第4話 突飛が過ぎる世界
ジリリリリリ、ジリリリリリ、ジリッ
あーー眠……
目覚まし時計のベルに叩き起こされる。いつの間にかうつぶせ寝になっていたせいか背中やら首が痛い。起き上がりたくね……
スマホを探すために手をガサゴソと動かしていると、柔らかい羽毛の感触があった。
「あれ、羽毛布団使ってたっけ?」
軽い体を起こして確認してみたその瞬間、目の前の景色の異常さに一気に目が覚めた。俺の寝ていた所の周りにおびただしい量の羽毛が散乱していた。
「な、なんだこれ!?」
バサッ
バサッ……?ていうか、さっきから妙に体が軽いというか背中から腕が生えた様な感覚が……
恐る恐る背中を確認してみると、背中から翼が生えていた。
「……はぁ?」
訳がわからん。俺は人間を辞めてしまったのか?いや、もしかして……死んだ?でも感覚はあるし、ほっぺをつねってみても、うん。ちゃんと痛覚もある。
そういえば空はどうなって……!急いでカーテンを開けて外を確認してみた。
「・・・空どころじゃねぇよ。なんだこれ。」
そこには知らない世界が広がっていた。高層な建物が乱立しその間を人間が翼をはためかせビュンビュン飛んでいる。一応道路は整備されており辛うじて自動車も通っている。まるでSFの未来都市のようだ。けど全くの別世界に来たという感じではない。所々に見覚えのある建物がある。もしかして平行世界とかいうやつか?
「皇太郎起きてんのー!遅刻するよ!」
「やべっ。」
それから俺は急いで朝ご飯を食べて身支度をし家を出発したのだが、ここまでの工程にかなり苦戦している。まず最初の関門は着替えだ。制服には羽を通す用の穴が開いているのだが、そこに羽を通すのが非常に難しい。きっと簡単に着れるやり方が存在するとは思うのだが何せこんな事知る由もないのでかなり難航した。
更なる関門が飛行だ。出発する時に親から「今日は天気も良いし、気流も安定しているみたいからぱぱっと飛んで行ったら?」と言われたのだが、
いや飛び方知らねぇよ。
まぁ不貞腐れても仕方ないので何とか見様見真似で羽ばたいてみると、不格好ながらにも飛ぶことができた。初めてにしては相当上出来だと思う。褒めてほしい。
そこから同じ制服の人について行って無事に学校に着くことができた。通っている学校や所在は俺の知っている世界と同じだったため安心した。やっぱりこれは平行世界的なやつなんだろうか。
教室に入ると先に令凰が来ていた。よかった。クラスメイトも一緒だ。
「令凰おはよ、って……。」
「あぁおはよー……って何で俺をそんなまじまじと見つめてんだ?」
「え、あ、いやーかっこいいなって。」
「朝からなんだよ。気持ちわりぃな。」
「すまんすまん。」
正直本当にかっこいい。ついつい見とれてしまった。令凰は元々イケメンでスタイルも良い。だがそんな奴に今日は翼が生えているんだ。神々しさで後光が見えそう。でもこれ逆に神々し過ぎて近寄りがたい雰囲気出てるな。一周回って彼女出来ないタイプだな。へへっ。可哀そ。
「今度はなんでそんな俺を哀れな目で見てるんだ……」
「いや~何でも?」
「お前ってそんな奴だったか?頭でも打って性格変わったか?」
「頭は打ってないけど首がいてぇ。ってこの流れ昨日もしたくね?」
「確かにw。」
SHRまでそんな談笑をしていると、チャイムが鳴る直前に誰かが入ってきた。
「ギリギリセーフ……かな?」
天使……?違う、寺月さんだ。
寺月さんの登場にみんなが反応する。
「姫彩おはよー」「姫彩ーガチギリじゃんw」「真面目な姫彩が遅刻ギリって珍しいね~」「ちょっと汗掻いてる寺月さんえr」「お前それは神に対する冒涜だぞ。」
「はいはい静かにーSHR始めるぞー」
凄いな寺月さん。教室に入るだけでクラスの空気が一気に明るくなったというか。
「あ、鬼虎くんもおはよ!」
「お、おはようございます。」
挨拶……された……?
今まで無かった現状に令凰が俺に尋ねる。
「お前、いつの間に寺月さんと仲良くなったんだ?」
「俺もわからん……」
何もわからないまま世界がどんどん進んでいっている。俺は一体どうなってしまうんだ……。世界は何処に行き着くんだ……。
空が黄緑色になってから2日。
今日も世界は狂ってる。
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