第6話 ババ抜きと筆談
「
桐花は、当惑していた。
真名実は、トランプをしていた。どうもババ抜きらしい。しかも、相手は男の子だし。仕方がないので、近くの椅子に座った。
ここは、奥まった場所で大きな本棚がある。入口からは、死角になる。しかし、何故、トランプ。男の子は、昔の書生風の格好で、ハンチングを被っていた。
勝負がついたらしい。二人は、ノートで筆談している。
「あなたは、たなはしきりかさんの婚約者ですか?」
「そうです」
ボッと、顔が赤くなる。桐花は、窓のほうを見た。真名実が身体に触れてきて、ノートを見せる。
「ババ抜きの勝者が敗者に一つだけ質問できます」
婚約者と言うのならば、わざわざ誘いに乗る必要もないのだけれど。長い間心を閉ざしてきた自分には、筆談がちょうどいいのかもしれない。
桐花は立ち上がり、トランプを混ぜた。
「婚約者の証を見せて」
男の子は、折れた白羽の矢を見せた。
やっぱり、正真正銘、私の婚約者なんだ。額に汗がにじむ。
「私はあなたを救いたいのです」
そう書き残し、男の子は去って行った。
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