧侶A

「マスター女ちゃん、大丈夫だぁ。

勇者ちゃんも本気じゃないべ。

そもそも詠唱間違ってるだよ。」


ババア僧侶B

「んだんだ。

あれじゃ、ただ魔力使って愚痴言っただけだべ。」


勇者

「バレたか」


マスター女

「ほっ、安心したッス。

そして、勇者様のモテない理由も分かったッス。」


勇者

「うっせ。ビビってた癖に。

魔法の詠唱くらい勉強しとけ。」


マスター女

「余計なお世話ッス。

それに、詠唱魔法なんて学校で習って終わりッス。時代は、魔道具を使った楽々魔法ッス。」


勇者

「金ねーんだよ。

魔道具買う金あったら、俺はいい酒を飲むね。」


マスター女

「そんなんで、本当に魔王倒せるッスか?」


勇者

「は?余裕だが?俺は神の子。」


マスター女

「可哀想に、神様の家系も勇者様で末代ッスね。」


勇者

「しばきまわすぞ。」


ババア僧侶A

「大丈夫、勇者ちゃんはカッコいいだよ。

きっと良い嫁っ子さ、すぐ見つかるべ。」


ババア僧侶B

「んだんだ。」


勇者

「ばっば達、ありがとな。

ちな、どこら辺がカッコいい感じ?」


ババア僧侶A

「すまねぇ、勇者ちゃん。最近老眼でよく顔が見えねぇ気がするだ。」


ババア僧侶B

「んだなぁ。男は顔じゃねぇだ、勇者ちゃん。

大事なのは心だべ。」


勇者

「はっ倒すぞ。」


マスター女

「マジウケるッス。」


勇者

「好き放題言いやがって。

クソがっ。おかわり。」


マスター女

「勇者様意外にしぶといッスね。

ワンチャン決勝まで行けそうな気がするッス。」


勇者

「ワンチャンどころか、鉄板だろ。

見ろよこの飲み干したグラスの山を。」


マスター女

「随分低い山ッスね。

勇者様の志を見てるみたいッス。」


勇者

「は?志めっちゃたけぇが?

魔王倒して、ハーレム作って流れるプールで毎日豪遊する予定だが?」


マスター女

「あ〜はいはい、すごい野望ッスね。

そう言う冗談は、あの僧侶様達より飲んでから言って欲しいッスね。」


勇者

「あ?・・・って、なんだあいつら?

なんでブランデーを瓶ごと飲んでるんだ?

ルール説明聞いてなかったのか?」


僧侶

「無料宴会なんてサイコーです~。

おかわり~。」


マスター女

「ハイ、今行くッス。」


僧侶

「今度は2本お願いしまーす」


オカマ僧侶A

「私も、勇者様との明るい未来にシャンパン1本追加~」


オカマ僧侶B「私も~」


オカマ僧侶C

「じゃあ、私は2本おねが~い」


ババア僧侶A

「最後に一本お願いしますだぁ。」


ババア僧侶B

「んだなぁ、こっちはウォッカでおねげぇしますだ。」


勇者

「あいつらルール聞いてねーじゃねえか」


マスター女

「儲かるッス。」


勇者

「しかも全員俺よりピンピンしてんじゃねーか。」


マスター女

「勇者様すでに負けてるッスよ。

やっぱこのままじゃ、決勝すら無理ッスね。」


勇者

「は?全然余裕だが?

おい、マスター女。水割り薄めで。」


魔王討伐に同行する仲間を選ぶ大会は、始まったばかり。

地に足ついた勇者の決勝戦までの生き残り作戦は有効なのだろうか。

既に勇者は足の裏がじんわり熱くなり、ある種の浮遊感を感じ始めていた。

















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王様「勇者よ、世界平和のために魔王を倒すのじゃ」勇者「は?行かねぇが?」 やにーと @YANEET

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