ある夏の最後の願い事
えあの
PROLOGUE
data:angel
俺はこの世界が嫌いだ。
自分の目の前にあった世界は、利己的な善意と悪意に満ちていて、自分を苦しめるもので空が見えなくなっていた。
全てを切り捨てて生きていけたらどんなに楽だったか。
あの世界から逃げた先に、この世界のことが好きな少女がいた。
ザザーッ……、ザザーッ……。
岩礁に打ち付ける波の音、視界に微かに映る満月、少し暖かい潮水。
これが海風の匂いというのだろうか。少し湿ったような、鼻に潮の香りがスッと来るようなそんな匂いがなんだか心地よい。
雲一つない綺麗な宵の砂浜、そこから伸びる波止場に俺は漂っていた。体の中の水分が全て海水と入れ替わってしまうのではないかと思うほどの鮮血を流して。
そうだ俺は……、8月のあの日。
死んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます