楽園
大電流磁
楽園
ユスリカは血を吸わないが、忌み嫌われる。蝶のように愛されぬことは見た目の問題であり、諦めざるを得ない。ただただ薬で殺されるだけの無念が凝り固まり、やがて人格となった。
”柚子リカ”という怪物である。
リカは考えた。人がユスリカを愛さないのは仕方ない。人に会えば薬で皆殺しにされる。ならば、土地を入手し、私有地でユスリカの楽園を作ればいいのだ。
売りに出されている小さな山を見つけた。山腹に湧水があり、池ができている。ここならば、ユスリカの楽園たりうる。
五百万円。山を買うには「オカネ」というものを貯めれば良いらしい。
リカは人間の特徴を理解していた。ルックスがヒトにとって重要であること。リカは自身の見た目を、人の好む清楚な美女に設定した。
そして、ヒトの男と夜を過ごすのが、オカネを得る近道だと知る。多くの男たちから、一ヶ月ほどで五百万円を得ることができた。
困ったことになった。
若い男が、リカにぞっこんになってしまった。彼は一夜を共にした一人ではあるが、金持ちでも権力者でもない。出自は孤児。
リカは彼のハジメテだったらしい。リカは困りつつも、彼が求めるたびに、彼と夜を共にした。
リカはついに楽園の山を買うことにした。しかし、手続きで
ヒトならぬ身で戸籍は取れない。リカは行き詰まり、独り泣いた。
泣いているリカに男が理由を問う。全てを聞いた男は任せてくれと言う。
「自分は生まれたときにトイレに捨てられていた親も分からぬ孤児だ。だから、何もないところから戸籍を作る方法を知っている。」
彼は孤児であった自分を例にあげ、法務局に出向き熱弁した。そして家庭裁判所を経て、リカは戸籍を得た。
リカはついに契約を完了し、山を手に入れ、池のほとりにログハウスを建てた。男とともに、車で山に入る。
ログハウスのバルコニーでリカが真剣な顔をしていう。
「あなたが、私の本当の姿を見たら、きっと嫌いになる。」
「それでも、本当の姿を見せなければならない。」
「あなたたちにとっては、駆除されるべきものなのかもしれない。」
「でも、あなたになら、殺されてもいい。」
リカは、ユスリカの蚊柱となり、バルコニーから池の上へ。男の前には、リカの服が抜け殻のように落ちていた。
男は彼女の服を拾い、丁寧にたたんでベッドの上に置く。
「夕飯の材料を買ってくるよ。戻ってきたら一緒に食べよう。」
バルコニーから外にむけて、そう言った。
楽園 大電流磁 @Daidenryuji
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