第7話 政治とレアル・マドリード、ヴィニシウスとロドリゴで妄想中


 組織内政治、面倒くさいですよね?サッカーの世界にも当然ある。

 そして組織外にも政治的な、なにか暗雲のようなものがたちこめる。そこからは誰にも自由になれない。


 制度改革的な話しでまず思い出すのが、女子選手の給与問題を訴えた女子サッカーのスター選手ミーガン・ラピノーを中心とした一連の騒動。


 男子超有名スター選手と女子選手の給与格差をそれだけで論じたりしたもんだから、批判も多かった(興行面とか経済規模の違いをまるで無視していた)。


 でも日本のとある小政党のように立場の弱い者が何かを主張する時には、理路整然とするよりも荒唐無稽な主張した方が世間の耳目を集めやすい。

 そうした狙いの論調だったと思いたい、でなかったら少し怖い。


 少しづつ良くなっているとしても、まだまだ女子サッカー選手を取り巻く環境は万全とは言えないのだから。



 さて数あるプロサッカーチームの中で、政治的な話が一番垣間見えるのがレアル・マドリード。


 ついさっきもまたヴィニシウスに対する人種差別問題がニュースになっていた。なんでまた起こる?

 


 ヴィニシウスとは『負けん気』の選手だと思う。負けん気からくる努力・反発心が彼を大きく成長させたのではないかと。

 負の側面である挑発行動からも、彼の負けん気の強さがうかがえる。プライドの高さや反抗心が透けて見える。


 ヴィニシウスがマドリーでプレーし始めた時、彼は将来有望な選手でしかなかった、煌めくスター軍団の中で。

 当然周りのスター選手達の様には上手く出来ない。プレーの意図どころか話も通じていなかったのではないかと思われる場面もあったし、軽くあしらわれているようにも見えた。

 そこから凄い努力をしたのだろう。スター選手が一人減り・二人減り・三人減りといった頃には、彼はチームのエースで世界一の左WGになっていた。


 それは誰にでも出来ることじゃない。期待されながら消えて行った若手選手の数がそれを証明している。立派だと思う。

 

 そんな彼が原因の一つになったと思われるのが、今回のロドリゴの移籍騒動だ。


 きっかけはマドリーの新監督シャビ・アロンソがFW陣の守備時の貢献度の低さへの不満を公の場で口にしたことだ。

 前監督のカルロ・アンチェロッティが同じ事を言った時には、選手達もその周りもほとんど無視し、しれっとプレーしていた。

 だけどアロンソはそうはいかない。就任したてで大ナタを振るうことも辞さないだろうし、アンチェロッティと違って規律を植え付けるタイプの監督でもあるからだ。


 普通のチームなら話は早い。FW陣ちゃんとやれ、しっかりしろ、努力しろ。嫌ならチームを出ていけ。それで済む。


 しかしそこはレアル・マドリード、そう簡単にはいかない。

 チームもデカけりゃ、選手達の自尊心も相応にデカい。

 あの選手達がしっかり守備をするようになるまでには時間が必要だろうし、軋轢を生むかも知れない。


 キリアン・ムバッペもヴィニシウスもロドリゴも、誰も勤勉な選手とは評されないのだから。


 だけど監督がいかに選手達やチームに不満があっても、チームが破綻せず結果が出ればそれで良い。

 だから誰かがこう思ったのかも知れない。


 『守備をしないの何人までなら許される?』と。


 ムバッペはアンタッチャブルだろう。マドリーがどうしても欲しかった選手で、紆余曲折あったなかで去シーズンようやく獲得出来た為だ。ウスマン・デンベレの覚醒を見た後では、少し甘やかされ過ぎな気もするが。


 ヴィニシウスは問題行動もしていた。ムバッペとのチームNO.1を掛けた争いの中で、ゴール欲しさ故に無理にポジションを崩してチームの機能性を乱したりした。いかにも彼らしい。

 徐々に関係性も良くなっていったが。


 それでも昨期までの大エース、バロンドールの一歩手前だった。チーム内権力・影響力は強く商業的価値も高い。トラブルも多いが。

 

 そんな状況でチーム内やチームを取り巻く人達の中のヴィニシウス派は、こう囁いたかも知れない。


『ロドリゴ売れば?監督も不満みたいだし』と。


 こう考えると、辻褄が合う。御身を守る為に代わりに誰かを差し出すなんて、組織内政治の常套手段だからだ。

 当の選手はそんな事考えなくても、取り巻きも取り巻きで必死なはずだ。


 ロドリゴにとっては災難だ。急に身辺騒がしくなったのだから。不満を言ったことはあっても、移籍を希望したことは無かったはずだ。

 ヒエラルキーが低いから、なんて政治的な理由は選手である彼には理解することが出来ない。

 だって三人のFWの中で一番守備をしていたのは、ロドリゴだったのだから。


 元々不遇のロドリゴは本来得意とする左サイドであまりプレー出来なかった。ヴィニシウスがいたし後から来たムバッペも左に流れたがる。彼らの代理の時だけ左サイドでプレー出来た。

 人材の足りない右サイドか中央で、足りないピースを埋める便利屋として扱われていた、不憫だ。



 もしロドリゴが解放され適性価格で売りに出されたら、欲しがるビッグクラブは絶対にある。あんなに素晴らしい選手なのだから。


 アーセナルの左サイドは埋まってしまったが、マンチェスター・シティやトットナムやバイエルンの左サイドは空いてそうだし、合うと思う。


 特にバイエルンは面白そうだ。右ミカエル・オリーズ・左ロドリゴのユニットは、ロベリーの再来になるのではないか。それにジャマル・ムシアラが加われば、強力どころの話ではない。

 ハリー・ケインの後釜探しも楽になる。中央に上手すぎる選手を置くと流動的になり過ぎるので、少し不器用なくらいで丁度いい。それなら値段も抑えられる。

 問題は、バイエルンにその気が無さそうなところだ。


 あと1つ、とっておきのチームがある。チームの

格もロドリゴに合うし、左サイドの選手がいない。

 攻撃的なプレースタイルの中でロドリゴはきっと躍動することだろう。

 

 禁断の移籍が出来ればだけど。

 

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