第2話 ハック&スラッシュゲー【フュージョン・ワールド】

【フュージョンワールド】とは、ハクスラゲーである。

 ハック&スラッシュ、つまり敵を倒してドロップアイテムで装備を更新していくゲームのことだ。


 フュージョン・ワールドは、「地球が異世界と融合してしまった世界」が舞台となっている。地球にダンジョンが大量発生したという設定で、物語は進む。


[はるか神話の昔から、地球は異世界と一部だけ交流している。なんらかのパワーバランスが崩れ、異世界の存在が地球に押し寄せてきた]

 

 というのが、フュージョン・ワールドの背景である。


 プレイヤーはいわゆる冒険者となって、調査をしつつ自身の強化も行う。


 しかし、不可解な点も多かった。

 

 無料ゲーなのに、ごく一部のユーザーにしか出回っていないのである。

 ネット内の情報も、攻略掲示板も、マジで少ない。


 また、今のダンジョンとつながった地球と、設定が酷似していた。


「こうなることを予測立てた、シミュレーションゲーだったのでは」説と、「選民している」説が、今でも流れている。


 ただ、本当にプレイヤーの絶対数が少ない。そのため、ゲームの存在自体を信じていないユーザーが多数いる。掲示板までわざわざ来て、「エアプ」とウソつき呼ばわりしてくる輩も。


 だが、オレはこのゲームと今の地球はシンクロしているに違いないと、確信した。


 モンスターの形状が、ゲームと同じだったからである。


 オレが冒険者になろうと思ったのは、予備知識が活かせると思ったためだ。オレなら、この世界を攻略できるだろうと。


「戦闘すると経験値が上がるのも、同じだ」

 

 今の戦闘で経験値を得て、レベルアップしていた。


 ウォッチを操作して、ステータスを確認する。


 名前は「ミツル」。


「力」は文字通り、攻撃力の強さ。

 

「初期値は、どれも全部五ポイントからか」


 ここから、レベルアップで得たポイントを割り振っていく。こちらも五ポイントだ。


 攻撃力は、いくらあっても足りない。とにかく、優先的に上げていく。八に。


「知力」は魔法の威力。攻撃や回復に影響する。

 これは、まだいいかな。


 魔法使用値に直結する「魔力」は、いくらでもほしい。七くらいで、手を打つ。


「耐久性」は、力とは違って防御に影響するようだ。

 まだ、苦戦する状況ではない。装備で更新しよう。

 

「素早さ」は、敏捷性だけではなく、器用さにも影響するらしい。

 こちらも、まだ対処には早いと決断した。装備で補うとする。

 


「どれも、ゲームと同じだ。次は、ファイトスタイルを」

 


 フュージョン・ワールドは、戦闘スタイルを自由に選べる。


 主なビルドは、近接が得意な「戦士」と、遠距離攻撃が得意な「魔法使い」だ。


「最初は、戦士系に寄せようかな」


 最近、イライラが多い。ぶっ飛ばす系のスキルが、ほしいな。


「戦闘の基本は、【ヘビー・アタック】でしょ」


 三回に一回の攻撃がクリティカルになるという、戦士の基本スキルだ。


 続いてお待ちかね。ドロップ品の確認である。


「おお、落としてる」


【つぶつぶポーション:ぶどう味】を手に入れた。

 

 日本が開発した、ゼリー状のジュースである。オレンジやぶどうの果汁をそのままゼリーに閉じ込めて、絞って食べるのだ。

 

「こっちは、【バリバリポーション】で、みかん味か」


 棒アイス型のポーションで、効果は他のポーションと同じ。食感が違うだけ。


 それでも、日本の技術はハンパない。


 保存がきかなそうな、バリバリポーションのほうを食べる。うん。うまい。たいして体力は消耗していないが、気分的に欲しかった。

 

 スライム退治は、これまでだな。


 あとは、依頼書をこなしていく。

 

 依頼内容は、スマホのメールボックスに勝手に入ってくる。

 更新があったら、スマホが知らせてくれるのだ。


 まず、『スライム三〇体以上討伐』は、完了している。

 手のQRコードが通知することによって、依頼達成が受付に伝わった。

 経験値を取得する。

 

『ポーション用の素材採取』に、取り掛かった。


「【キラメキ草】、【活力草】、【ブレンドの実】。あとは、すり鉢用とすりこぎ用の木を伐採して……」


 これを持ち帰ったら、ポーション用の素材と調合道具の依頼は達成だ。


 さらに経験値がアップする。


 レベルは、三に上がった。


「順調すぎて、草が生えるなぁ」


 またポイントを、力と魔力に注ぐ。

 魔力は多いに、越したことはない。


 ステータスは最悪の場合、装備品でカバーできる。


 しかし魔力となると、最低限の絶対量はほしい。


 それまでは、魔力に振っていく。


 どのようなスキルを使うにも、魔力は消費するからである。

 

 スキルは、【ヒール】を覚えた。


「二種類だけのファイトスタイルでも、それなりに戦えるな」


 ファイトスタイルが二種類しかいなくて、戦略の幅が広がるのかだって?


 ここからが面白くなるんだから、見とけよ~。



 更に、スライムを討伐していく。

 バスケットボール大のスライムたちの中から、ソファークッションくらいのモンスターが。コイツが、スライムの親玉か。


「いい獲物がいたぜ」


 あのスライムボスで、教えてやろう。

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