ある夏の最後の願い事

えあの

PROLOGUE

data:angel




俺はこの世界が嫌いだ。

自分の目の前にあった世界は、利己的な善意と悪意に満ちていて、自分を苦しめるもので空が見えなくなっていた。

全てを切り捨てて生きていけたらどんなに楽だったか。

あの世界から逃げた先に、この世界のことが好きな少女がいた。




ザザーッ……、ザザーッ……。


岩礁に打ち付ける波の音、視界に微かに映る満月、少し暖かい潮水。

これが海風の匂いというのだろうか。少し湿ったような、鼻に潮の香りがスッと来るようなそんな匂いがなんだか心地よい。

雲一つない綺麗な宵の砂浜、そこから伸びる波止場に俺は漂っていた。体の中の水分が全て海水と入れ替わってしまうのではないかと思うほどの鮮血を流して。

そうだ俺は……、8月のあの日。




死んだ。

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