第14話 僕は考える①

稲村健一いなむらけんいち・・・・・・・・・・・・F学園学長

木藤美津代きとうみつよ・・・・・・・・・・・・F学園副学長

加納優かのうすぐる・・・・・・・・・・・・2年A組担任・国語

千葉ちばまゆみ・・・・・・・・・・・・2年B組担任・家庭科

志井宏子しいひろこ・・・・・・・・・・・・2年C組担任・数学

榎本良枝えのもとよしえ・・・・・・・・・・・・3年A組担任・理科

駒田誠一郎こまだせいいちろう・・・・・・・・・・・・2年次学年主任

山本陶冶やまもととうや・・・・・・・・・・・・3年B組担任・体育

石ノいしのもり凪沙なぎさ・・・・・・・・・・・・K大学文学部・日本史学科・教育実習生

慧村真司さとむらしんじ・・・・・・・・・・・・〃・カフェバイト


2年A組の特徴的な生徒

坂井さかい・・・・・・・・・・・・僕の友人

小澤おざわ・・・・・・・・・・・・女子生徒、活発で美人

御厨みくりや・・・・・・・・・・・女子生徒、読書好き

風戸かざと・・・・・・・・・・・・女子生徒、生徒会

中川なかがわ・・・・・・・・・・・・失踪、いじめのリーダー格

佐藤さとう・・・・・・・・・・・・失踪、おどけるのが好き

馬場ばば・・・・・・・・・・・・失踪、中川の舎弟的存在

秋葉あきば・・・・・・・・・・・・失踪、成績トップ10

須田すだ・・・・・・・・・・・・失踪、野球部四番エース

宮野みやの・・・・・・・・・・・・佐藤と仲がいい

小峰こみね・・・・・・・・・・・・中川と幼馴染

篠崎しのざき・・・・・・・・・・・・1人目のいじめのターゲット、不登校

大城おおしろ・・・・・・・・・・・・2人目のいじめのターゲット

僕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・物語の主人公


正門のすぐ近くを、石ノ森は歩いていた。

 草は生い茂り、クスノキも青々と葉をつけている。風が少し吹いて、少し涼しかった。


「石ノ森先生」僕は後ろから声をかけた。

「ん?ああ。まだ、先生じゃないわ」

「僕からしたら、もう先生ですよ。いいでしょう?」

石ノ森は前髪を両手で掻き分けると、肩に掛けたバッグを掛け直して、黒いテカテカとしたスーツのジャケットを脱いだ。

「ええ、良いわよ。それで、どうしたの?」

「その、ありがとうございました」

「それは色紙でもう見ました」

「そうですよね」

・・・・・・

「その、これからも頑張ってくださいね」

石ノ森ははぁとため息をついた。

「何?そのありきたりなメッセージは。まぁいいわ。こちらこそ、ありがとう。またどこかで会えたら、話の続きをしましょ」

「そうですね。そうします・・・・・・。あの、僕、K大に入ろうと思うんです」

「どうして?」

「特に意味はありませんけど・・・・・・、何となく」

「あなたの学力で入れるの?」

「努力ならします」

 少しばかりの重い沈黙があった。静かに冷涼な風が、僕の心を通り過ぎたように思う。

「応援しているよ」

「石ノ森先生。僕には言わないんですか?」

「はぁ?」

「だから、僕に事件の真相は言わないつもりなんですか。僕はもう気づいています。あなたは、僕の居ないところで事件を核心に近づこうとしてる。一人で危険を顧みずに。そうでしょう?」

「逆に聞くけれど、どうしてただの生徒に危険を追わせないといけないの?それこそ、意味がないじゃない」


 僕はそれもそうだと思った。確かに、これ以上僕が首を突っ込む必要性も無いように思う。でも、少しだけ寂しいと思った。理由は分からない。僕の知らない場所で、僕の知らない時間が流れて、あっという間に誰かが悲しみ、誰かが喜ぶこの世界を、僕は嫌だなと感覚で感じ取った。


 「志井先生は、まだだんまりだそうです。完黙だって、長田さんが言ってました」


「あの人はもう、何も話さないと思うよ。それが一番だと思ってるだろうから。きっと娘さんは、駒田先生がこれからも育てるんでしょうね。自分は捕まり、人生のどん底に落ちた。それを志井宏子は、良しとしているのよ。だから、ただ黙って、真実を言おうとしない、いわば、自分だけを悪人に仕立てようとしているということ。でも、私はそれが許せない。どうでも良いと思っている自分勝手な人のせいで、沢山の命と、沢山の人生がめちゃくちゃにされたの。それを黙って見てろって?そんなのどう考えてもおかしいわよね」


「仰る通りです。自分を大切にしてください」

「君もね」

「はい」

「ありがとう。あなたの名前好きよ」

「名前だけですか」

またここで沈黙。

「言ったでしょ?今度また会ったら、話の続きをしましょうって。まぁでも、楽しかった」

「ええ。じゃあ、さようなら」笑顔で石ノ森に言った。


 僕は踵を返して、石ノ森と反対の方向に歩き出した。入道雲がもくもくと浮かんでいる。サワサワと草が擦れる音が聞こえた。その音に混じって、「さようなら、九十九海つくもうみくん」と言う声が聞こえたような気がした。



続く→→→





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