第2話星条旗と自販機と俺たち



【第2章】星条旗と自販機と俺たち


成田空港発のLCC便でサンフランシスコに着いた信長たちは、

まずアメリカの空港の物価に殺された。


「水、700円……?」

「ペットボトルに金箔でも入ってんのかよ」


秀吉は財布の中身を確認して、しばらく沈黙した。


「……ねぇ、あのへんの飲料自販機、コーラ1ドルって書いてあるよ?」


「まさかの勝ち組自販機」

「……本当に生き残ってたんだな、自販機」



彼らは“語学留学”と称してホステルに滞在し、

毎晩ファストフードを食べながら、大統領暗殺の作戦を立てた。


「問題は武器だよな。銃」


「アメリカじゃスーパーで買えるって聞いたけど」


「銃に添付の保証書がクーポンになってたら嫌なんだけど……」



だが、現実は厳しかった。


「身分証?」「グリーンカード?」「NICS? なにそれおいしいの?」


銃はおろか、エアガンですら合法的には手に入らない。

語学学校の寮でこっそり水鉄砲を構えていたら、ルームメイトに通報されかけた。



「やっぱダメだ、銃なんかムリ。そもそも近づけねぇし」


「SP多すぎ。大統領のSNSにリプライしても“ありがとう”しか返ってこない」


「あと最近の大統領、優しい。おばあちゃんにハグしてた」


「それは、もう撃てない……」



結局、3人はグレイハウンドバス(格安長距離バス)に乗り、

「アメリカを見て回る」という建前で数週間を過ごした。


グランドキャニオン、ルート66、

炭酸が吹きこぼれるほど甘いシェイク、

冗談みたいに巨大なドーナツ屋。


その道中、彼らは何度も笑い、泣き、トイレを探しながら旅を続けた。



そして帰国の日。


ロサンゼルス空港の出発ゲートで、TVが流れていた。


【速報:アメリカ大統領、ノーベル平和賞受賞】


3人は言葉を失った。


「世界、バグってるだろ……」


信長は背中のバックパックから、スーパーで買ったばかりの銃(おもちゃ)を取り出した。

それを、ゴミ箱に放り込んだ。


同時に、空港職員が近づいてきた。


「エクスキューズミー、ちょっと一緒に来てもらえます?」


そして、連行された。



「いや違うんだ、本物じゃないんだ! これは!これはジョークで!」


「英語が通じてねぇぞ!お前、語学留学どうなった!」


「俺たちの本能寺、これかよ!」


こうして3人は、空港留置室で並んで座っていた。


「なあ信長、次は何する?」


信長は壁の星条旗を見つめながら言った。


「日本、取るか」


(つづく)


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