復讐の一歩

 「グゥルルガァ!!」


 「くっそなんかこいつら強くねぇか!」


 なんだ?……俺は貴族のバーン・アリメント様だぞ……なんでこの俺がこんな雑魚モンスターなんかに苦戦する?この最近見つかったという洞窟……なんでこんなにモンスターが強いんだ!?ロックウルフなんて今の俺達に取ったら雑魚中の雑魚みたいなもんだろうがっ!……


 「おい!メリッサ!強化魔術!」


 「もうかけてます!」


 「ちっ!かけててこれかよこの役立たずが!お前もクビにするぞ!」


 クッソ……体の調子も上がらねぇ。なんかおかしい……


 「おい!レイヤ!もっと気張れやぁ!!」


 「やってます!これでも頑張ってますって!」


 「ガルダ!お前もだ!」


 「でも!こいつらいつもよりなんか強くないですか!?」


 「うるせぇ!口より手を動かせこの役立たず!」


 「やってるな……」


 ギルドから探査する洞窟を聞いて先回りしたのにどうも全然来ないから見に来たらまだまだ入り口付近のたった3匹のロックウルフごときで手こずってるとは驚きだ。


 「さて、どうしようか……もう少し陰に隠れて観察してみてもいいが……」


 俺の狙いはバーン一人だけだ、できれば他のメリッサ、レイヤ、ガルダに危害は加えたくない。


 「ガルダさえいなかったらハーレムパーティーだな……まあ、しょうがないか、ちょっと我慢してもらおう」


 俺は地面に手をかざした。


 「災厄の人形」カタストロフマシン


 唱えると同時に盛り上がった土が3メートルの巨大な骨格を作り、そこへ禍々しい黒の液体が吸い付き、真っ黒な人型の人形になる。


 「俺が操ってやる!さあいけ!」


 人形は走り出した勢いでまずはガルダと交戦していたロックウルフを拳で叩き潰す。


 「なんだこの化け物はぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 あまりの恐怖に耐えられなかったであろうガルダが一目散に洞窟の入口へ逃げ出した。


 (そうしてくれ……関係ないお前らを傷つけたくない)


 「おいテメェ逃げるんじゃねえ!覚えとけよ!」


 バーンの声も聞かずにガルダは逃げている。そうだそれでいい。


 「さて次は……」


 邪魔な残りのロックウルフから叩き潰してしまおうか。


 「待て!ひとりで行くな!」


 「っ!!」


 レイヤが黒人形の脚に切りかかってきた。そんなんじゃもちろんビクともしない。それはそうとてまずはロックウルフからだ。



 ドン!


 俺は黒人形を操り、右手と左手でそれぞれ射程範囲内にいたロックウルフを叩き潰す。

 

 「あいつの体は固い!右腕だ!右腕を同時に狙うぞ!」


 「分かった!っ光一閃ライトニングフロー!」


 「っ極炎斬ごくえんざん


 こんどはレイヤとバーン一緒に黒人形に切りかかってきた。随分と息があっている。だが効かないともうわかっているだろうに勇敢だなぁと感心してしまう。ひとまず剣を折ろう。レイヤからだ。


 バキッ!


 黒人形が剣を握りつぶして折る音が洞窟内に響いた。バーンの剣は黒人形の体に弾かれ、黒人形の体には傷一つついてない。このままレイヤを距離を詰めながら威圧してやろう。


 「あっ……嘘……嫌ああああああああああ!!!!」


 「逃げんじゃねぇ!役立たずが!戦え!」


 どうやら心が折れてしまったらしい。レイヤも逃げ出してしまった。


 「トラウマになって冒険者が出来なくなったら申し訳ないな……」


 さあ残るはバーンと……メリッサか。


 「ん?……あいつ……失禁しているのか?」


 メリッサはバーンから少し離れたところで膝をつき、泥人形を恐怖の目で見上げており、その足もとには水たまりができている。杖を使って何とか立とうとしているが脚が震えてうまく立てないようだ。


 「……いや気絶したな。ならもういいか」


 よくみるとメリッサはもう白目をむいていた。ここまで怖がらせてしまったのは申し訳ないな。


 「クッソ!なんなんだよこいつはああああああああ!!!!!!」


 やっとバーンと二人きりになれる。もう泥人形はいい。洞窟のもっと奥へ行くとしよう。


 「さぁ次だ。災厄のカタストロフスワンプ!」


 「なんだよっ!これ!」


 バーンの足元が沼に変化し、身動きが取れずに脚がドンドン沈んでいく。そうだそれでいい。二人で話し合おうじゃないか。 そうして俺も魔術を使い、泥の中へと落ちて行った。


______


 泥の中に落ちて行ったのだからもちろん泥から出てくるわけで、泥から体、しかも頭からどんどん出てくるのはなかなか面白いな。


 「っは!どこだ!ここは!」


 体がまだ半分しか出てきていないのにバーンがしゃべりだした。おいおい空気読めよ。それじゃかっこつかないだろ。


 「さっきの洞窟の最深部さ。昨日ぶりだなバーン」


 「テメェ!シャバナ!どういうことだ!」


 「俺が移動させたんだよ。さっきの魔術でね。ちなみにさっきの黒人形を作ったのも俺だ」


 「テメェみたいな黒魔導士なんかにあんな魔術が仕えるわけないだろうが!」


 ようやくバーンの体が泥から全部出てきた。そうそう、それでこそ格好つくというものだ。


 「いや使えるんだよ。俺は黒魔導士じゃない……闇魔導士だからな」


 「んなもんはねぇ!ふざけたこと言ってるとぶちのめすぞ!」


 うるさい。相変わらずのむかつく野郎だ。


 「黙れ。災厄のカタストロフスワンプ


 俺はバーンの体を腰まで泥に浸からせ、拘束する。


 「クソっ!なんなんだお前は!」


 「全部話してやるさ。だから黙って聞くことだな」


 俗にいう「冥途の土産に話してやろう」というやつである。


 


 


 


 



 




 


 


 

 

 


 


 


 


 


 


 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る