第29話 バロンドールについて 更新されていく現代型は未来の夢を見せる

 FCバルセロナ対ヘタフェCF戦3−0で終了した試合後、バルサのFWフェラン・トーレスは余計な事を言った。

 「彼らはプレー的な提案をしてこない。僕からすれば、あまりにファウルを犯し過ぎている」

 その発言を受けたヘタフェのホセ・ボルダラス監督は、予算の違いだと反論した。

 昨期予算はヘタフェが約6千万ユーロであるのに対しバルサは約9億ユーロ、15倍の差だ。

 これがスペイン2強を作り上げる構図で、この格差を是正する動きを2強は反対している。


 ボルダラス監督はクライフ信奉者でバルサと志を同じくしても、予算15倍の選手の質の差はどうにもならない。

 圧勝に気を良くした迂闊な発言は、なんともトーレスらしい気がする。



 それよりもこのニュースで、クライフ主義者がまだ根強くいるものだと思った。

 スペインではバルサのドリームチームの影響だろうが、世界的にはまだ'74W杯なのではないかと発表されたバロンドールの投票結果をみて感じた。


1.位:ウスマン・デンベレ(フランス/パリSG)

2位:ラミン・ヤマル(スペイン/バルセロナ)

3位:ヴィティーニャ(ポルトガル/パリSG)

4位:モハメド・サラー(エジプト/リバプール)

5位:ハフィーニャ(ブラジル/バルセロナ)

6位:アクラフ・ハキミ(モロッコ/パリSG)

7位:キリアン・ムバッペ(フランス/R・マドリー)

8位:コール・パーマー(イングランド/チェルシー)

9位:ジャンルイジ・ドンナルンマ(イタリア/パリSG→マンチェスター・C)

10位:ヌーノ・メンデス(ポルトガル/パリSG)


 ネイマールがハフィーニャの5位という結果に文句を言っていたが、10位以内にパリSG勢が5人も入っていたら票が割れていることが一目瞭然だ。

 それ以外の理由もあるだろうが、味方への情は厚いが軽はずみなところがあるネイマールらしさがよか表れている。


 ウスマン・デンベレのバロンドール授賞は、それぞれの立場に寄った評価の仕方があったことと推測される。

 代表監督やキャプテンは結果を、ジャーナリストはプレースタイルをより評価したのではないかと思う。


 昨期デンベレはムバッペとも比較できる攻撃性能 

に苛烈な守備を加えてみせた。

 持ち味のスピーディーでテクニカルなドリブルだけでなく課題だった得点力を開花させた上、前線におけるCBとの競り合い、中盤に降りての組み立て、左右に流れてウイングプレーといった攻撃のオールマイティさ。

 ファーストディフェンダーとしてだけでなく、周囲と連携してボールを刈り取る守備。

 この融合が次の時代のCFのあるべき姿として写った。

'74年のオランダ代表の様に近未来のサッカーを予見させたことが、ジャーナリストの心に響いたのではないか。

 昨年度の授賞者ロドリが守備的MFの完成形を想像させたように。


 '74年のオランダ代表の評価は勝ち負けに一喜一憂するファンよりも、ジャーナリスト達にとってより高いと思われる。

 デンベレも同じ様な夢をジャーナリストに与えたからこその評価だと思う。



 3位ヴィティーニャもデンベレと同じく新しい選手像を見せる選手だが、ロドリとの比較がある分不利だった。

 ハキミやメンデスは充分な評価だと思う。攻守両面で奮闘したが、流石にデンベレやヴィティーニャには勝てない。

 

 2位のヤマルは早く新しいスーパースターが欲しかったからでは、と見ている。

 素晴らしい活躍だったが、バロンドールの実績としては弱い。


 サラーも活躍は充分だが、デンベレと較べると少し前の点取り屋の印象でインパクトに欠ける。


 ハフィーニャは、まずヤマルと票を奪い合った。

他にも、ハンジ・フリック体制によるチーム全体のスタイルの変化によりジャーナリストの焦点がブレたせいもある。

 あとチームへの貢献度は大だが、プレーがシンプルなのと動き回ることが票を抑えたのではないかと思っている。

 オフ・ザ・ボールの動きは、貢献度に比べて評価され難いからだ。


 

 文句を言っている人が多いが、ジャーナリストの評価のクセを考えたら順当というか予想通りの結果ではないか。

 そもそも雑誌が主催する賞なのだから。



 同日行われたオリンピック・マルセイユ対パリSGはめちゃくちゃハイレベルな試合だった。


 唯一の得点はGKのミスからだったが、強度の高い攻防はリーガのクラシコやプレミアリーグのBIG6同士の試合にも負けないレベルの素晴らしさだった。

 リーグ・アンを一段下のリーグだと思っている人は是非見たほうが良い試合だった。


 セリエAのユベントス対インテル・ミラノ戦などまるで比較にならない程の激しさ。

 ここまでは凄いものを見せられると、逆にリーグ・アンのレベルのバラつきが気になってくる。

 少し前のASモナコとかホントに酷かったから。

 

 面白ポイントは、試合終了直前に審判への文句で退場になったロベルト・ゼ・デルビ監督が退席処分になったにも関わらず、スタンドの最前列ベンチの真後ろにいたことだ。

 ベンチの屋根に肘つきながら試合見てたんじゃ、退席処分の意味何にもない。

 コーチとも直に話していたし、そんで良いのか?



 デンベレは日本人には岡崎慎司スタイルの究極版といった方が分かりやすいかも?

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