すべてが青くなる

長月瓦礫

すべてが青くなる


雨が降ってきた。

青空が広がり、太陽が輝いているのに、雨が降ってきた。

勢いのある大粒の雨、シャワーみたいだ。


雨が降ってきたから、早く家に帰ろうとした。

青信号でみんな止まっていた。

車道の信号は赤なのに、車が走っていた。


これは何かの悪夢だろうか。

みんな夏の暑さにやられて、トンチキな行動をしているのだろうか。


信号が赤になった途端、みんな一斉に歩き出す。

車道の信号は緑をはさんで青になると、車は止まった。


赤信号を俺も歩いた。非常に気持ち悪いのは、雨で濡れているせいか。

いや、それだけじゃない。雨に打たれた場所が青くなっていく。

街路樹の葉が水色になり、花壇のヒマワリが紫になる。


気づけば、信号もすべて青になっていた。


すべてが青色に染まる。青い空が雨になってこぼれ落ちる。

青い水たまり、青い足あとが点々と続く。


人の影も声も、すべて青だ。

見るものすべてが青になっていく。


誰も傘をささないで道を歩いている。

傘をさせば、この雨はやむかもしれないのに。


だから、家まで走った。足が青くなろうが構わなかった。

ただ、青になる世界が怖かった。

勢いが強まる雨に打たれながら、家まで走った。


青い手で玄関のドアノブを回し、廊下に飛び込んだ。

そのまま崩れ落ちて、青い世界を閉ざした。

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すべてが青くなる 長月瓦礫 @debrisbottle00

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