有能女官の赴任先は辺境伯領

藤芽りあ

プロローグ




「俺……あの人にも……渡すつもり……ないから……」


「……え?」



 どこまでも真っすぐで真剣な瞳に見つめられて、動けなくなった。



「覚悟して……」



 私は声も出せず、動けなくてしゃがみ、去り行く背中を見つめた。



――女官として恋とか愛とか無縁に生きてきたはずだったのに……



 どうしてこんなことに?


 私はきつく胸を押さえたのだった。




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