第6話三角関係、石の前で火花を散らす

前書き



前回、俺の前に恋愛相談に来た少女は、見事に想い人と祭りで並び歩いていた。

──が、その直後、別の少女も同じ男を好きだと告白。


はい、これ修羅場フラグ。


石は動けないし逃げられない。

つまり俺は、修羅場の最前列指定席。



本文



縄と紙垂を巻かれた俺の前に、今日も足音が近づく。


現れたのは……おっと、この顔は覚えている。

先日、「あの人と話せるように」と願いをかけてきた少女だ。


しかも今日は、その“あの人”を連れてきている。

どうやらお礼参りらしい。


「石さん、聞いてください! この前のお祭り、一緒に回れたんです!」


おー、そりゃ良かったな。

……と心で拍手していると──


ザッ、ザッ、と別の足音。


はい、来ました二人目。

先日「同じ男が好き」と宣言したもう一人の少女だ。


しかも目が鋭い。

あ、これもうバチバチに火花散ってるやつ。


「……何してるの?」

「お礼参りよ」

「ふーん……その人と?」


空気がピリつく。


俺は石。

動けないし、口も出せない。

(いや、念話で介入はできるけど、これ下手に動くと俺が黒幕扱いされるやつじゃね?)


しかし二人の会話はどんどんヒートアップ。


「石さんのおかげでうまくいったの!」

「……は? 私も石さんに相談したけど?」


俺、心の中で「ちょっと待て」と全力ツッコミ。

なんで俺、二股キューピッドみたいな扱いになってんの?


結局その場は、二人が「石さんはどっちの味方か」で小競り合い。

俺は動かず、雨ざらしのまま、嵐が過ぎるのを待つしかなかった。


……で、翌日。


俺の前には、二人揃って座っていた。


「……昨日は言い過ぎた」

「私も」


どうやら仲直りはしたらしい。

そして二人同時に、同じことを願ってきた。


「石さん、あの人にちゃんと好きって言えるようにしてください!」


……え、まさかの共同戦線?

これ、俺のステータス上がるけど、男の方はどうすんだコレ。


石は今日も、雨に打たれながら未来を心配していた。



後書き



今回の石さんは、三角関係のど真ん中で板挟み。

動けないけど、情報だけはたっぷり集まってしまうポジションです。


人間模様は複雑だけど、石としては信仰度が上がるなら悪くない……のかも?


次回は、この「共同戦線」がどんな結果を生むのか、ちょっとだけ動きます。

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