第7話神?いや石さん、当人からの相談を受ける

前書き



三角関係に揺れる二人の少女。

そして、その両方から好意を寄せられている──“本人”は、未だ何も知らない。


……と思っていたら、今日、その本人が俺の前に来た。


あの……俺、いよいよ恋愛相談所として本格稼働してない?



本文



縄と紙垂を巻かれ、雨ざらしの俺。

今日も、恋模様の観察席として出勤中(※無給)。


すると、ドスドスと大きめの足音。

現れたのは……あの男だ。

そう、二人の少女が恋い焦がれる中心人物。


(おやおや、やっと主役登場か)


男は俺の前に立ち、深くため息。


「……石さん。ちょっと聞いてくれよ」


……おっと、開幕から“聞いてくれよ”って言うあたり、もう完全に相談モード。


「最近、同じ日に違う子から同じタイミングで誘われることが多くて……どうしたらいいんだ?」


(……あー、それ、多分偶然じゃない)


もちろん言えるわけない。

俺は石。

しかも言ったら修羅場が加速する未来しか見えない。


とはいえ、何かアドバイスはしないと……。


(念話モード、オン)


「両方と正直に話せ。隠すとややこしくなるぞ」


男は一瞬黙り込み──そして小さくうなずいた。


「……そうだよな。ありがとう、石さん」


翌日。

俺の前には、昨日よりも空気の重い二人の少女が座っていた。


「……石さんにそそのかされた」

「私も石さんに……」


……え、待って。俺、そそのかした扱い?

いや、アドバイスはしたけど、そういう意図じゃないのに!


結果、二人の間には妙な同盟が成立。


「もう石さんは信用できないね」

「でもまた相談はしに来るけど」


……結局来るんかい。


今日も俺の信仰度は微増。

でもイメージカラーは、ほんのちょっとだけ黒くなった気がする。



後書き



三角関係に巻き込まれた石さん、ついに“本人”から相談を受ける回でした。

どれだけ無難なアドバイスをしても、結局巻き込まれる……それが人間関係の恐ろしさ。


次回は、この微妙な均衡が崩れる瞬間をお届け予定です。

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